Italian Progressive Rock 9


管理人自身イタリア語がわからないので,邦題のあるものはすべて邦題を併記しています.

9.ALAN SORRENTI

 デビュー・アルバム「ARIA」にて,理性のタガを吹っ切った情念渦巻くヴォーカルを披露してくれたイタリアのカンタトゥーレ.たしかに「ARIA」はプログレッシブ・ロックと呼ぶにふさわしい内容ですが,彼自身は明確に”プログレッシブ”云々を意識していたかどうかは疑問です.事実,プログレに翳りの見られた’70年代半ばにはプログレ的な音作りを放棄しています.彼にしてみれば,’70年代前半にもっとも輝いていた(ポピュラー音楽界の)表現方法が,いわゆる”プログレ的”手法だったということでしょう.「ARIA」以外で聴いた彼のアルバムは’70年代後半から’90年代後半の曲を収録したベスト盤「MIAMI」のみですが,ここには「ARIA」の面影はありません.フロリダ半島の保養地「マイアミ」の眩しい陽光と爽やかな風が似合うラブ・ポップ.この変貌ぶりは残念と思う反面,日本やドイツのミュージシャンのような”こだわり”が見事になく,いかにもイタリア人気質という気がして妙に微笑ましくもあります.

「ARIA/詠唱」

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1. ARIA /詠唱 
2. VORREI INCONTRARTI /あなたに出会えたら 
3. LA MIA MENTE /私の心 
4. UN FIUME TRANQUILLO /穏やかな流れ 


 ’70年代半ば以後の彼の活動に対してはあまり高い評価は聞きませんが,このアルバムがイタリアン・ロック史上に輝く素晴らしいアルバムであることに変わりはないでしょう.しばしばPeter Hammillと比較されますが,こちらははるかに理性のタガがはずれ情念剥きだしです.見事に(?)uncontrollableな感情の露出には鬼気迫るものを感じます.
 聴き所はなんと言っても20分に及ぶタイトル・ナンバー「ARIA」.Alan Sorrentiはある時は囁くように,ある時は絞り出すように,そして感極まって絶叫するといった変化自在の,しかし理性的な抑制を欠く生々しいヴォーカルを聴かせてくれます.アレンジもクラシカルで重厚な部分からアコースティックで素朴な部分まで多種多様.
 この感情の爆発に引きずられるようにバックも加熱・暴走気味ですが,けっして雑な演奏にはならず,重厚な精神世界(理性と狂気の狭間とでもいうか)を表現するにふさわしい分厚い音を聴かせてくれます.
 タイトル曲以外にも,小品も含め駄作はありません.「このアルバムで燃え尽きた」という声も,あながち間違っていないと思えるほどの力作/名盤です.

 1st「ARIA」の翌年発表された2nd「COME UN VECCHIO INCENSIERE ALL'ALBA DI UN VILLAGGIO DESRTYO」は残念ながら未聴です.が,「ARIA」とともにプログレ色が濃く,内容も良いとの評判を聞きます.機会があればぜひ聴いてみたいですね.


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