アーカット信仰についての覚書
Column of Superhero Arkat & Gbaji War
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アーカットと英雄探索Hero Questそして謎Enigma
アーカットはおそらくグローランサ創造者の最も愛する架空の人物であり、世界最大の英雄です。グローランサにおける真実がいかに曖昧なものであるにしても、彼の性格と風貌が物語るものは、数多くありますし、彼の変転の七十五年にわたる闘争と、自らの影(むしろ彼の方を影と呼んだほうが良いかもしれませんが)ナイサロールにかかわる謎。啓発と人間のあり方に関する問題などについて多くの材料を提示していることは疑いありません。(たとえ彼がただゲームのためだけに創造されたのだとしても)
また、英雄探索の創始者は、ナイサロール=グバージを滅ぼすために何度も鞍替えした変節漢でもあります。(私見ですが、彼のモデルは「プルタルコス英雄伝」のアルキビアデスなど、実在の乱世における人物像を介して作り出されたものと推測できます。)「英雄探索」とは、彼以前の英雄達も無意識の内に行っていた現実を己の観点によって改変する作業でしたが、(彼が関わった四つの主要な文化・・・・ザブールの魔道やフレストルの十字行、ハルマストの「光持ち帰りし者の探索行」の再現、ガラザフ・ハイローリックの転生の儀式など)アーカットはそれらを現実と実存の間隙として捉え、それに基づいて意識的に儀式を行う術を見出したのです。
参照するべき文献
Troll Gods: Avalonhill Published
トロウル族のアーカットカルトについてルーンクエストのルール内で詳細に述べている。彼についてはトロウル族の魔道の神、そして基本的に女性優位のトロウル社会に反発する形での「大王トロウル」の信仰についてほのめかしている。(彼がゾラーク・ゾラーンの「死の王」であったことを銘記しておくように。)アーカットがトロウルに変身した経緯、青い月信仰、落天湖の観測記録など。
Troll Pack: Uz Lore(絶版だが日本語訳が存在) Avalonhill Published
グバージ戦争におけるアーカットとトロウル族の関わりが歴史の流れの中で描かれている。多くの古代の地図(漠然としているが)が載せられているので、きわめて重要。また付録として人間からトロウルに変身する儀式(!)について詳細な説明が付されている。
Dorastor: Land of Doom Avalonhill Published
このサプリメントでは、アーカットの宿敵であり、その分身でもあるナイサロールの統治していた「光の帝国」中心部であった地域に今現在何が起こっているか?を記述している。巻末に載せられている「啓発への道」は現在のルナー帝国の優位と弱点について大いに示唆を与えてくれるし、またアーカットという複雑な個性のはらんでいる矛盾への解明に一歩を推し進めている。
Lord of Terror: Avalonhill Published
Dorastorを補完するために編集された。これには混沌カルトとアーカットの関わり(裏切り者カージョールクについての記述を読むこと)、ナイサロールとアーカットの伝説集などが載せられている。
Book of Drastic Resolution: Chaos
Lord of Terrorをさらに補完する目的で出版された。有名なフマクトの神話(アーカットが一度は「フマクトの息子」と呼ばれていたことを忘れないように)やアーカットがナイサロールと対峙した場面についての断片。ラリオスにおけるアーカット信仰と啓発についての関係について触れている。
Book of Drastic Resolution: Darkness
わずかだがArkat Sagaの断片。そしてアーカットはトロウル族にとってはコルターギKortagiというボズタカングBoztakang(トロウル族の混沌殺しの神)の息子の化身として信仰されていることを記述している。
Tradetalk#4,5,6 Kingdom of Night
ケタエラ「聖王国」における古代の「夜の王国」とマニリアにおけるグバージ戦争、「一なる老翁」とアーカットの関係についてわかりやすく記述されている。
Broken Council Guidebook
RQ Con2でのLARPのためのソースブックとして書かれた。ナイサロール創造前から後までを中継し、詳しく履歴の書かれた評議会のメンバーのうち一部は後にグバージ戦争に参加して敵味方に分かれている。
Tales of the Reaching Moon #13 Malkioni Special
アーカットはマルキオン教徒の反面教師として記憶されていること、彼が頻用した末に破門になった「十字軍」の儀式について。暗黒異端派についての記述。ラリオスの三人の暗黒異端派の聖人についてなど。
参照するべきWebsite
Peter Metcalph's "Some Thoughts on Esoteric Arkatism"
Nikk Effingham's"General Notes on the Cults of Arkat"
その他のラリオス・マルキオン教とアーカット信仰についての関係について、Nikk Effingham氏の記事の翻訳はLibrary of Altinaeにあります。
日本語の「啓発への道」サイトにはLand of Doom: Dorastor、Lords of Terror: Who is Arkat?、(繰り返しますが、Drastic Resolution: Chaosはこれの補遺としての性格を強く持っています。)の抄訳が載っています。
神秘主義と啓発
そもそも啓発とは、カルトがその信者を規制している制限を無視することを世界への新たな観点によって可能ならしめるもので、オーランス人の好まない形で秩序を破壊して集団より個人を優先させる哲学です。ゆえに混沌と結び付けられ、またグレッグ・スタフォードはこの精神的なものを重要視する着眼と、ルナー(専制主義オリエント的)とサーター(ヨーロッパ的)の史観から、啓発と東方を結びつける作業を行いました。(それは近年のヴィセラ神話の創造によってほぼ完成されました。)HWのシステムとRQのシステムの大きな相違を平均化する作業は容易なものではありませんが、東方の神秘主義が他の三世界の「異界Other Side」を「誘惑の園」、そして幻想として退けるという意味では、啓発は神秘主義の現れのひとつの形として捉えることが出来ます。
カージョールク
またアーカットがシェン・セレリスと同じように無慈悲な大量殺人鬼であるという見方をすれば、アーカットを今もって憎悪する集団の見方も理解できるでしょう。しかしグローランサの世界は小部分に分割され、その現実のありようも互いに衝突し、これらの衝突の間を縫ってアーカットは目的を達成しました。彼を信じて「裏切られた」者達の多くは彼をその敵であるグバージと同じくらい邪悪な存在であるとみなしています。(例外は彼が繁栄する帝国を築いたラリオスや彼が最後に転身した(したがって裏切らなかった)トロウル族だけです。アーカットは西方の人間にとって怪物を意味する語であるカージョールク族の名で呼ばれ、それはまた混沌の裏切りの神の一般名称としても同視されたわけです。(詳しくはHero Wars: Glorantha Introduction to Hero Warsを読むこと)彼はペローリアでは日食クラーグフィルスKragfilsと呼ばれるか、あるいは単純に「欺く者」グバージとアーカットの呪いを投げ返す形で彼を呼びます。
混沌戦争Chaos War
GTA:HeroもしくはRunelordに所属している人はArkat Saga: THE TALE OF SERALOS DEGUYSやHarmast Sagaに(その一部はMorden Defends the Campとして公開されています)目を通す機会が与えられています。グバージ戦争はその時代のジェナーテラの多くの地域を騒がせた戦いでした。以下はそのアーカットと半生、仲間たちの名簿とその敵、ナイサロールの僕達の一覧です。
アーカットの仲間達
三人の大英雄たち
「哄笑の戦士」テイロール Talor the Laughing Warrior
(Codex #2, Gloranthan Prosopaedia, Tales #13)
フロネラの英雄。ナイサロールの僕である混沌魔術師アリンソールを倒して、異界の門であるヴァニールの門を閉じ、テルモリ族にかけられたナイサロールの混沌の祝福を呪いに変化させた。彼はまたドラストールにおける最終決戦でアーカットと連携してカートリン峠の守りを突破し、ラリオスから夢の都に攻め入った。その後はアケム(ロスカルム)の王として君臨した。彼の乾いたユーモアは神知者によって否定されたが、フレストルの「心の喜びJoy of the Heart」に通じるものとして現在では再評価されている。彼の紋章は金地に黒い猟犬(現在のロスカルム「番犬評議会Watchdog Council」の紋章)。
「炎の剣」ガーラント Gerlant the Flamesword
(Gloranthan Prosopaedia, Tales #13)
セシュネラの英雄。「アーカットの息子」と呼ばれるが詳しくは不明。彼は二つの忠誠に引き裂かれて友人よりも国を取り、聖人に列することになった。彼はそれでもアーカット(とテイロール)の同盟者としてドラストールまで進軍した。彼の白地に赤い炎の剣の紋章は後の「正道への復活十字軍」や神知者に紋章として用いられた。グバージ戦争後はセシュネラ王として即位し、第三マルキオン教公会議でテイロールと信仰を分かち合い、ラリオスのアーカット「暗黒異端派」を禁制した。黒髪の名誉の聖人。
「裸足の」ハルマスト Harmast the Barefoot(光持ち帰りし者の探索行)
(Harmast's Saga, Wyrm's Footprint, Storm Tribe, etc)
ヒョルトランド、ヘンドレイキ族(「光の帝国」から逃れてきた無法者)の一族の農夫として生まれた彼は禁止されていたオーランス信仰に入信して、ロカマヤドン(タラスターの王にして、光の帝国の同盟者。オーランス信仰の冒涜者)に逆らう者の首領となった。裸足でラリオスをさまよってコロラランドで霊感を得、彼は定命の者としては初めて「探索行」に成功し、カートリン峠で殺されて封じ込められたアーカットを冥界から救い出した。アーカットの裏切りにあって落胆した彼は二度目の探索に出たが、このときはテイロールに現実界で出会って同盟を結ぶだけにとどまった。(後の刊行物で彼はベレネス部族の没落貴族であり、ヘンドレイキ族には参加しておらず、ロカマヤドンは彼の師であるヴァーガストに殺されたことが明らかになった。)
「時代を超えた英雄達」
彼らはアーカットに召喚されて(あるいは逆に召喚して)戦争に参加した。
「強者」ヴォガースVogarth the Strong Man
(Harmast's Saga, Storm Tribe)
「銀の時代」の英雄。エスロリアで一族のために戦った。
「ルーン王もしくは真実の」テセルTessele the Runelord or True
(Belintar's Book, Tales#7, Tradetalk #4&5)
「銀の時代」の英雄。カラドラの化身にして喪われたヴォルテム、自らの「魂の兄弟」のために身をささげた。謎が多く、後にベリンタールにも召喚された。
「素早き、もしくは賢明なる王」ヒョルトHeort the Swift or Wiseking
(Anaxial Roster, Thunder Rebels & Storm Tribe, Tradetalk #4, etc..)
「銀の時代」の英雄。ヒョルト族オーランシーの理想的君主として有名。ヴィングコットの「二人目の息子」ヘンガルを英雄探索「我が戦い皆が勝った」の末に救った。
「解放者」チャークChark the Liberator
(Gloranthan Prosopaedia, Elder Races Book of Elder Secrets)
太陽暦7世紀ごろの「未来の英雄」。ドワーフ、個人主義Indivisualismの開祖。
その他の同時代の英雄達
マラスカン・フィリッペMalaskan Phillippe:(Arkat's Saga, Genertela: Crucible
of Hero Wars)現在(1621ST)のアロラニートの統領。マルキオンの直系。アーカットと共に戦い、タニソール吸血王の首を取った。
ペーンドラPeandla:(Lords of Terror)ブリソス人の「魔女」。女性蔑視するブリソス人の慣習に逆らい、無法者になった(?)
カクストールKaxtor:(Genertela: Crucible of Hero Wars, Tradetalk #10)現在マニリア沿岸カクストールブローズ市の精霊として封じられている。アーカットを援助。
マクラ・マン「鉄の剣」Makla Mann Iron Sword:(Broken Council Guidebook,
Tales #5, Storm Tribe)ラリオス・ダーリの王にして風と戦の王フーマスHumathの剣、アーカットがフマクト信仰を裏切っても彼に忠実であり続けた。忠誠心の英雄。
ジャルマー「鉄の剣」Jalmar Iron Sword:(Tradetalk #9)ヒョルト族のフマクト信者。アーカットの裏切りに失望するが、ドラストールまで進軍し、戦死。彼に「神殺しの剣」の秘密を教えたといわれる。
ディスタン「鉄砕き」Distan the Ironbreaker: (Lords of Terror):ビリーニのオーランス信者の始祖にして「鉄砕き」という魔法の剣の保持者。(彼は「輝眼王」ボルソールの祖先である。)彼はアーカットの部将だった。
アエオル(ス)Aeol(us): (Tales #13, Questlines, etc...)ヒョルトランド人の魔道師。アーカットの教えを受けて魔道を学び、オーランスが魔道の源である霊感を得た。アエオル派教会の創始者。
オーウェンレスOwenreth「追放者Exile」: (Enclosure, Storm Tribe)「裸足の」ハルマスト、「自由なる者」ヘンドレイクHendreikなどの英雄に助けられて、ヒョルト族の王国」を再建。大王に選出される。息子の「太陽殺しの」ジャランコルJarankolはダラ・ハッパ討伐軍に参加した。
クワラッチ・カングKwaratch Kang: (Troll Pack: Uz Lore, Troll Gods, Broken
Council Guidebook, Book of Drastic Resolution: Darkness, etc...)トロウル族の死の王にして壊れる前の「第二評議会」の将軍。アーカットを援助し、転生することを勧めた。
ガラザフ・ハイローリックGarazaf Hyloric: (Troll Pack: Uz Lore, Troll Gods,
Tradetalk #4, Book of Drastic Resolution: Darkness, etc...)アーカットの代母となった「氷の目」の氏族の女王種トロウル。スビーリーとカイガー・リートール、ジオーラ・ウンバーの祭司を兼ねていた。
一なる老翁Only Old One: (Troll Pack: Uz Lore, Troll Gods, Tradetalk #4,
5, 6 Book of Drastic Resolution: Darkness, Broken Council Guidebook, etc...)
暗黒語ではエズカンケッコEzkankekko。ケタエラ「夜の王国」の支配者にして黒晶の宮殿の君主、アーガン・アーガーの息子。アーカットの傷を癒し、彼の帝国樹立後は良き共同統治者となった。
ヴォルワッハVorwaha「バイソンの王Bisonlord」: (Troll Pack: Uz Lore, Troll
Gods, Tradetalk #4, 5, 6, Book of Drastic Resolution: Darkness, Broken
Council Guidebook, etc...)
アーカットの北上の援助者。プラックス部族民を率いてタラスターやダラ・ハッパの光の帝国残党を撃滅した。
大敵
ナイサロールNysalor
「輝きの神Bright God」、「啓発する者Illuminator」、オセンタルカOsentarka、グバージGbaji(375−450)
「偽宇宙卵」によって生まれた「宇宙の盟約」に属さないラーショランRashoranの化身。彼の創造はグレイトウェイの「開手主義」ドワーフ、リストの森や北方のエルフ、ダラ・ハッパ帝国などが一部の反対者(ヒョルト族、トロウル、ドラゴニュートなど)を除外した形で「ジェナーテラ高評議会」によって推進された。彼は「昼と夜の戦い」で「黒喰らいBlack Eater」を退散させ、トロウル族にトロウルキンの呪いをかけた。螺旋の中心でアーカットと対決し、死体は各地にばらばらにされて封印された。ルナー帝国下のペローリア地方では今日でも繁栄を築いた者、啓発の教師として(利益抜きで)信仰されている。ペローリア地方の写本では、彼は第三の眼を持ち、あぐらをかいて輝きながら宙に浮かび瞑想する姿に描かれる。グバージとしては、彼は悪魔のような革の翼を持った怒りに歪む顔の男として描かれる。
以下はアーカットとその同盟者に逆らった、あるいはナイサロールに操られた、あるいは意識的に部下になった英雄達のリスト。
ヴァルガンタル「征服され得ぬ騎士」Varganthar the Unconquerable Knight:(Genertela:
Crucible of Hero Wars)フロネラでテイロールと争った蛮族の騎士。
アリンソール「混沌魔術師」Arinsor the Chaos Sorceror:(Genertela: Crucible
of Hero Wars, Book of Drastic Resolution: Chaos)ナイサロール帝国の僕。混沌を操る魔道師で、ヴァニールの門を杖で開けて混沌を解放しようとした。
グラカマガカン「吸血王」Grakamagakan Vampire King: (Genertela: Crucible
of Hero Wars, Dorastor: Land of Doom)タニソールの吸血鬼にして未来の「赤の遺跡」の君主であった。ナイサロール信仰の僕。アーカットとマラスカン・フィリッペに滅ぼされる。
ファランギオ「鉄のヴロク」Palangio the Iron Vrok(ヴロクとは太陽崇拝者に尊ばれる鷹の一種):(Tradetalk
#10, Arkat's Saga & Harmast Saga, Storm Tribe)リンリディ出身にしてアルコスのダラ・ハッパ将軍。ドラゴンパスまで南下して占領軍を指導。「赤い手の」ヴァーガストを殺す。後にトロウルに変じたアーカット軍に滅ぼされる。
ラルツァカーク「ブルー王」Ralzakaak the Broolord:(Dorastor: Land of Doom)彼を邪悪と信じない神知者によって復活。かつてはナイサロールの僕であったといわれるが・・・・現在のドラストールの支配者。
デリノーグス・ピストールDerinogus Pistol:(Dorastor: Land of Doom)ラリオス、ダンガン同盟を率いてアーカットと戦い滅ぼされる。「光の帝国」の将軍。
ロカマヤドン「嵐の司祭」Lokamayadon the Stormpriest:(Harmast's Saga, Enclosure
#2, Tales #7, Thunder Rebels & Storm Tribe, etc...)タラスター地方の悪名高きオーランスの裏切り者。ハルマストの宿敵。嵐信仰を自分への信仰に置き換えようとしたといわれている。多くの記録が残されているが傲慢な(誇り高い)男だったらしい。ヴァナクの槍の物語Saga
of Vanak Spearなどに頻出。「境界の戦い」で「赤い手の」ヴァーガストに殺される。
クリムゾン・バット(紅色蝙蝠)Crimson Bat: (Dragon Pass Board Game, Dorastor:
Land of Doom, Elder Secrets of Glorantha, Lords of Terror, etc...)赤の女神によって復活させられた。一説では「青い月高原」の邪悪な蝙蝠の神であるとも、アーカットに滅ぼされた混沌の魔獣であるとも言われる。現在ルナー帝国の生物兵器。
エストレックス「聖人」Estorex Holy:(Broken Council Guidebook, Lords of Terror)ユスッパのダーゼイター大司祭。ラリオスで布教して人々に大いに尊ばれた。
アラストール・ゴル・アラル「炎の亀裂の王Lord of Firegulf」Arlastor Gol Aral:(Wyrm's
Footprint)イェルム信者の英雄。太陽停止の際の記述に散見。
アニレストゥ「愚帝」Anirestyu Fool:(Fortunate Succession)ダラ・ハッパのコルダフ皇朝最後の皇帝。グバージ戦争で、国の守りを顧みずに全軍をドラストールに送り、結果国を滅ぼし、自らは退位した。(「幸運なる継承」では悲劇の名君とされている。)
アーカットの生涯
論理王国ブリソス:ホーラルHoral、375年誕生(「太陽停止」、ナイサロールと同い年)から415年まで
(ブリソスより「西の海」、セシュネラ、アロラニートへ。)
ブリソスの森にいたエルフに育てられる。子供の頃父の名を知り(フマクト信者の主張)「神砕きGod Cleaver」もしくは「不壊の剣Unbreakable Sword」という名前の剣を得る。ブリソスのホーラル階級に加わり、戦争の技術の魔道を修める。アロラニート植民地への援軍に従軍し、「グバージ」カルトの存在と自分の運命について悟る。ブリソスを出奔し、「壊れた部品(モスタリ的用語)」になる。
フレストル派セシュネラ:「対混沌十字軍大元帥Grand Marshal of Crusade against
Chaos」、417年より425年まで
(セシュネラよりラリオスへ、カートリン峠(ラリオスとドラストールの間の峠))
アークホームに本拠地を構え、フレストルより伝わった「十字軍」の儀式を頻用してタニソールの吸血王グラカマガカンと戦った。乱用のあまり破門された後もラリオスへと進軍して戦争を継続し、バリッドの森のエルフやフマクト信者と結んでテルモリ族を破った。カートリン攻めに着手し、番人に殺害された。(この時代の彼は赤い髪の大男に描かれる。二つの金の王冠の描かれた黒い盾。)
オーランス教団:フマクトの息子Humaktson、「光持ち帰りし者達の探索行」による救出、425年より440年まで
(スロントスよりケタエラ、ドラゴンパスへ)
ハルマストによって冥界から救われた後、アーカットは「フマクト自身の剣」を持ったフマクトの息子としてスロントスに上陸し、守りの厳しいカートリン峠以外のドラストールに入る道を探し求めた。ロカマヤドンに圧伏されていたドラゴニュート族やトロウル族、ヒョルトランド人が彼の軍勢に加わってスネイクパイプの混沌の群れ、ファランギオ率いるダラ・ハッパ軍を破砕し、彼はトロウル族の混沌に対する力を知るようになった。(この時代の彼は二振りの剣を持った赤毛の蛮族戦士として描かれる。(二振りとは二刀流なのか、それとも一振りは特別なのか))
死の王:トロールへの変身とゾラークゾラーン信仰、トロウル王Kingtroll、440年より450年の勝利まで
(ペローリア蛮族ベルト地帯、ドラストール)
トロウル族の英雄達(ガラザフ・ハイローリック、クワラッチ・カング、一なる老翁)などに導かれて、彼は最後の変容の道をたどった。彼の元の人間の同盟者たちは恐怖にしり込みしたが、それでもグバージへの憎悪から、あるいはアーカット自身への忠誠(マクラ・マンなど)から戦争を継続した。北上してタラスター、そして「光の帝国」の本拠地であるドラストールに英雄達が召喚されて多くが滅びた。首都であるドーカット、そして「夢の塔」が破壊され、自らの分身と争った二者のうち一人のみが塔から出てきてドラストールに呪いをかけた。(「大王」の像は大理石で刻まれ、胸には心臓の印、背中にはゾラーク・ゾラーンの紋章、頭から足まで青銅の釘で貫かれている。)
初代暗黒帝国皇帝Autarch of Stygian Empire、暗黒異端派の預言者、450年より500年の統治
(ラリオスよりグーハン、フェルスタ−湖周辺、東部荒野へ)
アーカットはそれまでの占領地の多くを神の王として支配し、その一部は反逆して独立した旗を掲げた。(テイロールやガーラントなど)彼は戦争の後人間に戻ったとも、女王種トロウルの皇帝たちを生んだとも言われる。(彼の血統はパズラック皇帝の代で断絶した。)彼は統治の後、天空の「鳩座(もしくはアーカット座)」に隠棲したとも、英雄界の泉に居住地を作ったとも言われる。神知者の手でもその居場所は暴かれなかったらしい。
秘教的性質
Uz Lore: Troll Packによると暗黒帝国は神知者の没落の後にジョーストランド王国という形でいったん復活しましたが、これらは三人の「暗黒異端派」聖人達(一説によると彼らはアーカットの部下の将軍であったとも言われる)を信仰していました。三人の名前はマボーディナーンMabordinarne、ヴァルザタールValsatar、ゴリアントGoriantです。この王国の英雄の一人はデレーラ公爵、忍び寄る者レッターRetter
the Stalkerで、彼は有名なトロウル族の敵でした。(つまり常にトロウル族と暗黒異端派が友好的であったわけではないということでしょうか?)
近世でのラリオスでの信仰は、ベイリフェス王朝の征服後の分裂と戦国時代に倦む人々が統一を目指す旗印としてアーカット信仰を掲げています。しかし歴史や伝説の力は過去の神知者における破壊などによって、さまざまなカルト解釈の相違、弾圧による歪みなどがあいまって分裂と混乱をいっそうひどくしているという事実は否めません。「英雄戦争」においてアーカットの化身(達)が出現するという預言があります。以下はPeter Metcalph氏の予測できる範囲内の化身(達)(もちろん偽者も考えられますが)です。
五人ものアーカットの化身が英雄戦争で出現するといわれている。
Foyalfine (Arkat the Deceiver): A real snake in the grass. He is currently entertaining Tanisorans, Belstos and Trolls and is offside with the Old Arkat Kult Alliance (any relation to the EOKA of cyprus is undetermined) and his neighbours (he is described
as "frustrated").
フォイヤルファイン(「欺く者」アーカット):(訳注:Glorantha Con2では、Greg Stafford自身がLARP:How the West was One: Seventh Ecclesiastic Councilで演じていた。彼がどういうペルソナを好んでいるかこれで分かろうというものだ。)非常な陰謀家。彼は最近タニソール、ベルストス、トロウル族(の使者)をもてなしている一方で、裏では古アーカットカルト同盟や隣邦とも交流を続けている。(EOKA(ギリシア系キプロス人独立運動Ethnike Organosis Kypriakon Agonosの略)の活動と関係があるのかどうかは不明である。)(彼は「欲求不満」を抱いていると表現されている。)
I think that he can appear utterly committed to the cause of everybody he meets but will be forced to betray them in the most vicious way possible. Hence his bad odour with his neigbours and half of Azilos is a result of past treacheries. To get ahead in his quest for the throne, he's inviting in the trolls, the borists and the rokari to subdue his current enemies, but currently differing on which one to choose. Eventually he realize that he can choose all of them and become an incarnation of Arkat. In then end, he'll betray his new allies at the best possible moment and find other suckers to ally with.
私が思うに、彼は自分が会う全ての者の目的に身を捧げているように見せることができるが、つまるところ可能な限り最も汚いやり口で、彼らを裏切ることを強いられることになる。したがって彼の隣人達およびアジロスの半分の者による悪評は、彼の過去に行ってきた背信の結果である。玉座を求める彼の探索を推し進めるために、彼はトロウルを、ボリスト派を、そしてロカール派をその時点の敵を鎮めるために招き入れる。しかし最近は与しやすい陣営を選ぶのに意見を変えている。最終的には彼は自分が全ての者に荷担することが出来るし、そのことによって自分がアーカットの顕現の一人に変わることが出来るということを理解する。そしてつまるところ、彼はもっとも有利な時点でその時の同盟者を裏切ることになるだろうし、つぎに利用するための同盟者を見出すことになる。
Reinard de Faucille (Arkat the Troll): Currently ruler of Naskorion (cf Tradetalk #2 for more details). Has an alliance with Halikiv. I believe he wants to turn into a troll but needs Dagobard's Papers because it contains an eye-witness account of how Arkat turned into a troll without compromising his humanity (or purpose). Currently it's missing and he's hunting for the scribe Jalques (cf Troll Gods yellow handout). When he does find this, he'll become an incarnation of Arkat.
ライナール・ド・ファーシーユ(「トロウル」アーカット):最近のナスコリオンの支配者。(Tradetalk誌3号に詳細あり)ハリキーヴと同盟を結んでいる。私は彼がトロウルに変身したいと望んでいるが、そのためにダーゴバルドの論文を求めていると考えている。それは内容にアーカットが自らの人間性(もしくはその目的)といかに妥協することなしにトロウルへと変身したのかについて目撃証言を交えた説明が付されているからである。近頃これが紛失し、彼は書記ジャルクの書簡(Troll
Gods付録の黄色い紙の印刷物)を狩り出そうとしている。彼がこれを見つけ出したときには、彼はアーカットの化身の一人になるだろう。
Argin Terror (Arkat the Chaos Monster): Currently ruler of Tinaros and has unresolved problems with his mother. When he does resolve them, he'll become an incarnation of Arkat.
「恐怖の」アーギン(「混沌の怪物」アーカット):現時点でのティナロスの支配者にして、母親との間で未解決の問題を抱えている。彼がそれにまつわる問題を解決したとき、彼はアーカットの権化となる。
Argrath (Arkat the Liberator): "Umm. Sorry guys, I was just passing through on the . I have no interest in you whatsoever."
アーグラス(「解放者」アーカット):「うーん、ごめんね。私は彼については保留にしたい。なんにせよ、私は君には興味ないんだよ。」
The Good Arkat. Dunno who he is. I think he's for the PCs to discover and champion his or her cause. At some crucial battle, he will be defeated and be horribly murdered. The PCs will be on their own to fight for his ideals because they are still the right ones.
「善良な」アーカット。彼が誰なのかは知らない。私が思うに彼はプレイヤーが見つけ出して彼もしくは彼女の目的を擁護するためにいるのだろう。いくつかの決定的な戦で、彼は負かされてひどい殺され方をする。プレイヤー達は彼の理想のために戦う自分たちの理由があるだろう。それはプレイヤー達がそれでも正義の側にいるからだ。
アーカットに関わる旧跡
セシュネラ
アークホームArkhome
アーカット十字軍の本拠地。
赤の遺跡Red Ruin
タニソール吸血王の本拠地。
ラリオス
ゾラークアーカットZorakarkat
ナスコリオンのライナール公爵によって発見されたトロウルアーカットの聖地。
マロストCity Marost
この町にはアーカットの護りとして百本の魔法の剣が埋められている。
アジロスCity Azilos
フォイヤルファイン伯爵がもつ「諸世界の目Eye of Worlds」という魔法の宝はアーカット伝来の品。
バリッドの森Ballid Forest
「アーカットの同盟者」の森。
マニリア
黒曜石の都City of Blackglass
多くの伝説の源にして「一なる老翁」の首都。「影の高原」の中心。現在はファラオに破壊され、タールの穴Tar Pitが残っているのみである。
カクストールブローズKaxtorprose
沿岸都市。彼を援助した英雄の一人が守護精霊として封印されている。
他にもアーカット信仰を(その裏切りにも関わらず)保持している集団はヒョルトランド・ヘンドレイキのアエオル派における「黒きアーカット」の寺院や、ルナー帝国やスポル・カルマニアの幾分歪んだ形での信仰。そしてもちろんトロウル「大王アーカット」の信仰が含まれます。
Hero Warsにおけるアーカット
グレッグ・スタフォードへのインタビューの後、アーカットについてのいくつかの謎が解明されましたが、それはより一層の謎を生み出すことに留まりました。彼は「最初の英雄」であり、「アーグラス:英雄戦争の救世主(破壊者?)の名の由来」であり、「トロウル族:暗黒と死(人間にとっての)の魔道の神」であり、「ラリオスの不死の独裁者」であり、「ナイサロールの暗黒の半身」であります。HWの英雄界、神界、精霊界、魔道界、地界、物質界に関する解釈は非常に発展を遂げました。そして地界とは「神界、精霊界、魔道界が重なり合う場でありながら、物質界と逆さまに現象が起こる」場所であります。
かつての歴史的なグローランサの構築によれば、混沌、暗黒、海、大地、天空、嵐の順に生まれ、またルーンクエスト第三版では、精霊魔術とは神聖魔術を用いる民の「原始的な」形であり、魔道はさらに発展した社会の産物でした。神秘主義はこの構成をある意味では破壊し、そうでありながらルール上の補正、および第一版と第二版の神秘主義や「誤った信仰」の扱いは今もって不確定か、もしくは不可解なものに限定されています。もし、これらの疑問に答えられる焦点があるとしたら、それはアーカット自身の存在の解明に否応なくつながるでしょう。おそらく将来出版されるであろう「Heroquests and Heroquesting」(2001年冬現在出版予定のみ)が何らかの答えを提示するのかもしれません。
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