ザルカーシュXarkarshとアクセナAksena
以下の記事はBook of Drastic Resolution: Darkness
http://www.geocities.com/TimesSquare/Ring/1722/volume_darkness.html
の記事を著者Jamuz(ごめん)、James Frusettaおよび編集者Stephen Martinの許可の下に翻訳したものです。ヨルプ山脈の地図は見にくいですがこちらにあります。
http://www.wam.umd.edu/~gerakkag/Yolp.JPG
Glorious Reascent of Yelmの古代のダージーン都市の地図と重ねて見ると面白いかも。(Harald Smith氏によると、第一期にはUdam Baarというアーガン・アーガーの都市がセアードにあったようです。ヨルプと関係があったかも。)
六連山のウズ
ペローリア南西、ドラストールの近くにヨルプ山脈はある。大暗黒の時代からのトロウル族の拠点である。エズカンケッコの統一評議会がジェナーテラ全土を統べていた時、ヨルプはタゴール・マハクォータ(訳注:Tagor
Mahaquata青の月高原)、ボークラック、ケタエラ、ダゴーリ・インカースへと旅するウズの中継所だった。ナイサロールの平和の帝国がラリオスからエオルまでの全ての暗黒を滅ぼし、アケーズ・ローラダック(訳注:Akez
Loradak黒曜石の宮殿)が厳しい包囲の元にあっても、ザルカーシュとアクセナの部族は輝く神の燃える光に耐え抜いた。
ヨルプの歴史は人間が山々を征服しようとやってきて、打ち破られて逃げていく(逃れられた者がいればだが)話ばかりである。ウズはヨルプ山脈の六つの巨人の峰を、彼等を倒した先祖たちの名前で知っている。太祖ジェムズJamuzと彼の子等、五つ子のアクセナAksena、ミスタックMistak、ゼンXen、ダクガーDakgar、ゴルジョーンGorjoonである。ジェムズの子等のそれぞれがひとつの峰と周りの土地に住み着く部族を結成した。第三期には元々の部族のうち二つしか生き残っていないけれど、歴史の過ぎる内にもう一つ部族が結成された。ルナー帝国の概算だと、現在のヨルプのトロウル人口は七万である。
ザルカーシュはヨルプ山脈の首都であり、全部族の長である雄トロウルの本拠地である。彼は名誉上、雌ということになっていて、ザルカーシュのジェムズJamuzという称号で知られる。この都は太祖ジェムズが子供たちに食べられた場所の上に築かれたので、ヨルプ山脈で最も聖なる場所でもある。太祖ジェムズの遺宝は二つだけ残っている。ザルカーシュのジェムズは太祖の歯を並べた首飾りをいつも身につけている。首飾りにはウズウズ一体と比べてさえ二倍の数の歯があり、生前の太祖の偉大な地位と神のごとき力をしのぶよすがとなっている。
太祖ジェムズの最強の武器はヘルストーンHellstone、結晶化した暗黒のかけらで、太祖が暗黒の中を地獄から持ってきたものである。(それを戦いで用いる時、常に大いなる暗黒の呪文が守りとしてかけられるがゆえに)ヘルストーンが光を浴びたことはなく、その一撃はおそるべき打撃を与える。ヘルストーンはアクセナ部族が保持している。これが暗黒時代をアクセナ・ザーの都が生き延びた主な理由のひとつである。
ヨルプのトロウル達
西側の山が六つの古の峰の内で最大であり、人間にヨルプ山とかアルケトスArketos山と呼ばれる。伝統的にザルカーシュでは太祖ジェムズの山と呼ばれるが、しかし大部分のトロウルは、今では山に住んでいる精霊の名にちなんで、ゾルホールXolhorと呼んでいる。この奇妙な火山は凍りついているし、トロウルの伝説はウズがヨルプに来たときに強力な大地の火の精霊がそこに住んでいたことについて詳しく語っている。この精霊は太祖ジェムズに倒された。
「氷の血の」ゾルホールは大いなるホールリ(氷の魔)で、自分用にこの巨人の死体を取り、自らの氷結の性質を吹き込んだ。多くのトロウルがゾルホールを信仰している。この火山は歴史の上で二回噴火し、凍った灰や冷たくぬかるんだ溶岩を敵に浴びせかけた。正気のウズならゾルホールの斜面に住もうとはしない。ゾルホールはウズに対しても敵と同じく、命になんの関心も払わないからである。
ヨルプ山脈の二つの北の峰がアクセナ(東)とミスタック(西)である。そしてその上にアクセナ部族が住んでいる。第一期にアクセナ王は妹のミスタック女王の生き残った子孫を迎え入れた。ミスタックと彼女の多くの子供がドワーフと戦って殺された。ヨルプのトロウルはたいていのウズよりもモスタリを憎んでいるが、ミスタックの子等がした真鍮山脈のドワーフとの絶え間ない戦いは分別がなく、その結果破滅を招き寄せたことを認めた最初の者たちでもある。
それでもミスタックの族のドワーフ相手の手並みは伝説的なまでであり、今日でもアクセナ族は真鍮山脈のドワーフ人口が曙の時代の7分の1に過ぎないことを誇っている。 アクセナ・ザーAksena Zaはヨルプのトロウルの最大の拠点であり、その住民は「混沌の時代」の最悪の時期を生き抜いた。山の南東部の斜面を掘り抜いて、2世紀までは文化の中心地として栄えた。統一評議会がドラストールに移った後、より簡単にそこと交流できるようにザルカーシュが建設された。その後、ザルカーシュがジェムズの本拠としての地位を保った。ザルカーシュがたとえ陥落したとしても、アクセナ・ザーが撤退する場として残っているということを意味しているだけだとしてもである。
この都市の地上部には人間式の砦をしのばせる遺跡が連なっている。しかしその材料は全て山のかつては命を帯びていた石を噛み砕いて固めたものなのである。地下の部分は非常に大きく、部族が百万のトロウルを収容していると豪語するほどである。おそらく事実ではないだろうが、このことを反証することのできる中に入った人間はいないのである。
アクセナとミスタックの山間には、黒曜石の二枚の門がそびえ立つ。これはアクブリッジAkbridge、かつて下に広がる谷に伸びていた橋の断片である。モスタリが第一期にこの橋を砕いた。しかし二つの部族の子孫なら誰でも、特別な儀式を知っていれば「向こう側Other Side」で橋に乗ることができる。生きている者の中に誰か成功した記憶のある者はいないが、部族の多くの者がこの儀式を試みている。
ミスタック部族が大暗黒の後に滅びた唯一の部族ではない。ゼン、ゴルジョーン、ダクガーが自分の名前を帯びた峰に部族を作った。全てが最初の内栄えたが、それぞれがその後、他の種族による破滅にめぐりあった。ゴルジョーンが最初に滅びた。怪物のような混沌の妖魔にゴルジョーン女王は殺され、彼女の子供たちはブルーに倒された。妖魔は彼女の背骨を折り、両足を食い切ったが、女王は先祖がヒミールの荒野から持ち帰った冷気で妖魔を倒した。そしてその秘密はヨルプ山脈から失われた。
黒くぎざぎざした玄武岩のゼンの峰はゾルホールの東、ザルカーシュの都の後ろにそびえている。頂上にはヨルプのトロウルの最大の英雄、「烈風の」ハクラットの聖所がある。オーランスに捧げられた寺院がザルカーシュにあるものの、ゼンはハクラットがオーランスと最初に話して、《飛翔》の魔術を使ったところであり、人間、トロウル双方の信者に神聖と見なされている。
《飛翔》の呪文に(訳注:POWを)最初に捧げる時には、誰であってもこの山に登らねばならないのである。登りは長く困難で、勇敢な山登りにとって新たな魔術を用いて山を飛び降り、名誉を得られる大きな祝祭と常にされる。現代のゼン部族の中で、「トロウルの友」オーランスに対する信仰は、カイガー・リートールに次ぐくらい強い。 ゼン部族は暗黒を生き延びたが、南と東から来た人間と戦って殺された。その戦はすさまじく、ゼンの部族はドワーフやエルフよりも沢山人間を食べた。そして人間は狼の歯よりもトロウルの歯を勲章として集めた。
ケロフィネラの人間とトロウルの到来とともに、戦いにも終わりが来たが、ゼン部族がなくなった後のことだった。彼等とともに彼等の守護神だったノラグNorag(訳注:人間流に言うとイノーラ)とヒミールの最大の秘密も失われた。
第二期の後期に、この部族は「烈風の」ハクラットに再建され、彼はオーランスの風を冬の民とトロウルの民のかけ橋に用いた。しかしハクラットは彼等に全ての人間が敵というわけではないことを教え、地元のオーランス人は以来ずっとヨルプ・トロウルの同盟者である。彼らはEWFの初期の敵で、最小の部族だが、多くがハクラットについて行き、ケロフィネラでハクラットの最後の戦いに加わったからである。
ダクガーの部族は他の部族の多くの家族と同じく、「壊れた評議会」の手により滅びた。彼らはゾラーク・ゾラーンの大いなる信者で、憎むべき「輝く神」の僕どもと戦うためにトロウルの、(後にはトロウルキンの)群れを送り込んだ。彼らは全ヨルプのトロウルの破滅をその狂信性で決定付けたかもしれないが、アーカットのラリオスでの勝利、続けて南方での勝利は、「壊れた評議会」が総力を挙げてヨルプの襲撃者たちを襲うのを妨害した。
「鉛の歯の」ガーカドはダクガーの孫息子で、部族の最後に死んだ者だったが、彼は死ぬ前に偉大なダラ・ハッパの将軍、「鉄のヴロクの」ファランギオを傷つけた。
カング部族は(六つの峰のうちでもっとも南の)ダクガー山に、多くのアーカット軍のよそ者のウズを率いていたザクタグ・カングにグバージ戦争後に創設された。彼らはヨルプに混沌に対する守りとして定着し、この部族の多くの者がゾラーク・ゾラーンとクワラッチ・カングを信仰している。
カング部族は他のトロウルたちに対してすら目立って非友好的であり、自分たちの土地を通行する人間にもトロウルにも極端に敵対的である。しかし彼らは部族連合がドラストールの付近まで襲撃に赴くときつねに頼りにされる。多くのスビーリーの魔女がここで生まれ、ザルカーシュのジェムズに助言している。
最後に滅びた部族はゴルジョーンであり、もっとも東の峰に住み着いていた。決して武力には長じていなかったが、彼らは暗黒と精霊の技に巧みだった。ヨルプのトロウルの中で唯一彼らはルナーの到来に逆らった。ビーナ・バンが来たあと、他の部族の大部分はよそ者の人間を受け入れた。1376年、ジェムズが助言を貰うためにビーナを招き入れると、ゴルジョーン部族は抗議のためにこの地を去り、それ以来見られていない。
ルナーに反対するトロウルたちは、ゴルジョーン部族が背信的な青い月の暗殺者たちに滅ぼされたと主張しているけれども、大部分のトロウルはゴルジョーンがよりルナーに対して非友好的なダゴーリ・インカースまで移動したと考えている。
噂が本当であろうと嘘であろうと、青い月のトロウルはゴルジョーンの古の部族の中心に住み着き、今では「月の谷」とそこは呼ばれている。ザルカーシュから二日以内の旅で行けるが、この場所についてはほとんど知られておらず、青い月の信者たちが奇妙な月の蛾を飼っているのが知られているくらいである。彼らはジェムズに一年に一回貢物をしている。(いつも磨かれていないムーンストーンが貢に加えられている。)そしてザルカーシュのルナー地区まで旅するが、それ以外は孤立している。トロウルたちはこの場所について多く噂をし、月の蛾などより価値のあるものがあるのではないかとほのめかす。しかし青い月のトロウルにまつわることの例にもれず、行って見てきた者は帰ってこない。
ザルカーシュ
ザルカーシュは古のカルデラ山の輪の中に建てられている。ここで、太祖ジェムズは「槍の」コルカトズKorkatozを殺し、彼の死体と、祖霊のひとりゼンが殺したコルカトズの最大の息子の死体を自ら掘り抜いて住居を作った。卑劣な「敵」(訳注:太陽神イェルムのこと)を信仰する東の人間の襲撃は迷惑なもので、それからトロウルたちは彼らを食い止めるために崖の上に多くの小規模な石の砦や物見塔や防壁を建てた。
カルデラの中心にはコルカトズとその子らの骨で作られた捻じ曲がった構造の「骨の塔」がある。部族の女王(訳注:ジェムズのこと、名誉上の雌)は祈祷師や魔女から成る宮廷とともにここに住んでいて、山々を支配し、古の秘密を懐に抱いている。小さな骨がいくつも塔に飾られているが、ウズがジェムズの寵愛を得るために、名高い敵の骨をトロフィーとして贈るからである。ザルカーシュは部族ではなく、伝統によるとヨルプ山脈のトロウルの名誉上の女王は太祖ジェムズ直系の部族のひとつの出身でなければならない。第三期では、これに該当するのはアクセナ部族とゼン部族だけである。
大部分のカルデラの中は甲虫の囲いやトロウルの掘っ立て小屋で占められている。大きな例外はルナー地区Lunar Pocketで、ルナーの商人や問屋、その他の仲買人が住んでいる。ザルカーシュの大部分のトロウルでない住民はここに住んでいる。そしてジェムズはエティーリーズの大司祭にルナー地区内でルナー法を施行する特免を与えている。日常のものと魔術とを問わず、大部分の取引はここで行われ、「月の船」の材料とされると噂される。(訳注:この記事は古いことに注意。ダージーン産の葦の他に材料が要るのかは不明)青い月のトロウルたちもしばしばここで目撃され、通りを歩き回ったり巨大な蛾に乗って頭上を飛んでいる。
ルナー地区の倉庫や社、住居は典型的なルナー様式でトロウルの「貧民窟」のなかでけばけばしく見える。建物の素材の(訳注:ソナーによる)珍しい触感は地元のトロウルにとって面白いものであり、粗野な野生のトロウルたちはこの場をさまよって時間をつぶしている。ルナーの建物を闇の目で見るのは(人間にとって)不可解な魅力を持っている。
カルデラの北の防壁に沿って、より小規模な「オーランス信者地区」がある。非トロウルの住民の住居があり、彼らはザルカーシュに巡礼に来たか、ルナーの防壁の中に住むことを諾えない者である。「トロウルの友」オーランスの寺院がここに建てられていて、人間にはとても奇妙なものである。寺院は崖の面に設えられているが、帰依者のトロウルたちが数百もの、狭い風の通る道を掘り抜いている。その洞窟は簡単に完全に封鎖する事ができるように見えるけれども、特別な聖日には、あたかも儀式が空に広がる巨大な洞窟の中で行われているかのように、入信者は雨が自らの顔にかかるのを感じ、星々に雲がかかるのを目にすることができる。
ザルカーシュのオーランス人は、オーランス自身が太祖ジェムズがヨルプの火の巨人の最初の一人を倒すのを助けた、この寺院を収納している洞窟はその時に作られたと主張している。
大部分のザルカーシュへの巡礼はアランスカAlanthka部族の者で、彼らは西方のふもとの丘陵地帯から来る。彼らはまともなオーランス信者で、古来からのトロウルとの友情を守るために来る。これらの信者は寺院の中にある「突き刺す物の間」に持ってきた剣や槍を置き、メイスや棍棒を手に取ることを弁えている。ヨルプのトロウルたちはオーランスが剣の代わりにメイスを持っていると描写している、そして聖所に刃のあるものや鋭いものを持ってくることをひどい冒涜と見なすのである。
ヨルプ山脈の重要な地点
ブルーの十字架
アーカットがドラストールを破壊するのを助けたときに、好奇心に駆られてカング部族は一匹の小柄なブルーはどうしても殺せないことを発見した。傷つけることはできたが、魔術による攻撃を受けてさえ、そのたびに再生した。トロウルたちが食べてしまおうとすると、胃や口は焼けただれてしまい、消化されなかった部分はドラストールの方向に這いずっていくのを目撃された。第三期に、あるグレートトロウルがこのブルーをまるごと飲み込んだが、二日後に食い破って逃げだし、明らかに無傷だった。今日では逃げたり、トロウルを傷つけたりしないようにされている。
よく考えて、トロウルたちはブルーを串刺しにして呪われた地から運び出した。カング部族がヨルプに来ると、彼等は彼らは串にさらに十字に釘づけして、ブルーの手足をも釘で留めた。このブルーは未だに生きていて、苦痛に身もだえし、自由になろうと格闘している。このブルーは頻繁に変異し、新しい脚を生やしたり、火を吹いたり、自由になろうとの努力で姿かたちを変える。何世紀ものあいだカング部族のトロウルたちはこのブルーにひどい傷を負わせ、気絶している内に新しい十字架に移していた。多くのトロウルがここに来て、この不幸な生き物を的に、飛び道具や魔術の練習をしていた。
このブルーは二回だけ逃げだしたことがある。最初は初めて新しい十字に移そうとしたときの6世紀に起こった。しかしブルーが脱走する前に、ある賢いトロウルがブルーの影を釘づけにして捕らえた。二番目は9世紀で、ドラストールからの大規模な襲撃が起こった時と同じくして逃げだした。再び捕まる前にはほとんどドラストールの国境まで来ていた。あるエティーリーズの商人が部族からブルーを買い取ろうとした後、ルナーはダクガー山脈に出入り禁止になっている。
アイスホーム
ゼン山脈最古の居住地。山の北側には氷河が残っている。ゼンの部族は元は氷河の中に快適な洞窟を氷をかみ砕いて作っていた。部族が絶え、ノラグとヒミールの秘密が失われると、氷河は小さく縮んでしまった。ハクラットが部族を再建した時には、氏族のひとつが小さい残りの中に住むことができるだけだった。トロウル達は今でも氷河を保つことを助ける半ば忘れられた儀式について口にする。ある友好的な雪トロウルが氷で建てる技を教えたこともあり、闇の季ごとに氷河の氏族がゾルホール山から氷の塊を切り出し、橇に積んで氷河の上を運んで、住んでいるイグルー状の洞窟の壁を強化するために使う。
六の丘
ゾルホール山の西に広がるこの丘陵地帯は取り憑かれていると言われる。ウズ族は取り立ててここの奇妙なことについて記録していないし、少なくても人間の言うことを認めようとはしない。
「轟く者Thumper」ではうなる音や振動が頂上で力ある供儀が何らかの神になされる時必ず起こる。「転がす者Roller」は夜動き回ると言われる。トロウルの中にそうしているのを見たものはいないが、丘陵地帯に住んでいる人間は過去の数年間だけでも頻繁に動いていると主張する。「噛み付く者」では敵意のある野火が横行していることで知られるが、ヨルプ山脈の「狩りの達人」(訳注:ゾングのルーン王)たちの好む場所である。「燃やす者Burner」は巨大な石の塚であり、草木は生えず、火の季のあいだは日中、通る者の足を焼くほど熱くなる。しかしトロウルたちは単に、岩の中に金属が多く見つかると主張するだけである。「叫ぶ者Screamer」は丘の上で寝ようとする人間は誰でも、真夜中に身の毛のよだつ悲鳴で目を覚ますことからこの名がついた。「かたまりLump」が最後の丘で、人目を引く丘ではないが、《破裂》呪文はこの丘の上では効かないし、トロウルですらこのことは認めている。
ヴァクソール族Vaksoli
ゴルジョーン部族が去ってすぐに、ヴァクソール族はゴルジョーン山に居を構えた。ヴァクソール氏族はコスターディで有力だったが、不運や悪い選択が続いたせいで移住を余儀なくされた。彼らはセーブル部族とコスターディ君主領の支配権をめぐって戦い破れ、その結果のダート戦争は彼らの貴族としての権利の大半を奪った。シリーラの「征服の娘」の強大化はヴァクソール族が持っていた交易の支配権が依存していた多くの市場から彼らを切り離し、富の多くを失った。ペント遊牧民との最初の戦いが始まると、彼らは兆候を読み取って所有していた土地や財産を持ち運びできる現金に換えた。遊牧民たちがペローリアを制覇すると、生き残りの家族たちは逃亡してこの町を建てるために富を費やした。遊牧民たちが追い払われると、ヴァクソール族は自分たちが独特の位置にいることに気づいた。地元のエティーリーズのカルトを支配することに再び成功し、付近の人間とトロウル族双方と交易できたのである。大部分のザルカーシュのルナー地区の交易商人はこの家族の出である。
太陽暦1570年、タヴタールの手記
ザルカーシュにいる間に、私は有名なバザールを見た。商人たちは「巨人の舌」と呼ばれる巨大な中央洞窟の側面に洞穴を掘って店を構えていた。多くのこの形の洞穴が数世紀もの間、根を張っている交易商人の家系に所有されている。新入りは新しく穴を掘れるところを探すよう強いられる。古いほうの洞穴はたいてい大きいが、何世代にもわたって少しずつ深くまで掘るからである。
「秋の山脈」やハリキーヴから訪れるトロウルは「巨人の舌」の中央部に商品を並べ、ジェムズにこの特権のために支払っている。ここはそれほど利益を生むところではない。バザールには盗人のトロウルキンがあふれていて、広がりの中で彼らを遠ざけておくのは難しいからである。
我々はオーランス信者の聖遺物を探していたが、ほとんど見つからなかった。トロウルたちは商品を見て欲しいと言ってくるし、不潔なトロウルキンどもを使って近くまで引き寄せようとするので、やむなく彼らを殴ったり蹴ったりして追い払わねばならなかった。最悪なのはトロウルの食糧小屋を通ったときだった。ジョリクは吐き気を抑えきれなかったが、運の良いことに、二匹のトロウルキンがこれを良い機会と思ってくれて、汚物をほかの事件もなく片付けてくれた。(訳注:ファンタジー「力の言葉」に同じようなシーンがあったね)
他のトロウルたちは値段について議論し、ライバルの商人を侮辱する言葉を怒鳴って我々はほとんどつんぼになるほどだった。いつもあちこちで乱闘が起こっているみたいだったが、それでもトロウルの当たり前からすると平和なものだった。私はトロウルキンの泥棒を追いかけようとしてトロウルたちに引き倒され、フェリスは土が天井から落ちてきたとき恐慌に陥った。生き埋めになるのではないかと恐れたのだ。
トロウルたちは人間が松明をここに持ってくるのを禁じていて、このことで盲目になる異種族をカモにするあらゆる機会をとらえる。フロンガーは上等のシャツを買ったが、生地についた血のしみは外に出るまで見ることができなかった。
他の人間はたいていのトロウルでない者はルナー地区でだけ取引するというが、汚いルナーどもはどんなものを売るにも割り込んでくるし、多くのトロウルはここで商品を売る苦労をしようとしない。我々はもちろんどんなことがあっても行かないだろうし、フロンガーはそのだまされやすさでさんざん馬鹿にされていた。