Formula One Data


画像は1990年F3マカオGPのハッキネンとシューマッハ

ハッキネンVSシューマッハ 予選と決勝の傾向

1998年から続くハッキネンとシューマッハのライバル対決。データを調べるとひとつの傾向が浮かび上がってきました。パターンは3つ、@予選でハッキネンが圧倒的に速い場合、A予選でハッキネンが少し速い場合、B予選でシューマッハが速い場合、です。

 

@予選でハッキネンが0.7秒以上速い場合−ハッキネン6勝0敗

GP ハッキネン 予選
タイム差
シューマッハ
予選 決勝 予選 決勝
順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗
1998 オーストラリア PP 優勝 0.757秒 3位 リタイヤ(5周)
ブラジル PP 優勝 1.158秒 4位 3位
スペイン PP 優勝 1.523秒 3位 3位
モナコ PP 優勝 0.904秒 4位 10位
11 ドイツ PP 優勝 1.621秒 9位 5位
13 ベルギー PP リタイヤ(0周) 1.115秒 4位 リタイヤ(25周)
1999 オーストラリア PP リタイヤ(17周) 1.319秒 3位 8位
ブラジル PP 優勝 1.010秒 4位 2位

予選でハッキネンが0.7秒以上速い場合は、レースでもハッキネンが圧倒的に強く、シューマッハが太刀打ちできなかったことを示します。このケースでは序盤でハッキネンが大量リードを奪い、ピット作戦の余地を与えないということになります。

下は同じレースでのファステストラップ、リーダーラップ、ピット回数で、ハッキネンがシューマッハにつけいるスキを与えなかったことを表しています(ピット回数の+1は予定外の緊急ピットイン)。

しかしながら、予選で両者に大差がつくというケースは、99年ブラジルの後はなくなりました。

GP ハッキネン 最速
ラップ
タイム差
シューマッハ
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
順位 勝敗 周回 勝敗 順位 勝敗 周回 勝敗
1998 オーストラリア 1位 37周 2+1回 4.125秒 13位 0周 -
ブラジル 1位 72周 1回 0.290秒 2位 0周 2回
スペイン 1位 63周 2回 0.350秒 2位 0周 3回
モナコ 1位 78周 1回 0.241秒 3位 0周 1+1回
11 ドイツ 2位 43周 1回 0.265秒 6位 0周 1回
13 ベルギー 0周 - 1位 18周 2回
1999 オーストラリア 3位 17周 - 1.197秒 1位 0周 1+1回
ブラジル 1位 38周 1回 0.168秒 2位 11周 1回

1998年第2戦ブラジルGP
ハッキネン(PP→優勝)、シューマッハ(予選4位→決勝3位)

予選でシューマッハに1秒以上の差をつけたハッキネンは、レースでも1周につき1秒ずつ離して行く。シューマッハは前半にフレンツェン、中盤にブルツを抜けずに苦戦。ハッキネンの楽勝に終わる。シューマッハは3位に入ったものの、ハッキネンに1分の遅れだった。

マクラーレンの序盤の強さはタイヤにあった。フェラーリは次戦に投入されたグッドイヤーの幅広タイヤで差を縮めていく。

A予選でハッキネンが速いが差が0.6秒未満の場合−シューマッハ9勝2敗

GP ハッキネン 予選
タイム差
シューマッハ
予選 決勝 予選 決勝
順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗
1998 サンマリノ PP リタイヤ(17周) 0.362秒 3位 2位
カナダ PP リタイヤ(0周) 0.215秒 3位 優勝
フランス PP 3位 0.230秒 2位 優勝
イギリス PP 2位 0.449秒 2位 優勝
10 オーストリア 3位 優勝 0.034秒 4位 3位
12 ハンガリー PP 6位 0.393秒 3位 優勝
1999 サンマリノ PP リタイヤ(17周) 0.176秒 3位 優勝
モナコ PP 3位 0.064秒 2位 優勝
スペイン PP 優勝 0.189秒 4位 3位
イギリス PP リタイヤ(35周) 0.419秒 2位 リタイヤ(0周)
2000 オーストラリア PP リタイヤ(18周) 0.519秒 3位 優勝
ブラジル PP リタイヤ(31周) 0.397秒 3位 優勝

予選でハッキネンが速いが差が0.6秒未満の場合は、レースではシューマッハが9勝2敗という結果が出ました。0.5秒以内の差であれば、シューマッハとロス・ブラウンのレース戦略で逆転できるということです。

ただし、シューマッハは予選4位のときは優勝できないというジンクスがあります。

下図でもわかる通り、シューマッハは予選で多少遅れても、レース中のファステストラップでハッキネンを凌駕する走りを見せています。

GP ハッキネン 最速
ラップ
タイム差
シューマッハ
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
順位 勝敗 周回 勝敗 順位 勝敗 周回 勝敗
1998 サンマリノ 4位 0周 0.770秒 1位 0周 2回
カナダ 0周 1位 27周 3回
フランス 3位 0周 2回 0.723秒 2位 70周 2回
イギリス 2位 50周 2回 0.257秒 1位 10周 2+1回
10 オーストリア 3位 69周 1回 0.383秒 2位 0周 2回
12 ハンガリー 4位 46周 2回 1.259秒 1位 31周 3回
1999 サンマリノ 2位 17周 - 0.598秒 1位 27周 2回
モナコ 1位 0周 1回 0.029秒 2位 78周 1回
スペイン 2位 61周 2回 0.227秒 1位 0周 2回
イギリス 1位 24周 1+1回 0周
2000 オーストラリア 4位 18周 0.681秒 2位 33周 1回
ブラジル 3位 8周 0.701秒 1位 61周 2回

1998年第12戦ハンガリーGP
ハッキネン(PP→6位)、シューマッハ(予選3位→優勝)

PPハッキネンの2回タイヤ交換に対し、予選3位のシューマッハは3回交換で対抗。そのためには予選なみの全力疾走が必要だった。縁石をはみ出さんばかりの走行を続けるシューマッハ。最終コーナーでは勢い余ってコースアウトする。

だがマクラーレンも思うようにペースが上がらない。ハッキネンは終盤、ハンドリング不調で順位を落とす。シューマッハが優勝。シューマッハいわく「60周も予選をやっているようだった。今までで最高の勝利。」

B予選でシューマッハが速い場合−ハッキネン5勝3敗

GP ハッキネン 予選
タイム差
シューマッハ
予選 決勝 予選 決勝
順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗 順位 勝敗
1998 アルゼンチン 3位 2位 0.381秒 2位 優勝
14 イタリア 3位 4位 0.390秒 PP 優勝
15 ルクセンブルグ 3位 優勝 0.379秒 PP 2位
16 日本 2位 優勝 0.178秒 PP リタイヤ(31周)
1999 カナダ 2位 優勝 0.029秒 PP リタイヤ(29周)
フランス 14位 2位 3.241秒 6位 5位
15 マレーシア 4位 3位 1.178秒 PP 2位
16 日本 2位 優勝 0.350秒 PP 2位

予選でシューマッハの方が速かった場合、レースではハッキネンが5勝3敗と勝ち越しています。ハッキネンは追われる時に弱く、追うときに強いと言えるでしょうか。

両者は、予選で上になった方が守りに入り、下になった方が積極的なセットアップと作戦に出る傾向があります。そして、レースでは積極的な方が勝つことが多いと言えましょう。

GP ハッキネン 最速
ラップ
タイム差
シューマッハ
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
最速ラップ 1位周回数 ピット
回数
順位 勝敗 周回 勝敗 順位 勝敗 周回 勝敗
1998 アルゼンチン 2位 14周 1回 0.011秒 3位 54周 2回
14 イタリア 1位 10周 1回 0.344秒 2位 34周 1回
15 ルクセンブルグ 1位 43周 2回 0.551秒 3位 24周 2回
16 日本 2位 51周 2回 0.236秒 1位 0周 1回
1999 カナダ 4位 40周 1回 0.338秒 2位 29周
フランス 2位 6周 2回 1.256秒 9位 11周 2回
15 マレーシア 5位 0周 2回 0.836秒 1位 17周 1回
16 日本 2位 50周 2回 0.258秒 1位 3周 2回

1998年第15戦ルクセンブルグGP
ハッキネン(予選3位→優勝)、シューマッハ(PP→決勝2位)

前戦モンツァで優勝し、勢いに乗るシューマッハはニュルブルクリングでもPPを取る。しかしフェラーリは決勝で保守的になった。

予選3位のハッキネンは燃料を多く積み、給油を遅らせる。1回目のピットイン前にスパートしたハッキネンは、ピットアウト後にぎりぎりでシューマッハの前に出る。

その後も抑えきってハッキネンが優勝。シューマッハのお株を奪うピット戦略の勝利だった。