ビューゼリアン星の信者、マンラヴァスの物語The Tale of Star Buseri, Manlavus

                        マーティン・ローリー筆Written by Martin Laurie

この文書はThe Tales of The Reaching Moon #17に掲載された原文を作者Martin Laurie氏及び編集者David Hall氏の許可の元に転載しています。無責任な転用、剽窃などはくれぐれも控えてください。訳文の責任はTerra Incognitaにあります。

原文はこちら

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 わたしの物語で語られていることは悲しみである。わたしの民にとっての悲哀であり、彼らをダーゼイターはさだめられた距離を置いて見下ろしているのだが。またわたしの皇帝にとっての悲哀でもあり、彼はイェルムの慈悲とみずからの魂に宿していた正義から身を貶めた。ソゼニックSothenikはわたしの仕える君主であり、長い年月を知恵と正義で統治した帝であった。これら全ての歳月とそれ以上の間、わたしは彼にしたがうビューゼル神の高僧以上の存在であった。わたしは彼の友人であり、そしてそのために彼の失墜は二重にわたしを苦しめた。今から話すのは彼とわたしの物語だ。

 彼の統治はかがやかしく、黄金色で、争いがなくゆたかな日々だったが、いつも不満ともめ事が分をわきまえずにもっとえらくなろうとする下層階級の間から起こっていた。なんらかの形で富を得たこの連中は本物の貴族たちのいるところをうろつき回り、自分たちのいやしいやり方での富の見せびらかしと、まずしいものの見方をさらしていた。わたしの仕える陛下の治世の後のほうでは、わたしは朝廷の行事にほとんど参内しなかったが、それはこれらの「新興成金」たちがどこにでもたむろしていたし、彼らの下には、精神的にいやしいのに彼らの仲間に加わろうと願って物騒な動きを見せる膨大な数の群集がついていたからである。

 これらの群集はすぐに「もっと欲しいWant More」と呼ばれるようになった。それは国がどんなに豊かでも、わたしの帝の心の広さがいかに掛け値ないものでも関係なく、彼らはもっと欲しがったからである。「おれを公爵にしろMake me a Duke!」彼らは叫んだし、われわれはグバージが来て彼の命を終わりにする前のナイサロールの支配した日々にけちをつけることはできなかった。あなたがたが欲しがることもある、かの輝かしい壮麗な完璧さをそしることができるだろうか?真実はしばしば受け入れるのが難しいが、つまるところナイサロールはわたしのような遠くを見通す尊い者、より高級な精神のために話したのだということなのだ。それなのにこれら平民は彼の黄金色の箴言を字句通りに受け止めて、霊的な啓蒙よりもむしろきらきらした貨幣を欲しがったのだ。

 わたしの帝は間もなくこのような浮わついた騒々しい民を統治することに嫌気がさすようになった。いつも彼らはもっと欲しがり、彼らの欲望には伝染性があった。しまいには我が君すらもっと欲しがるようになったし、彼の統治において年月を経るに従い、さらに声高にかの言葉を彼は口にするようになり、生きる営みの単調さが我が君の完璧さに汚点をつけた。

 そのあと、使者が奇妙で驚かせる事件について知らせを持ってきた。ヘコランティの民が来たのである!わたしたちが大いに戸惑ったのは彼らヘコラント族が何者であるか知らなかったからだし、わたしがビューゼリアンの視力を備えていて、遠くまで見ることができるのに、この新しく来た者についてのわたしの知識は蝕にあって隠れている星のように欠けていると感じられたからだ。



 ソゼニックはこれら自分の広大で栄光に満ちた土地を通過していくヘコランティという者達が何者であるか見に行こうと決意し、朝廷全体が人と司祭の大群集として彼とともに旅をした。我々はアルコス市の南、ヘンジャール地方南部で彼らを見つけた。五十体以上もの石でできた人で、全員が丈のある樹木の背の高さ、全ての者が断固として何らかの未知の目的から西に足を進めていた。彼らにはアルドリアミの舞踏団がついてきていて、自分たちの森の歌を合唱し、その跳ね回る足どりから花々と草木が萌え出ていた。

 我が陛下はこの生き物の前に身を進めて、イェルムの帝国へ彼らが立ち入ったことについての説明を求めた。大いなる石でできた男たちは足を止めて、ダイアモンドでつくられた目でソゼニックを見つめた。彼らはかつて自分たちの主人だった体の小さな石の民から離れた新しい土地を探しているのだと言った。ソゼニックは、ダラ・ハッパは彼らの存在を歓迎しないので、ここからどこか離れたほかの場所で居場所を探すように言った。これらの石でできた者たちは皇帝の言い分を認めて、南方の蛮族の地、自分たちのための家となる場所を切り開くために出立した。

 彼らが視界から消え去ると、ソゼニックはその黄金色に輝く視線をわたしに向け、物足りなさそうに喋った。
「マンラヴァス、彼らが未来に見る風景について想像してみてごらん。冒険をくぐり抜けて行く!すばらしい栄光が彼らを待ち受けていることだろう!」

「陛下」
わたしは神経質に答えた。
「わたしはこのような事に思いを致しません。それは我々にとってイェルムの清浄に奉仕するのがさだめられた役目であり、そこではわたし達は彼の真実の光の矢を身に受ける光栄に浴しているのではないですか?」
この言葉がわたしの帝の心を国民と天の父の方に向け直すことを望んでわたしはたずねたのである。

ソゼニックは愕然とし、そのあと悲しげになった。
「わたしの友よ、君は多くのことを口にした。真実かつ正しいが、今持っている以上のものでないものについて。それでもわたしのもっとも貧しい民と同じように、わたしはより多くを求める!」

「ダラ・ハッパ以上のものでしょうか?」
わたしは他にこれにまさるものがあるのだろうか?と考えながら質問した。彼の返答は衝撃的だった。

「その通り、ダラ・ハッパ以上のものをだ!」

 そしてこの単純な実感によってわたしの主君の治世は終わりを迎えた。ソゼニックはわたし自身を含んだ十人の英雄からなる仲間たちをあつめた。われわれは来るべき冒険と闘争に気を引き締めたが、他のみんなが心にうたがう以上に、ライバンスの居住区から離れることはわたしにとって辛いものであったのだが。ライバンスのヘレムシャール卿を摂政として後に残し、わたしたちはほとんど送迎もなしにヘコラント族の追跡を始めた。民衆はソゼニックが都を離れることに動揺して喜ばなかった。彼らは帝に留まるよう陳情し、皇帝が我々と同じようにすると考えるのなら、もっと欲しがろうとする自分たちの欲望をおさえるようにすると言った。なにしろ皇帝が自分自身の意志で自分の臣下を置いて行ってしまうというのは前例がなく、その後でいったい何が自分たちにふりかかるか分かる者は誰もいなかったからである。

 ソゼニックは翻意させられることなく、英雄の道を追及した。そして我々の旅が始まった。最初は我々はヘコラント族の後を追い、彼らの探索行で助けになった。ソゼニック帝はイェルムの正義を蛮族達の中で居場所を勝ち取るために用いた。戦闘がはじまると、ソゼニックは厄介者どもを炎の雷や強い打撃や致命的な魔法で打ち倒すために仲間たちを率いていった。

 ヘコラント族が居場所を得たとき、わたしは我々が帰ることもできるということを考えていたが、ソゼニックはすっかりこの新たな冒険へと心を奪われており、より多くを望んだ。ますます多くを。

 わたしは次の数年の間に遠く離れた土地の旅を介して、古強者の旅人となった。厳しい山々を越え、氷雪をしのぎ、暗黒と冷気の妖魔を降して偉大なる美と不思議の国へと入った。これら全ての時を通して、わたしは故郷の塔と晴れて広がる星空の眺望を切望していたのだが、私はこの旅を通して多くのものを得たし、わたしたちみんながわたし達の主君と同じくらい、不思議へのあこがれに染まり魅せられていた。彼は絶え間なくわたし達を駆り立てて、ディジジェルムの帝国を見たし、大いなる湖のほとりの都市を見たし、「不完全な者達」が自分たちの巨大な石造りの城砦に住んでいるのも、一頭の龍からつくられた巨船がある都に停泊しているのも見た。この船には我々の栄光あるトライポリスを一つにまとめたよりも多くの人間が乗り込んでいたのである。わたしたちは「緑色の人間」の住むこのような船の一つに乗り込んで航海し、ロウドリルの子供たちの土地にあったある大きな港まで着いた。それから後は、わたし達が見て来た事がわたし達を永久に変えてしまった事はあきらかであった。



 そして、世界の果てのある都で、わたし達は龍船から降りたのだが、その場所がソゼニックにさらにもう一つのことを望ませた。彼はもう一度自分の玉座に座ることを望んだのである。彼の決断に賛同して冒険に乗り出した十人の英雄達のうち三人しか残っていなかったが、わたしは他の者と同じく、彼のこの決定に酔いしれた。それまでの旅は過酷で我々の道は暴力と邪悪なよそ者に満ち満ちていたが、我々はイェルムの光輝の加護の元に打ち勝ってきた。わたしたちは暗闇を見切っていたのだ。

 あわただしくわたし達は北へ進路を取った。わたし達の周りの国には徘徊する奇妙な存在のせいでごたごたしていた。わたし達が蛮族とみなしていたこのような多くの者と知り会ったことで、わたし達は彼らの精神の深遠さと思考の複雑さに当惑していた。ソゼニックは異郷の文化に詳しくなり、この種の人々が催す祝祭で語り合う機会を持つ位に前進の速度を遅らせていた。

 この遅延がわたし達の失敗の理由となった。



 演舞が恥ずかしいくらいにわずかな衣装しか身につけていない男女によってその祝祭では行われていた。彼らは蜥蜴か、ドラゴンの鱗を生やしているかのように体に絵を描き、奇怪なやり方で痙攣のような動きをしながら、しゅうしゅう音を立てたり、騒いだりしていた。弁士は群集に強力な魔術を投射して、理解することは可能ながらも、しゅうしゅうとしたお喋りをしていた。わたし達は魅惑されて、わたし達の心を呪縛する自分自身を超越する可能性に気付いた。龍の精神の透明さを説明することが可能だろうか?あたかもわたしたちの労苦と雑念が洗い流されて、目的、理解、歓喜、友情のみが後に残されたようだった。わたし達はすぐさま気分爽快になり、不思議かつ温かみのあるエネルギーで満たされた。

 ソゼニックがそこにいた他の誰よりも魅惑された理由は、ドラゴンの力による螺旋状の輪が彼の純粋さと正義の心に出会ったからであり、燃え上がって生命を得た。観衆と踊り子の畏敬の元に、彼らは螺旋状に彼の周囲を飛び回り、わたしが見たところ、わが主君は黄金色の翼を生やしているようだったし、光の中で力と輝きを得て華麗になっていた。単なる視力にとらえきれない、彼の魂の強さが観衆を満たし、彼の完璧さにその瞬間は彼らは一堂に合し、かつてのライバンスの宮廷で行われていたように、彼の前に恭しく頭を下げた。

 そして儀式はお終いになった。この自分たちを「舞踏と狩猟団」と呼んでいる舞踏団のリーダーは、敬意を示しながらわたし達に会いに来て、ソゼニックに向かって話をした。「来て、わたし達の精神的指導者に会って下さい。こんな貧弱な我々の魔術にできる以上に、彼にはあなたが持つドラゴンの魂をさらに明らかにする事ができるでしょうから。」
 このことはソゼニックを喜ばせたので、彼は団と一緒に行って、彼らの指導者と会うことを承諾した。我々は遠くまで案内されて、蛮族の地の多くを目にした。我々がほとんどのものに驚いたのは、彼らが強大な力とドラゴンの歪曲力を備えた社会を持っていることを示すものが、わたし達の周りにあるもの全てに見ることができるほどありふれたものだったからだ。

 ついにはわたし達は奇怪な美しさを備えた都市を訪れた。風変わりな塔ととがった形のジグラットがわたし達の視覚認識を狂わせていたのは、わたし達が地下深くに降りて、ドラゴンズ・アイの深層の広間に入るまで続いた。その場所でわたし達はエネルギーを巻きつかせている強大な「人を超越した王」に出会った。わたしはその力とその者の目の中にある抜け目のない知性に対する恐れと畏敬の念に打ちのめされた。しかしソゼニックはあたかも長い孤独な年月の後に、自分の失われた魂か、親族か兄弟を見出したかのように振舞った。

 わたしがすくみ上がっている間に、わたしの皇帝は容易に龍の言葉で「超王」と会話できていたし、彼が儀式で感じた喜びについて語っていた。「王」は彼に留まって学ぶように誘ったが、そのわけは「王」が以前に会った如何なる者よりも強力なドラゴンがソゼニックの中には生きていたからであった。

 わたしの主君は自分の玉座を取り戻そうという意志が最初は固かったが、大いなる「王」はある種の魔力を呼び込んだ。これはわたしの持つ遠視の魔術に似ていたが、わたしが過去に行った術全てに優る長い距離を通じて見せていた。北方はるかにわたし達はライバンスと帝国で起こっていることを見た。そこには皇帝のように装った強そうな男が立っていたが、彼の帝の装いは不完全だった。彼は都から進軍して行く大軍に喝采を浴びせられていた。彼の周囲の者は彼にへつらいを見せていたが、それはソゼニックに捧げられるべきものなのに、彼が玉座を空けた二十五年の間に、彼らは自分の主君を忘れてしまい、他の者を置き換えたのであった。ソゼニックは激怒し、簒奪者に向かって進軍していくことを誓ったが、「超王」は彼の気持ちが落ち着くまで待ち、そして尋ねた。
「何をもって貴殿は玉座をもう一度要求するおつもりか?」

 この質問にソゼニックは驚いたが、すぐさま答えるには、
「わが心の純粋さとわたしがもたらす正義をもって!」

「して、その純粋さと正義とは常に正しき者に勝利をもたらすものか?」
狡賢く話術を振るう「王」は尋ねた。

 ソゼニックはわたしと同じくらい、自分の国の歴史を知っていたし、そうではない事をも学んでいた。そして彼が黙っている間に、このドラゴネットが話をした。「超王」は、彼に留まって学ぶように助言し、彼の玉座を取り戻す援助をすることを約束したが、ここにいる「ワームの朋友」達が魔術の情景が示した人間の数に匹敵するだけの勢力にいまだ達していないことから、忍耐が必要であることを忠告した。しかし、さらに約束するには時が来れば、彼らは彼を助け、ソゼニックが再び君臨して、その時には、不老不死と龍のエネルギーの豊かさが、ムルハルツァーム帝以来いかなる者にも備わらなかった魂の純粋性を引き出すことになるだろうと語った。

 わが皇帝は熟考したが、結局黙ったまま頷いて、彼の同意を示し、この些細な仕草で、自分とわたしと、自分の民の運命を封じ込めてしまった。


「時間」はわたしにとってもはや昔のままのものではなかった。百年間が経過し、わたしはコルドロス市の自分の塔に座っていた。左手には飲み物を持ち、左目で星空を眺めていた。わたしはもはや遥か遠くの天界を調べるのに懐かしいビューゼルの塔で用いていたレンズを必要としていなかった。わたしの視力は単なる人間のいかなる目をも、鋭敏さにおいて優れていた。

 このことはわたしに起こったただ一つの変化ではなかった。それはわたしが我々の周囲にあった広大な土地のドラゴンのエネルギーに深くまで浸っていたためであった。私は多くの者に仕えられて、いかなるライバンスの凱旋将軍をもうらやむ富と、自ずから備える力を得ていた。わたしの夢にも浮かばぬ・・そして悪夢すら超越したものごとであった。

 しかし、わたしに起きた変化はソゼニックの変化に比べたらささいなものに過ぎない。最初のうちは彼は冗談を言ったり、不平をこぼしたりしていたし、簒奪者たちから自分の位を取り戻すことに鋭く反応したが、ドラゴンの教えは彼をかつてなかったほど内省的にし、昔の彼自身の興味ある物事から切り離した。もはや彼はそのような物事について語ろうとしなかったし、ますます少なくなって行くお互いに話し合う機会に恵まれた時、そういう問題について話しかけると、彼は最近行っている計画について話すために、それらのことを無視するのだった。しまいには、彼の力が増大するに従い、彼がそばにいることに気味悪さを感じるようになった。彼の皮膚は鱗を生やし始め、彼の舌は二股に裂けて、彼の身体は巨大になった。彼はもはや人間ではなく、彼の望むものは肉体と共に変化してしまった。彼の煌く黄金色の皮の様子はかつて彼が皇帝であったとき以上の「太陽」の力を備え、彼自身の魔力を示していた。彼の龍の力と生来の支配力を融合させて、ソゼニックは「多なる者Many」達を従える神と化した。彼の名前は多くの者にとって未知のままであり、彼らは単純に彼を「龍なる太陽」あるいは「黄金のドラゴン」と呼び、わたしは彼のもくろみ、計画について心配しはじめた。

 ダラ・ハッパの民を憂えるわたしの恐れは増大していったが、それはわたしにはソゼニックの野心と帝国にとっての公益が一つで同じであるともう信じられなくなっていたからである。その代わりに、彼は征服者の目で北方を見据えた。彼の歯擦音の多い話がEWFの将軍たちに帝国とどうやって戦うかの対策を助言し、彼らは助言を聞くことで大きな成功を収められるようになった。わたしはソゼニックが彼らと共に進軍していくと思ったが、彼は何らかのドラゴン的な知恵と深い意味のある政治的理由から出発を見合わせていた。それでも、わたしは彼が戦場へと進軍して行く時には、ダラ・ハッパ軍が壊滅するであろう事を疑っていなかった。なぜなら、彼の力は凄まじく、ダラ・ハッパ軍の防衛についての彼の知識は完璧であったからである。

 このことは避けられない事であって、わたしは絶望したが、ある企みがわたしの心に浮かんできたのである。この事はダラ・ハッパの敗北を遅らせはしないだろうが、未来における希望をおそらくのこすであろう。

 わたしはソゼニックの塔に飛翔し、入塔を求めた。彼の召使や信者たちはわたしを知っていたので入れてくれた。そしてドラゴン・サンが眠っている隙に、わたしは彼の脇から「支配権のマント」を盗み取った。この外套は彼が帝国を出て以来その肩に掛かっていたもので、彼が戻ってきた時に、支配権と皇帝としての地位を保証する品であった。ダラ・ハッパの人々がこれら彼の備える力に呪縛されて、ソゼニックの不老不死でありながら不正な支配に永遠に従属することになる。このようなことをわたしには許すことができず、わたしは夜の闇に脱走し、自分自身を救うために有するドラゴンの力全てを使い切り、その瞬間の輝く力の閃光と共にわたしはこの力を失い、追跡から逃れ去った。

 わたしは北方の危険な森や丘陵地帯にいる「古の日の伝統主義者」たちの中に匿ってもらったが、そこには無情な難民や頑固な反逆者たちが策を練り、計略を張っていた。ドラゴンのエネルギーとのつながり抜きでは、わたしは急速に歳を取っていき、これを書いている最中でもわたしの手はこわばり、ふしこぶだらけで年老いているがわたしの心は奇妙にも満足している。

 まもなくわたしは部族民の男に、死ねる山の上にわたしを置きざりにしてくれるよう頼むことになるだろう。わたしにいつも希望と幸福と進むべき道を与えてくれた星空を見つめながらいくのだ。わたしは少なくともわたしの民のために努力したと知って死ぬことができるのだ。わたしは大いなる破滅の裏をかいたし、そのことが歴史に知られることがないにしても、このことがなされたという事実だけでわたしにとっては十分なことになるだろうから。 

 

龍なる太陽Dragon Sunについてのノート(ENGLISH)

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