アルコン・ルシータの私信

我が年来の友にして敵なるファーティマへ
この私信は純粋に個人的なもので、君が目覚めていようと、まどろんでいようと、はたまた灰になっていようともお互いの使命と幸福(血族には似合わない言葉だが)の阻害にならないことを信じたい。

しかし、人間は信じたいことのみを信じるものだ。それは定命の人間にのみ許される祝福であり、呪いでもある。彼らが喜ぼうと悩もうと、いずれにせよ彼らは死んでいく。何の違いがあるだろうか?目の見えない彼らを導こうとする者、あるいは破滅を企む者のみがこの祝福もしくは呪いから逃れることを望み、果たせない。

君達の部族について話そう。わたしはかつて君たちと戦い、君達のやり方を多く学んだ。それゆえに私の助言は今でも有益だと見なされている。いまやトレメール氏族の呪いは部族の長老によって破られていることは知っている。恐るべきことで、私の報告をカマリリャの長老たちは信じようとしない。(あるいは信じても恐慌を恐れて握り潰している。)君達の手になる被害がかつていかに甚大であったかを思い起こさせるのだろう。無理もないことだ。

私はかつて君たち「山の老人の修道会」と、叛逆氏族(ならびに黒手団)との関係に大いに悩んでいた。君たちは考え方の異なる同族と出会っても、その者の命を奪おうとしない。君たちの奉ずる「血の道」は同族食らい(アマランス)を積極的に勧めるが、それは君たちの創祖がカインを同族食らいしようと志したことから始まる・・・君たちの「聖遷」(ヒジュラ)が始まった時以来、君たちは知られざる理由から各都市のプリンス達やサバト長老の御用執行人として仕えてきた。また、君の信じる預言者の教えと、古代の「血の道」の違いがセクト内部の分裂に大いに関与していることは予測できる。決断のとき、君の半月刀はどちらの側に向けられるのだろう。

繰り返す。人間は信じたいことのみを信じるものだ。それは定命の人間にのみ許される祝福であり、呪いでもある。しかし我々不死の者はそのような贅沢は許されない。私と君の同胞たちが刃を交えるとき、我々の忠誠心がまた試されることになるだろう。(その日はいずれ、必ずやってくる。)「永遠」を我々は信じているが、それは一つの道しか無いのかも知れない。

ルシータ(ルチタ)Lucita
ラソンブラ叛逆氏族(カマリリャ)、第七世代、反逆者/守護者。
アラゴン王国はアルフォンソ王の王女だったルシータ。「暗黒時代」にその反逆的な精神をを誉められてモンカーダ大司教(スペイン・ラソンブラ氏族とヴァンパイアキリスト教の守護者。以後、サバトの重鎮。最近暗殺された?)に抱擁されて血族となりました。しかし彼女の反抗的な精神は抱擁後も宥められることがありませんでした。彼女の仲間には有名な考古学者であるベケットや、「同族食らい」で悪名高いアナトールなどがいました。

アサマイト氏族との「大反乱」中の死闘の間にその後の不死の生を大きく特徴付けることになったファティマ・アル=ファカディとの出会い、友情と競争関係の発生の後に、サバトが結成されました。しかしルシータは「高貴さの感じられない」氏族とセクトの教義に不満を抱いて父を裏切り、キャマリラに身を投じました。現在彼女は対サバト戦争の有力な闘士です。

(ちなみにヴァンパイアノベルズのDark Ages、Masquerade双方で有名。)

ファティマ・アル・ファカディFatima al Faqadi
アサマイト氏族、第六世代(同族喰らいの可能性あり)、狂信者/一匹狼。
アルモハード帝国のスペイン領、戦士の家に生まれたファティマは、その才覚を血の親トトメスに認められて、女性を原則として認めないアラムートの教団に特例として参入を許されました。ルシータと出会い、長く続く微妙な好敵手かつ親友としての関係を築いたのはスペイン・レコンキスタの戦場ででした。

一度はルシータの暗殺を命じられて、はじめて行動に迷うことがあっても、(これが彼女が任務に失敗した唯一の例です。)彼女は原則として一貫してセクトに狂信的なまでに忠実でした。アサマイト氏族の呪いが解かれた後、彼女は多くの功業を他のセクトの長老暗殺などを同族喰らいを行いながら果たし、今ではアサマイトの三人の統領の一つ、軍事の長カリフの地位の候補に挙げられています。


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