串刺し公への忠言



大地の祖母より、誇り高き龍の嗣子ヴラド殿に



 貴方に連絡を最後に取ってからどれくらいの時間が経過したでしょうか....時には私のような年ふりた悪の化身ですら、旧友(とその子孫たち)へのセンチメンタルな気持ちが目覚めるものです。信じなくても結構です。血族たちの張り巡らす術策と陰謀、そして背信について私達は飽いていますし、このような態度が若輩者達への煙幕になるのを楽しめる....少なくとも新奇さは味わえます。

 マルシュアスやマハトマの道化た論理に応じることを薦めているつもりはありませんが、我々アンコニュ(という言葉を許していただけるなら重畳)をカマリリャの烏合の衆達が目の敵にしている中で、私達の友情(そこまではいかなくとも同胞意識)を確かめ合うのも全くの無駄ではないと思います。そして危機が迫っている中で私達は慣れ親しんだ習慣に固執するのを困難になっていることを認めざるを得なくなっています。

 さて本題に入りましょう。貴方が「黒手団」についてどれほどの情報を入手しているかは明確ではありませんが、私が彼らのことを昔調べていたことは情報の提供を依頼していたことからもご存知でしょう。彼らは妄想狂の集団でした。彼らは「洪水を生き延びし者達」をセト教団やアッサム教団と同じく自己欺瞞に陥り、盲目的に崇拝することで根元的な恐怖を逃れようと努力していました。(しかし彼らは自らの始祖だけでなく、他の十二柱をもひとからげで崇めていたようですが)しかし彼らの考えがどれほど歪曲されていようともそれに真実のかけらが潜んでいないとはいいきれません。

 我々は盲目の闇に「抱擁」された時点で、我々が何事も理解することがないという真実に向き合うことになったのですから。いわく、彼らの敵は特定の団体でも信条でもなく「魂喰らいSouleater」と呼ばれる半ば哲学的、影界的な(われわれ血族がそれと縁が薄いからかもしれませんが)汚染でした。魔術師たちや聖人たち、妖精達が光ならば、我々はまごうかたなく闇の眷属です。そして信念からくる世界の再認識とは光に属するもの・・・闇ではありません。我々はある意味では自ら望んで牢獄につながれています。

 貴方が「造躯」の「訓え」のことをどう考えているにせよ、貴方の同族である古きツィミーシ族が「造躯」を禁じ、それがアンブラ、我々にとって失われた可能性の元である影の世界からいわば罰として下された物であるおそれがあるのです。そして貴方のところにも訪れた者たちがアメリカの中心都市にあると仄めかしたもの。始祖ツィミィーシ、影の病原の根源こそが伝説に反した真の「造躯」の訓えの源だとすると、ヴェントルー始祖の「支配」以上に深甚な影響を子らに加えている可能性があるわけです。貴方はその「汚染」から免れることが出来ず、若輩者達の支持をツィミィーシ長老たちの反感と抱き合わせで取りつけました。

 さしでがましいと思われることは重々承知していますが、この問題は貴方自身が「感染」している以上、貴方がさらに詳しく研究するべきです。貴方が人間、トルコを滅ぼす軍団を率いる将軍であった頃から、わたしは貴方と貴方の一族に目をかけてきました。貴方の一族がレヴナントの一族でなかったとしてもそうしたでしょう。英雄の一族です。ヴィコスのようなサバトの愚か者たちのように人間を軽蔑することは致命的な間違いをはらんでいます。我々が持っているものは嫌が応でもほぼ全てが人のものなのですから。それでも戦士が知らず知らずのうちに敵の傀儡になってしまっているようでは話になりません。

 すでに終末の日は始まりました。我が一族と祖父、叔父達は始祖の覚醒と狂乱、食餌によってほとんど全てが狂気の果てで滅び、残りのものは更なる危機におののくほかの氏族の血族達に狩られました。(ごく一部の幸運で能力を持った私のような者のみが生き残ることが出来ました。)そのいっぽうで長年の我が宿敵であった黒い老婆は何者かによって滅ぼされ、その軍団は四散しました。喜ぶべきでしょうか、悲しむべきでしょうか。

 予言します。貴方に与えた剣に再び敵の血が吸われる時、そのときが未曾有の危機が迫るときです。貴方に与えられた役割は貴方が思っているものではないかもしれませんが、それにもかかわらず、呪われた生をここにきて捨てることを試みることはありません。わたしたちは若者たちと同じく悪あがきをすることになるでしょう。貴方のいう通り、我々はゴルコンダの嘘を信じないにしても、少なくとも救済を剣で求めるべきではないのかもしれません。

              古の血の注がれた聖地より  デュルガ・シン

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