Etymology of World of Darkness
以下は許可を受けたVirtual Chantry of Clan Tremereに掲載されているEtymology of World of Darkness(原文はこちら)の日本語訳です。かなり古い記事ですが(ゆえにHunterはない。)主要5ゲームの重要な単語を扱っているので、それなりに利用価値はあると思います。暫時、VampireFAQなどのより製作者側に近い手で書かれた語源についての記事もこれに追加する予定です。Werewolfの単語については少々原文に相違が見られますが、Professor氏の許可を得てそのまま掲載しました。(リンクはこちら。)日本語表記については、英語表記ではなく、語源の可能性の高い現地語に近い発音を載せているつもりです。(無知による間違いは当方にあります。)できるかぎり公式版に添った形で修正できるように改善していきたいと思っています。
A
アーリマンAhriman (Vampire):
Ahrimanはゾロアスター教(ペルシア)の邪悪と暗黒の神であり、アフラ・マズダAhura Mazda、日本の自動車の名前ではなく、善と光、そしてあらゆる良いものの神の敵対者である。(訳注:ヴァンパイアの血脈の一つ。北アメリカ、ギャンレルの枝であったが、最近滅びた。)
アーロウンAhroun (Werewolf):
狼が(満月に向かって)遠吠えする声の擬声語と思われる。語源は不明。(訳注:狼憑きの「満月の相」。戦士)(以上professor氏訳)
アマランスAmaranth (Vampire):
ギリシア神話に由来する、決して落花しない不死の花。そして、現代英語にも用法がいくつか見られる。
アンテデルビアンAntediluvian (Vampire):
稀に使われる英語の形容詞。「洪水前からの」あるいは隠喩表現として「非常に昔」。
アサマイトAssamite (Vampire):
ひとは「アッサムの信者」もしくは「アッサムから来た者」と解釈するだろう。全ての可能性をかんがみて、ここで「アッサム」と言っているのはハッサン・アッ・サバーフHassan as-Sabbah、イスラム教徒、(なんというか)ニザールNizar分派のイスマイールIsma'il派の団員を指すのだろう。西欧ではアサシンAssassin(訳注:暗殺者の一般名詞)として人口に膾炙している。イスラム世界ではターリミーヤTa'limiyyahとして知られている。彼らは11世紀のイスラムにおけるグノーシス・二元論主義的な分派で、アラムートの城塞と付近の地域を占領し、平和的とはとても言えない手段でイスラムの教義と慣習の再定義を試みていた。1256年にモンゴル軍によってこの城塞が陥落するまでの話である。「アサシン」の呼称は十字軍戦士たちによって、この地方の言葉の「hashshashin」もしくは「hashishを食べる人達」という単語からとってつけられたものである。この名称が本当に教派内に薬物使用の事実があってつけられたか、それとも単に敵が彼らの存在を暴れる麻薬中毒者として喧伝しようとしたのかは論争の元となっている。しかし前記の解釈の方が一般には好まれている。(この記事は大部分一般の要望にこたえて、推敲され、「コンサイス・イスラム辞典The Concise Encyclopedia of Islam」(Cyril Glasse筆、1989)の内容から採用された。)
B
バアリBaali (Vampire):
古代のセム系の神性の名バアルBaal(「君主Lord」の意。北欧神話で言うフレイFrey神)におそらく由来する。後に聖書で悪く書きたてられたせいで、悪魔の名の一つと見なされるようになった。
ブルーハーBrujah (Vampire):
魔女を意味するスペイン語の単語 bruja におそらく由来する。この語と綴りに関する選択が元々はフランス語の単語である
brouhaha(「騒乱」の意) に影響されている可能性があることはつとに指摘されている。
C
ケアンCaern (Werewolf):
おそらく cairn の綴り変え。cairn は、境界標、記念碑、墓標などとして積み上げた石のこと。日本では「ケルン」と訳されるが、英語発音は「ケアン」に近い。ランダムハウス英和によれば、語源はスコットランド語・ゲール語で積み石を意味する
carn。ちなみに、horn(角)と同語源である。(以上professor氏訳) (訳注:ケルン、ガロウと精霊界をつなぐ聖地)
カイティフCaitiff (Vampire):
「捕虜」の意でフランスの古語から採用された。身分が低い、もしくは意気地のない人。
カマリリャCamarilla (Vampire):
語源はスペイン語。「小部屋」を意味する。この単語はスペインの君主達に仕える顧問たちの房のことをさし、つまるところ舞台のかげで糸をあやつる者たちでできた、強力な秘密結社もしくは派閥を示すようになったのである。
チェンジリングChangeling (Changeling):
英国の民話では、盗んだ人間の幼児がいた場所をとってしまう妖精のことをいう。伝統的に言って、この言葉に含むものに姿を変えることshape-changingに関する意味は全くと言ってよいほどない。ここで使われている change は、なにかを交換する、もしくは入れ替えるという意味の用法に由来している。
チャイルダアChilder (Vampire):
child の古風な複数形。children と同じ意味。
クリーノスCrinos (Werewolf):
ラテン語の crinis (髪)からの造語と思われる。もしくは、ギリシャ語の krinon (ユリ)を元にした可能性もある。W:tAのゲームデザイナーは、ラテン語の語根を妙な具合にねじまげて造語を作ることが多いようだ。
(以上professor氏訳)(訳編注:狼憑きの半ば人、半ば狼の戦闘形態。)
D
ダエモーンDaemon (Mage):
Daemonはギリシア語に由来し、善であるか悪であるかを問わず、なにかもしくは誰かを見守るために死後の世界から戻ってきたひとつの存在を意味する。
G
ガリアードGalliard (Werewolf):
英語で「剛勇の」「快活な」という意味の形容詞、ただし現代では死語である。また、フランスで16-17世紀に流行した2人で踊る3拍子の軽快なダンスの名称でもある。後者は、リーダース英和では「ガリアルド」、ランダムハウス英和では「ガリアルダ、ガヤルド」と表記されている。英語読みは「ガリャード」に近い。
(以上professor氏訳)(訳編注:凸月の狼憑き。踊り手。)
ギャンレルGangrel (Vampire):
スコットランド語か北方英語方言に由来する有名でない英単語。「さまよう者wanderer」かその類の意味を含んでいる。
ガロウGarou (Werewolf):
フランス語、loup-garou(訳&編注ル・ガルー): が由来。 loup は「狼」の意味で、ラテン語で同じ意味の lupus が語源である。garou はフランク語の wariwolf、つまり英語でいう werewolf(人狼)から、数々の音韻変化を経て今のフランス語の形になったもの。(以上professor氏訳)
ジョヴァンニGiovanni (Vampire):
イタリアの個人名。英名ジョンJohnと同義。あだ名としての用法を、馬鹿げた使い方だと考える人は多い。
グラブロGlabro (Werewolf):
「禿頭」を意味するラテン語根 graber からの造語と思われる。英語の glabrous (無毛の)と比較せよ。 (以上professor氏訳)(訳編注:「狼憑き」の毛深い人間の姿)
H
ヒスポHispo (Werewolf):
「毛深い」を意味するラテン語根 hispidus からの造語と思われる。(以上professor氏訳)(訳編注:狼憑きの狼の戦闘形態)
ホミッドHomid (Werewolf):
White Wolfの造語。 おそらくラテン語の homo (人)が由来だろう。分類学で「ヒト科(Hominidae)の動物」を指す hominid にちなんでいると思われる。 (以上professor氏訳)(訳編注:狼憑きの人型。もしくは人から生まれた狼憑き)
I
アンコニュInconnu (Vampire):
「未知」を意味するフランス語。男性形。英語では、「大型の油質の肉を持つ淡水魚」の種類を指す。
K
カインKine (Vampire):
「牛」の古風な複数形。cow や cattle と同義。(編訳注:カインCaineと同じカタカナ表記なのは困る。)
L
ラソンブラLasombra (Vampire):
間違いなくスペイン語の la sombra に由来。要するに「影the shadow」。
ルプスLupus (Werewolf):
ラテン語で「狼」のこと。(以上professor氏訳)(狼憑きの狼の姿。または狼から生まれた狼憑き。)
M
マルカヴィアンMalkavian (Vampire):
頻繁に引用される起源としてはマラ・カヴィラmala cavillaがあり、ラテン語で「たちの悪い嘲笑」を意味する。残念なことにこれは正しい可能性がある。(訳注:VampireFAQによると、ヘブル語で天使を意味するMalakを語源とするらしい。)
メティスMetis (Werewolf):
フランス語で「混血」「雑種」の意。カナダでは白人(特にフランス系カナダ人)と北米インディアンとの混血児を特に指して使われるが、この用法は一般的に差別的表現と考えられている。フランス語読みだと「メティス」だが、地元の事情に詳しいWoDプレイヤーは、誤解を防ぐために、この言葉を「メティース」と、-tis にアクセントを置いて発音することを勧めている。もっとも、逆にその方が不快感を招くと反発している人々もおり、一概にどちらが好ましいとも言えない。 (以上professor氏訳)(訳編注:狼憑きと狼憑きの間に生まれた狼憑き、禁忌とされ、蔑まれる。)
N
ノスフェラトゥNosferatu (Vampire):
非常につかみ所のない語源に由来する。この単語はブラム・ストーカーの「ドラキュラ(1899)」で大衆化された。そしてフランク・マーノウFrank Murnauの無声映画「ノスフェラトゥ」の題名となった。多くのストーカー後の資料では「疫病の運び手」、「息をしない者」、「死にぞこない」、「悪魔という意味のルーマニア語」というような意味が与えられている。普通の感覚では -u で終わることでわかるように、ルーマニア語の単語の可能性が大きいと考えるのが当然だが、他の言語体系でも nosferat をなんらかの活用形か異なる言語文法にまたがってつくられた語として持ち出すものが存在する。これらの資料は nosferat を複数形にしたり、nosferatu を単数形にしたりする上で、(あるいはその逆で)それぞれ違っているが、わたしはこれらの資料を完全に無視する方向に働いている。なぜならこの活用はいずれにしても完全にルーマニア語の文法と交わらないからである。実のところ、わたしは上記の語源研究の大部分を棄却するつもりだが、それはこれらの相互にはらむ明らかな矛盾と、「疫病の運び手」、「息をしない者」などのこじつけの解釈がおそらく Nosferatu に含まれるラテン語の形態素(訳注:意味を持つ最小の言語単位)を見つけるためのいかがわしい努力によるもののように思えるからである。
nos-feratu <-nos (?) + ラテン語 *feratu (fero, bear「抱く」、それともcarry「運ぶ」という意味)
no-sferatu <- ラテン語non (notの意味) + ラテン語spiratus (「息をしている」の意味)
わたしは多くのルーマニア語の辞書や百科辞典を調査して、どれにも nosferatu を発見できなかった。わたしは何人かの現住のルーマニア人にこの言葉になじみがあるか質問して、誰もが否定した。この事実はこの言葉が本当にルーマニア語であったにしても、古風な言葉か、あまり知られていない方言からきた表現、もしくは両方であることになる。またこの単語は実際の現地調査によって編集されたルーマニアの民話についての多くの本にも載っていないことは明らかである。そして実際に生きている nosferatu を用いてしゃべるルーマニア人に対する取材について触れた例を見つけることもなかった。このような研究報告に列挙されている、膨大な数に昇るルーマニア人の吸血鬼とそれに関わる生き物に関する語彙から考えて、これは実のところ奇妙である。
幸運なことに、レオナルド・ウルフLeonard Wolfは「注釈付きドラキュラAnnotated Dracula(1975)」で、ストーカーがエミリー・ジェラードEmily Gerardの書いた「森のかなたの国 The Land Beyond the Forest(1888)」をこの言葉(ウルフはルーマニア語の「死にぞこないnot dead」が元であると193ページに書いているらしい)の出典資料として用いていると指摘している。ウルフの抜粋によると、この本は古典的なビクトリア朝の人の習慣でトランシルヴァニア地方で旅のスケッチを行う形式らしい。残念なことにわたしは写本を発見できなかったために、これらの考えの道筋についてできるかぎり示した。しかしながら前記の証明からして、私はジェラードの知識の正確さに疑問を投げかける方向になっている。
カルパティア現住の人であるトリスーナ・レスゼシックTriszna Leszczycがalt.vampyresの掲載で示唆しているところによると、
nosferat は necurat という「悪魔」やそれに関わる邪悪な存在について述べるときの婉曲的な語の崩れた形か、外国人の曲解の可能性があるということである。私は彼の報告を精読していないが、そうである可能性はありうる。私は
この考えがnosferatuのつきつめた語源を証明するものでないにしても、nosferat
と nosferatu の二項対立という見地に影響を及ぼす可能性からして非常に可能性が高いと考えている。(VampireFAQによるとルーマニア語のnesuferitに由来する。「耐えがたい」、「忌まわしい」、「汚い奴nasty
fellow」などの意味がある。)
O
オボルスObolus (Wraith):
(複数形:Oboli)オボロスObolos/オボルobol。古代ギリシアの硬貨の名前で1ドラクマの6分の1の価値がある。フランク人たちとヨーロッパの貨幣制度の歴史においてつい最近まで何度か周期的に復活していた。ギリシアのオボロスは大した装飾のない小型の銀貨であり、しばしば豪華なステイター貨とドラクマ貨と比較される。オボロス貨幣は伝統的にギリシアの葬式の風習で、死者(nauron)の口の中に入れられる硬貨である。(訳注:スティクス(ギリシアの三途の川)の渡し賃)
ギリシアにおける貨幣単位、種類(「真正の」Wraithのプレイヤーのために)
ドラクモンdrachmon 1ドラクマ drachm = 6 オボロスoboli
ペントボロンpentobolon 5オボロス oboli
テトロボロンtetrobolon 4オボロス oboli
トリオボロンtriobolon 3オボロス oboli
ダイオボロンdiobolon 2オボロス oboli
トリヘミオボロンtrihemiobolion 3/2オボロス obolus
オボロンobolon 1オボロス obolus
トリテミオロンtritemorion 3/4オボロス obolus
hemiobolionヘミオボロン 1/2オボロス obolus
trihemitetartemorionトリヘミテタルテモリオン 3/8オボロス obolus
tetartemorionテタルテモリオン 1/4オボロス obolus
hemitetartemorionヘミテタルテモリオン 1/8オボロス obolus (チャルコスchalkosとも呼ばれる。)
(貨幣単位についてはG.F.ヒル氏Hillの「古代ギリシアとローマの貨幣Ancient Greek and Roman Coins」、Argonaut、Chaicago、1964年出版を典拠にした。)
P
フィロドクスPhilodox (Werewolf):
ギリシャ語のよく知られた形態素 philo- と doxa の組み合わせが原型。philo- は「愛する」「……に親和的な」の意(性的な意味合いは含まない)。 doxa の方は少々複雑だ。この単語はもともと「(視覚的に)示す」という意味の語根から派生した。他のインド-ヨーロッパ語族の言語では、この語根は後に「例を示す」という意味合いを帯びるようになった。例えば、ラテン語の doceo や英語の teach (どちらも「教える」の意)などである。 ところがギリシャ語では同じ語根が、特に受動態で、「見える」という意味を与えられた。 この「見える」の意が本来の「示す」という意と結合して、おそらくはプラトンのイデア説の基本概念と関連して意味が発達した結果、「意見」という意味をもつ名詞 doxa が生まれたようなのだ。この意味の doxa から発生した複合語には、英語の orthodox(正統説の)や heterodox (異端説の)がある。なお、ギリシャ人は doxa に「名誉、栄光」の意も与えている。明らかに「示す」という原義から外れているが、明らかにギリシャ語源の合成語である Philodox で使われている doxa は、こちらの意味合いではあるまいか。すなわち、「名誉や栄光を好む者」を指すわけだ。
しかし、doxa が英語にとりいれられたのは、主としてプラトンが「国家」第5巻でこの単語を使ったことからである。プラトンは感覚的知覚
doxa (ドクサ=意見)を重んじる人々と、理性的知識 sophia(ソフィア=知識)を重んじる人々の違いについて説いた。彼はくだんの本で、sophia
を求める人を philosopher と呼んでいる。とすれば、doxa を求める人はまさしく
philodoxer と呼ぶことができよう。プラトンはこの合成語を再解析して別の使い方もしている。それについては「国家」に興味深い手がかりがある。
プラトンは 「doxa に固執する人は philodoxical であると言われても仕方ない」というようなことを書いているのだ。
筆者(Buckner)が考えるに、プラトンは philodoxer という単語が英語の glory-hound
のように軽蔑的な意味で使われることを知っていて、このような文章を書いたと思われる。
追補 Oxford English Dictionary 第2版には、philodox が見出し語として収録されている。正確には「名誉や栄光を好む者」だが、orthodoxに影響されて「自分の意見を好む者、議論を好んだり教条主義的な者」と解釈されるようになった、とのこと。英語での初出は1603年になっている。 (以上professor氏訳)
プーカPooka (Changeling):
「プーカ、recte(この語の意味は調査中)プーカは本質的には動物の精霊のように思われる。ある者は自分の名前をゲール語のpoc、「雌の山羊she-goat」に由来を持つが、思索的な人々はこの者のことをシェイクスピアの「パックPuck」の祖先であると見なす。」(ウィリアム・バートン・イェイツW.B.Yeats著、「アイルランドの民話と妖精物語 Irish Folk and Fairy Tales」による)
Q
クイッテセンスQuintessence (Mage):
西欧哲学の用語。火、水、大地、気に次ぐ神秘的な第五元素。
R
ラガバシュRagabash(Werewolf) :
イギリス英語の今は使われない口語の一つで、「浮浪者」「ごくつぶし」「ぼろを着た汚い男」「働かないでのらくらしている者」「不精者」「乞食」等々とおおむね同じ意味。(以上professor氏訳)
ラヴノスRavnos (Vampire):
多くの人がロマニ語(訳注:ジプシーの言葉)の天国に当たる言葉とこの氏族の名をを同一視しているが、わたしは印刷された文献でこれを確かめることができなかった。もう一つの可能性として大きく広まっている考えとしては、(1980年のパンジャブPunjab地方の資料及び1930年代のソビエトの辞書編纂者に)挙げられている「狼のようなwolflike」あるいは「狼lupine」に似た意味を持つロマニ語の形容詞である ruvno(ruv、つまり「狼」に由来) に関係付けられているものである。
赤帽子Redcap (Changeling):
イェーツが「孤独な妖精たち」と呼んでいる種族。ブリティッシュの民話では、この語はゲール語の暴力的でしばしば悪意のあるトリックスターを意味する fear dearg (「赤い男」)の英語におけるありふれた置換語である。
S
サバトSabbat(Vampire):
いくらか古風な英単語で、元々は sabbath (訳注:ユダヤの安息日、また魔女の集会)と同義であり同系統でもある。(このような一組の単語のことを「姉妹語doublet」と言う。)このような言葉に関心が見られるようなので、わたしはこの語のこの型が「黒」や「魔女の集会」と強く関連付けられているということを指摘しておく。(明敏なある読者に指摘された通り、英語と同じくフランス語でもそうらしい。)これはヨーロッパの民話やへヴィーメタルのバンドで、キリスト教徒が想像上サバト sabbath の儀式として、いろいろな魔女や魔術師や妖術師、サタニスト、嬰児喰らいの悪魔崇拝者 sabbat が行っていると歪んだ目でみなしているものである。
サルブリSalubri(Vampire):
明らかにラテン語の「健康healthy」あるいは「健康的healthful」を意味するサルベア
saluber から採用された。(間違いとは言えないが、VampireFAQによると語源はsalubrious(健康な、幸運ななどの意味がある)らしい。)
サメディ Samedi (Vampire):
フランス語がもう一度。「土曜日Saturday」を意味するサメディ(原語では発音は[sahm-dee]サームーディに近いらしい)ここにおける用法はまず確実にヴードゥー教のロア(訳注:loa精霊?)である「サメディ男爵」に由来する。この者は典型的な地霊的存在で、しばしば洒落たトップハットをかぶった姿で描かれる。
シーSidhe (Changeling):
アイルランド語の単語。Sidheは「小さい人々」、「善き人々」、エルフ、スプライトなどと同義(この部分原文間違い?and such)で「妖精Fairy」を意味する。歴史的に、この単語は古典アイルランド語に見られるように sid と sith という二つの変化形を持っている。Sidheは明らかに前の形の現代における派生形であるが、現代スコットランド語とアイルランド・ゲール語の双方の標準的な方言で sith の形の方が好まれている。多くの語源研究が古典アイルランド語の sid と sith を語源として持ち出しているが、どちらも取り立てて優勢であるわけではない。この単語は「平和peace」を意味する単語と形において同じだが、この二つの単語が単に二つの異なる語がたまたま同じ形をとるようになったのか定かでない。(同型異義。英語におけるいわゆるmean(「意味」など)と「不機嫌な」mean(「卑劣な」など)の関係と同じ)現代ゲール語において、 sid と sith の同語源性は、多くをこの言葉の重複性、アイルランドにおけるbean-sith と daoine-sith、「女性のフェアリーwoman fairy」と「妖精の民fairy people」の関係などに負っている。sith-語幹の「平和」という意味との重複の可能性により、daoine-sith は時々「平和の民」の意味で解釈されるが、この翻訳は明らかに議論の余地がある。ゲール語会話の団体のたずさわっている民族語源学もまた、この二つの語の、起源における関係の有無に関しては考慮し得る混乱へと問題を導いている。発音に関しては、典型的に奇妙に感じられるアイルランド語の綴りにも関わらず、本質的には英語の she と同じである。
T
テルーリアンTellurian (Werewolf, Mage):
英語でもめったに使われない言葉で、「地上の」「地球的な」という意味。(以上professor氏訳)
テウルギーTheurge (Werewolf):
例によってギリシャ語源の形態素 the-(神)+-urgy(…術、…業)からの造語。「神々を動かす者」の意(Buckner)
英語の theurgy の変形ではないか。theurgy は慈悲深い神々と会話し、その援助を受けようとしてエジプトのプラトン学派の者などが行った神秘的呪術のこと。日本語では「テウルギー」。語源は<後期ラテン語
theurgia <ギリシア語 theourgeia (魔法)。(Professor) (以上professor氏訳)
トレアドールToreador(Vampire):
スペイン語。闘牛士の一種。
トレメールTremere (Vampire):
「震えるto tremble」を意味するラテン語動詞。初期の語源調査で可能性として出されたイタリア語は間違いである可能性があるが、それは tremare が現代イタリア語だからだ。(訳注:つまり古語にこのような言葉はなかった?)
ツィミィーシTzimisce (Vampire):
この言葉はひょっとするとある種の「人参シチュー」を意味するイディッシュ語の奇妙な綴り言葉か、ビザンツ皇帝ヨハネス一世ツィミィーシJohn I Tzimisces(訳注:マケドニア朝在位969-976)のあだ名から採用されたものである可能性がある。
「人参シチュー」の意見は噂では(Vampireのデザイナーである)マーク・ライン=ハーゲンMark Rein*Hagen自身によって出されたもので、アリッサ・グレッジAlyssa Gulledgeが私に教えてくれたもの。もしこれが正しいとなると、私はイディッシュ/ドイツ語(訳注:イディッシュには多くのドイツ語の単語が入っている)の「完全に混ぜ合わせるto mix up thoroughly」というような意味のzermischenとの関係を疑っている。(zer-の接頭辞はしばしばいくらかの暴力性と行動における激しさを示している。)私はtsemishe(基本的に英語の発音表記綴りではzermisceとなる)と「混ぜ合わせる」を意味するmix upの基本的な意味についてイディッシュ語の引用文献における関連表現に関して目を通した。そしてこの考えの延長として、シチューがあるのは論理的に間違っていない。人参についての特定化がおこなわれたのも、狭く分類された方言の特色、もしくはより長大な文脈に関連しているzermissenの利用法の忘却に関係した、個人的な言語利用法によるものだとする可能性はありうる。このように移住者の子孫の間で、日常生活の言語利用により使用者の祖先の用いていた言語が失われていくのは別に珍しいことではない。このtsemisheの発音はtzimisceの綴りから私が予測する発音よりも、公式化されたtzimisceの発音に近い。この事実は私がこの綴りの由来はどこから来たか、そしてビザンティン皇帝の添え名との関係はあるとしたらどのようなものか、疑わせるきっかけとなっている。
この皇帝のあだ名はアルメニア語の略称がビザンティン・ギリシア語の綴りから、偶然に英語風に直された綴り表記であり、中世ビザンティンの資料によれば、アルメニア語で「ちびshorty」を意味する。(ツィミィーシと彼の一族はアルメニアの血統だった。)
V
ヴェントルーVentrue (Vampire):
語源は単純。Ventru は「太鼓腹の」を意味するフランス語の形容詞である。Ventrueはこの形容詞の単なる女性形。この言葉はヴェントルー氏族の者のイメージが富裕な貴族のものであることから選ばれたのだろう。
この単語がフランス語のvent(風)に由来するという論議は「オッカムの剃刀」(訳注:オッカムの剃刀とはスコラ学の言葉で、かいつまんで言うと単純な解釈がまず試みられるべきだ、という意味である。Law of Parsimony倹約の掟とも呼ばれる)を用いるために伸びた頬ひげのようなものなものである。しかしルスヴンRuthvenの語の(足りないhと余計なeを除けば)語句転綴(アナグラム)に近いものから採られたという示唆はすくなくとも創意に富んでいる。(ルスヴン卿Lord Ruthvenは1819年のポリドリ博士の著した小説「吸血鬼the Vampyre」の主要登場人物の名前で、ゴシック文学における吸血鬼ジャンルの草分けとして見なされており、ひょっとすると吸血鬼的なまでにスタイルの良い詩人バイロン卿のちょっぴり偽装されたやっつけ仕事(訳注:hatchet(手斧) job?)の可能性がある。
「暗闇の世界」のクロスオーバー及びメタプロットに関しては多くの秀逸なサイトがネット内に存在するのでそちらを参照して欲しい。
Min氏のBifrost of Changeling
http://www.bh.wakwak.com/~min/
Kzthy's Site of Exalted
http://page.freett.com/kzthy/index.htm