暗黒の世界の諸都市と退廃の中の住人達
Cities of World of Darkness and Dwellers of Decadence



 暗闇の世界は現実の世界の鏡像であるが、影は現実の世界よりさらに強調され、人が集中する都市の数多い建築物は「眠れる者」達の目の届かない住民たちの棲家となっている。これらの影に住み着いたキャラクター達の属するエスニックの社会は「眠れる者」の社会の提供するものに依存し、利用しながら、その存在を悟られないように「洗練された」(都市を嫌う彼らの同族達が常に非難する通り、「堕落した」と言ってもよい)伝統と社会を築き上げてきた。ゆえに暗闇の住民にとって「眠れる者」とは異なった観点を都市に対して持つようになったことはいわば必然だった。




 吸血鬼(ヴァンパイア)はギャンレルやラヴノスなど、ある意味で文明を拒絶する文化や価値観を持った少数派を除いて多くが、「眠れる者」を食餌にし、価値体系と他の暗闇の勢力と対抗する意味での勢力基盤自体を表の社会に寄生する意味から都市を好み、強力な力を持った個体が封建的なピラミッド状の社会を築いてきた。そして都市同士の関係は「眠れる者」の西欧中世の暗黒時代のように、ごく一部のきわめて強大な個体が存在する場合を除いて絶対的な法体系よりも恩貸地的かつ相対的な伝統によって関係が成立していた。

 血族のように極めて長い寿命を(必然的に遅かれ早かれどの者にも訪れる「事故」を考えに入れた上で)「眠れる者」に対して持っている者は、結局のところ「賎民」たちの文明や科学技術の発展に反対する存在であったであろう。彼らの「賎民」に対する「生かさず殺さず」の姿勢は、「近世の始まり」とカマリリャやサバトの創始によって終わりが告げられるまで続いた。

以下は筆者が重要であると考え、また重要なソースブックが存在する都市から選択した。




古代都市(現在は多くが滅びているか、名は同じ別の場所に作られた都市がある)

第一の都市(エノクEnosh or Enoch)
 ・現実世界における場所:メソポタミアのどこか?(最大の謎の一つ)
 ・危険度:一説によると理想的。一説によると最悪。
 ・重要な住人:カイン・三人の第二世代・第三世代のほぼ全て(サウロット)
 ・参考文献:Book of Nod, Reverlation of Dark Mother?, World of Darkness 1st Edition, Clanbook Salubriなど

 吸血鬼の始祖であるカインの都。ノド学伝承の根源。大洪水によって滅びる。ブルーハーやサバトなどの伝承によっては神王カインに治められた血族にとっての理想の都(人間については意見がさらに分かれる)だが、旧約聖書に沿った見解によると、この都を首都として大帝国を治めていた血族たちの悪徳によって大洪水が引き起こされたという。アサマイトによると邪悪の源であるカインによって平和な都市が悪に汚されたことになっている。ブルーハーの始祖はこの都市でトロイエに同族喰らいされた。

 ・冥界の都市:エノクの「鏡像」が冥界には長らく存在していた。ほぼ現実世界のメソポタミアに対応する場所に存在し、長らく「真の黒手団」の本拠地であった。しかし、最近の出来事により冥界を「大渦巻き」が襲い、アラルを崇める教団は壊滅した。(Dirty Secrets of Black Hand, End of Empire, etc...)



第二の都市(キシュ?Kish )
 ・現実世界における場所:メソポタミアもしくはエジプト国境?(もう一つの謎)
 ・危険度:人間には最悪?
 ・重要な住人:アンテデルビアン達、シャイターン(バアリ始祖)
 ・参考文献:ほぼ全ての血族のクランブック

 洪水後に作られた第二世代と第三世代の都。しかしカインの統率力と指導抜きでは血族達は悪と堕落に走り、諸伝説によるとマルカヴは見てはならぬものを見てカインに呪われ、アブシミリアードは第二世代への叛乱を主導したことからその責を問われ、セトは第二世代の一人に抱擁されて復讐を学び、シャイターンは各氏族から反逆者を募って第三世代の破滅を策謀した。ヴェントルーの始祖は第二世代と運命を共にしたらしい。サウロットはゴルコンダの秘密を手に入れたが都市の破滅は防げなかった。



アッシュール Assur
 ・現実世界における場所:メソポタミア上流域、アッシリア帝国の首府の一つ
 ・危険度:大(外国人には)
 ・重要な住人:第三世代カッパドキウス
 ・参考文献: World of Darkness 1st Edition

古代メソポタミア史上軍事国家として知られ、残虐さでオリエント世界を統一したアッシリアの首府。吸血鬼の資料によると国家の守護神であるアッシュールは吸血鬼であり、カッパドキアン氏族の始祖だった。彼は一度自分の始祖を皆殺しにして新規まき直しをしたといわれている。またバアリの一部も自分達がアッシュールの子孫であると主張し、彼らの本拠地は長く中東に置かれていた…(もう一つの有力な説は彼らがサウロットの「裏切りの子ら」であるという説である。)アサマイトやセト教団によって放逐されるまでは。
 


クノッソス Knossos
 ・現実世界における場所:地中海東部クレタ島
 ・危険度:中(交易国家として有名だった)
 ・重要な住人:シャイタンもしくはネルガル?(バアリ氏族)、ミノス?(トレアドール)とヘレネ?、メネレ(ブルーハー氏族)?
 ・参考文献: Vampire Dark Ages Companion, Clan Book Baali, Chicago Chronicles
 
 地中海文明の嚆矢であり、謎の民族「海の民」によって滅ぼされたとされる。伝説によるとバアリと他の氏族の間で大戦争が先史時代に行われた。バアリの伝承によると、彼らを率いたのは創始者であるシャイタンであるとも、彼の名前を僭称したネルガルであるとも言われる。連合の前に迷宮に篭って邪悪な存在を目覚めさせようとしたバアリは敗北し、シャイターンはいずこかへと消えた。また旧版のソースブックであるCCの伝承によると、ヘレネとメネレの争いの伝説が後のトロイア伝説として残り、その争いは時代を越えて現代のシカゴにまで及んでいるという。(変更された設定である可能性が大きい。)



カルタゴ Carthago
 ・現実世界における場所:北アメリカ
 ・危険度:中もしくは大?
 ・重要な住人:トロイエ(第三世代、ブルーハー)、モロク(バアリ氏族)
 ・参考文献:Clanbook Brujah and Baali, etc...

 フェニキア人の交易都市国家の一つであり、ローマ勢力伸長の過程で衝突し、ポエニ戦争が起こった。西欧史上ではきわめて有名だが、「暗闇の世界」ではカルタゴのブルーハーとヴェントルーのローマの勢力争いの舞台でもあった。ブルーハーの主張によると彼らはこの地で人間と血族の共存に成功したとされる。バアリ氏族によると、彼らの強力なメトセラであるモロクがブルーハーに荷担して他氏族と争った。他のローマに荷担した氏族の口からは当時のローマ人と同じような「政治的な」意見が口にされるだけである。



コラジン Chorazin
 ・現実世界における場所:ユダヤ、ガリラヤ湖沿岸(ひょっとするとアサマイトのアラムートのように、同じ名前の都市・砦が共存しているのかもしれない。
 ・危険度:最悪
 ・重要な住人:邪神ナムタル、ネルガル(バアリ)、イズヒム・ウル・バアル(アサマイト)
 ・参考文献:Clanbook Baali, Children of the Night

 古代カナン都市の一つ。White Wolfがなぜ悪の雰囲気をまとわせるのをこの都市に望むのかは不明である。バアリ氏族の伝説によると、メトセラ・ネルガルが悪魔であるナムタルをこの地で発見し、クレタ島へ神体を運んだということである。またChildren of the Nightによると、トレメールの呪いで氏族が分裂したとき、サバト(と黒手団)に与した一派はこの古代都市に拠点を置いたとされる。



ローマ Roma
 ・現実世界における場所:イタリア首都
 ・危険度:中もしくは小
 ・重要な住人:カルミラ(ヴェントルー)、ベシュタール(トレアドール)、ファブリツィオ・ウルフィラ(ヴェントルー)
 ・参考文献:Clanbook Ventrue, Constantinople by Night
 言わずと知れたローマ帝国の首都、異教時代の西欧の中心。古代においてはヴェントルー氏族の本拠地であったが、後にトレアドール、ツィミィーシ、ラソンブラなどが堕落を皇帝達に勧めたため衰退に向かった(と少なくともヴェントルーの一部は主張している。)中世および近代においては、真の信仰を持った人々の他、魔術師団セレスティアル・コーラス、魔狩人レオポルト会などヴァンパイアの勢力を凌駕する超自然力を持った勢力が牛耳っている。(しかし私見だが、ボルジア家やルネッサンスの時代などは吸血鬼の史劇に程よい環境であると思う。)



イェルサレム Jerusalem
・現実世界における場所:イスラエル首都
・危険度:多くの場合大。
 ・重要な住人:
 ・参考文献:Jerusalem by Night
古今最大の聖地の一つ。特に十字軍時代のイェルサレムには強力な血族が賎民の人口に比して不自然なくらい多く住み着いていたらしい。



コンスタンティノープル Constantinople
 ・現実世界における場所・トルコ、ヨーロッパアジア間ボスフォロス海峡
 ・危険度:中
 ・重要な住人:三頭政治、ミカエル(トレアドール)、アントニウス(ヴェントルー)、ドラコン(ツィミィーシ)、マハトマ(カッパドキアン?アンコニュ)
 ・参考文献:Constantinople by Night, Children of the Night

 古代(ビザンティオン)、中世(コンスタンティノポリス)、現代(イスタンブール)を通じて地理的、政治的な理由から重要な都市でありつづけた。コンスタンティヌスによってキリスト教のローマとしての地位が与えられてからは、長くギリシア文化世界の中心地であった。ビザンチンが繁栄を続けている間、愛憎で結ばれたメトセラの三頭政治がマハトマを追い出してコンスタンティノープルを支配した。しかし三頭のうち二人がミカエルを巡って争い、脱落するとミカエルは狂気に陥り、自分が僭称通りの「神のごとき」天使であると信じ込むにいたった。彼の狂気はトルコ人たちが攻めてくるまで続いた。以後帰還した(サウロットの教えを受けたと主張している)マハトマが傀儡であるプリンス達を操っている。



長安
 ・現実世界における場所:黄河中流域
 ・危険度:中
 ・重要な住人
・参考文献: Kindred of the East, Blood and Silks





 近代社会において、限界を知らずに増大する人口や激動する社会、発展していく科学技術、価値観の多様化と情報量の飛躍的な増大は、本質的には独居性の捕食動物であるヴァンパイアに対してこれまでの独立した封建政体を改変して、さらに古来の遊牧的な形態に回帰すると主張するサバトや、「仮面舞踏会の掟」を守るために「人間性」の保持を迫るカマリリャなどの緩やかな統一体を作る必要性を迫るようになった。

 古来から続くジハドとアンテデルビアンの到来、ゲヘナ(終末)の予感などは突発性のものでなく、近代の歴史につきまといながら進行して来たものである。最近のソースブックなどによる急激な血族社会の変化や激動は、これまでのステレオタイプ的な各都市の認識それ自体を流動するものとして捉えなおさなければならない必要を迫ってくる。

近代都市(人口の激増や兵器の発達により、古来の防御を旨とした都市の「限界」や「中心」は失われて曖昧になった。)



ヴェネツィア Venetia
 ・現実世界における場所:アドリア海沿岸都市
 ・危険度:中
 ・重要な住人:アウグストゥス&クラウディウス(ジョヴァンニ氏族)
 ・参考文献:Clanbook: Giovanni & Giovanni Chronicles?

 ビザンチン帝国の周辺国として西欧と東欧の中継地の役割を長らく担い、地中海貿易の重要性が下落するまでイタリア随一の交易都市としてジェノヴァなどと繁栄を競った。暗闇の世界ではカッパドキアン氏族の者が土着のジョヴァンニ家の財力と死霊術に目をつけ、一族ぐるみで抱擁を行ったことで史劇がはじまる。家長であるアウグストゥスがカッパドキウスを同族喰らいして氏族を簒奪したのである。

 彼らはトレメール氏族と異なるやり方で、他氏族の「成り上がり」に対する迫害と粛清を生き延び、彼らとカマリリャの協定で、相互不干渉の法が作られ、カマリリャ恒例の大会合は毎回この都市で行うことが取り決められた。いわばカマリリャの中心地とも考えられる。(もちろん「内陣」が集まる真の中心地を除けばだが。)



ウィーン Wien
 ・現実世界における場所:中欧、オーストリア首都
 ・危険度:小?
 ・重要な住人:トレメール&エトリウス、トレメール七人議会
 ・参考文献:Clanbook Tremere, Blood Magic?, etc...

 芸術に名高いオーストリア・ハンガリーの首府。トランシルヴァニアのケオーリスが謎の理由?によって放棄された後、ウィーンは長らく魔術師の氏族の中心地だった。おそらくカマリリャで最強の団結力を誇る組織がここには存在し、中世、近代を通じて彼らを好まないヘルメス魔術師団やツィミィーシ氏族、アサマイト氏族などの猛攻に耐え抜いた要害である。



ロンドン London
 ・現実世界における場所:イングランド南部、テムズ川沿い
 ・危険度:中もしくは小
 ・重要な住人:ミトラス(ヴェントルー)、ジョン・ディー博士(トレメール)、etc...
 ・参考文献:World of Darkness 2nd Edition, Bloody Heart, Giovanni Chronicle, etc...

 大英帝国の首都。長年の間、ローマの軍神であるミトラスが独裁的な権力を振るってきたが、大陸情勢と異なり、ミトラスは終始一貫してトレメールと対立してきたらしい。イングランドの有名な吸血鬼は他にもロビン・リーランド、タイラー、アレイスター・クロウリーなどがいるが、第一次大戦まではミトラスが一貫して政権を握ってきた。現在はアン・ヴ―ズリーが公子と名乗っているが、権力はミトラスのそれに遠く及ばない。



マドリッド Madrid
 ・現実世界における場所:スペイン首府
 ・危険度:中?
 ・重要な住人:モンカーダ大司教
 ・参考文献:Clan Novel Lasombra & Assamite, World of Darkness 2nd, etc...

ハプスブルグのフェリペ二世の都。荒野の中にあったため産業は栄えず、大航海時代の後は覇権をオランダやイギリスに奪われた。「暗闇の世界」ではラソンブラ氏族の中心地の一つであり、シチリアの始祖がアナーク大叛乱で殺されても、サバトの勢力の牙城として生き残った。ヨーロッパの多くがカマリリャの勢力下にあるため、侵攻の拠点としてしばしば利用されるらしい。ラソンブラの勢力基盤であるレ・ザミ・ノワールはモンカーダの聖堂を氏族の根拠地として用いている。



ベルリン Berlin
 ・現実世界における場所:ドイツ連邦共和国首都
 ・危険度:冷戦時代を通じて大
 ・重要な住人:ハインリヒ・ヒムラー?
 ・参考文献:Berlin by Night



シカゴ Chicago
 ・現実世界における場所:合衆国北部五大湖近隣
 ・危険度:大
 ・重要な住人:メネレ(ブルーハー)、ヘレネ(トレアドール)、レベッカ(アンコニュ)、アル・カポネ
 ・参考文献: Chicago Chronicles

 シカゴは長い間、カマリリャの合衆国進出の拠点として重要な戦略的地域だった。そして多くの物語がCCには描かれているが、その中には強力な護法官であるペトロドンの暗殺、二人のメトセラの覚醒などがあるらしい。(筆者は読んでいないし、この情報が誤っている可能性は大きい。)また、ギャンレル氏族のカマリリャ脱退の背後には護法官のエグゼビアがアンテデルビアンの存在を確認したからだとも言われている。この都市の「監視者」であるレベッカはアンコニュの方針に反して活動的であり、除名寸前であると言われている。



メキシコシティー Mexico City
 ・現実世界における場所:メキシコ首都
 ・危険度:大
 ・重要な住人:メリンダ・ガルブレイス(トレアドール)、シャイターン?、ゴラトリックス(トレメール)
 ・参考文献:Mexico City by Night, Trilogy of Red Death, etc...

 メキシコの首都であり、スペイン人の来寇前はアステカ帝国の拠点の一つであった。サバトの「カインの摂政Regent of Caine」の拠点。現在の摂政であるメリンダは女性である上に二大氏族の出身でもなく、統率力は未知数である。(現時点(2001年春)でMexico by Nightは発売されていない。)Trilogy of Red Deathの限りなく非公式に近い設定によると、ガルブレイスは悪魔崇拝者の援助を得て摂政の地位を奪い、一時は邪神を覚醒させようとしていたらしい?また最近、謎の事件によりトレメール反逆氏族全員が滅ぼされてしまい、彼らの《魔術》の損失はサバトにとって大打撃であると考える者もいる。


ニューオーリンズ New Orleans
・現実世界における場所:合衆国南部
 ・危険度:大
 ・重要な住人
 ・参考文献:New Orleans by Night



ニューヨーク New York
・現実世界における場所:アメリカ東海岸首都、別名「大きな林檎(Big Apple)」
 ・危険度:大(血族がいなくても)
 ・重要な住人:ポロニア枢機卿(ラソンブラ)、アンテデルビアン?
 ・参考文献:World of Darkness 2nd, Night of Prophesy

 近年この地でサバトとカマリリャの争奪戦が繰り広げられ、そこでは最近の護法官の多くとサバトの首脳数人が激戦を行った。現在はカマリリャの手に首都は落ちているが、予断を許さない。また、ニューヨークの地底を支配するノスフェラトゥの幹部の一人、Shreck net.com の主催者「スメリー叔父さん」は「この都市がニクトゥークの侵攻を受ける可能性がないので理想的である」と報道している。


モントリオール Montreal
 ・現実世界における場所:カナダ
 ・危険度:中
 ・重要な住人:
 ・参考文献:Montreal by Night


香港
・現実世界における場所
 ・危険度
 ・重要な住人
 ・参考文献:World of Darkness: Hong Kong



東京
 ・現実世界における場所
 ・危険度
 ・重要な住人
 ・参考文献:World of Darkness: Tokyo


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