強大なる魔術師達



「学界の最新鋭として場を占めていた君は、長年、彼らにとって掌中の珠だった。それが「覚醒」してから、君は彼らの敵に変じた。」

「わたしが君達の双方を憎んでいることは察しているだろう。わたしはかつて居心地のよい研究室にいて、真実が大いなる川に渡された橋のようなものだと信じていた。君たちはそれを破壊し、川の中に落ちてずぶぬれになったわたしに対して、わたしが敵のためにしてきたことを認めない、真実などこの世にはなく、あるものは人の意志と魔法だけだと言った。二度と許せない。」

「ではなぜ、我々に味方する。トラディションの眠れる者に対する偏狭な態度、ユダヤ人が他の経典の民に見せるような完膚ない嘲笑の姿勢、それほど憎んでいるのなら君は自分のデーモンを破壊して元の眠れる者に戻ることもできただろうに。」

「なぜならわたしは彼ら人形使いや、君たち道化師を憎むこと以上に昇華、解脱の道を、目覚める前からすら追い求めてきたからだ。現実が全て人の影であるか、唯一神が決して人の理解の届かぬ方であるか、わたしの今感じている現実が全て妄想であるか、知りようがない、君たちも決して仲間内ですら合意に達する事はないだろう。」

「狂人や奴隷へと君を導く考えだぞ、それは。友人なくして人になんの喜びがあるだろうか。君の緻密な頭脳を自己破壊へと導くことは許すわけにはいかない。いかに君が我々を疑おうとも、わたし達はともに昇華を目指す同志なのだから。」

「君たちはわたしを道具にしたかっただけなのだろう。彼らと同じように。心配するな、今ではわたしがトラディションであり、君たちはわたしの犬に過ぎない。昇華戦争は敗北に終わった。この葛藤を俗世間の勢力争いと同視することがそもそもの間違いだ。我々がやるべきことは、彼ら個人個人に自分で望んでいたはずの整形された己の姿を鏡で見せてやるだけだ。あくまでも邪魔するのなら、無力な羊のはずの眠れる者にどれほどのことができるか、教えてやろう。」



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