2000年のデータを集計して、傾向を分析していきます。1回目は予選成績です。
PP平均速度の最高はイタリア・モンツァの248km/h、最低はモナコの152km/hです。鈴鹿は全サーキット中、5番目に速い220km/hを記録しています。
2000年は、11サーキットで前年を上回り、6サーキットで下回りました。
なお、フランス・マニクールは前年が雨、アメリカ・インディアナポリスは前年開催していません。
予選での最高速度記録では、全体的に前年を下回っています。5サーキットで上回り、12サーキットで下回りました。
最高はドイツ・ホッケンハイムの351km/h、最低はハンガリーの283km/hです。鈴鹿は8番目の307km/hです。
最高速度が抑えられたのに、平均速度が上がっているということは、ブレーキ、加速、コーナリングスピードがそれぞれ向上していることを表しています。
逆に言うと、エンジンは馬力競争の時代から、マシン低重心のための小型軽量化に向かっていると言えます。
ポールポジションタイムを100%とし、それとの比率を全戦で平均化した値で並べました。1%が1秒にほぼ相当します。
PPを9回記録したM・シューマッハが1位となりました。しかしながらハッキネン、クルサードのマクラーレン勢とはわずかな差です。バリチェロは上位3人からやや離されました。フェラーリ、マクラーレンの2強に続くのは、今年もジョーダン勢ですが、上位との差は縮まりませんでした。
ドライバー | チーム | 平均% | 差 | 平均順位 | 最高位 | |
1 | M・シューマッハ | FER | 100.291% | 2.0 | PP9回(スペイン、モナコ、カナダ、フランス、ハンガリー、イタリア、アメリカ、日本、マレーシア) | |
2 | ハッキネン | MCL | 100.326% | +0.035% | 2.5 | PP4回(オーストラリア、ブラジル、サンマリノ、オーストリア) |
3 | クルサード | MCL | 100.374% | +0.084% | 2.7 | PP2回(ヨーロッパ、ドイツ) |
4 | バリチェロ | FER | 100.825% | +0.535% | 4.8 | PP1回(イギリス) |
5 | フレンツェン | JOR | 101.416% | +1.126% | 7.9 | 2位1回(イギリス) |
6 | トゥルーリ | JOR | 101.424% | +1.133% | 7.5 | 2位2回(モナコ、ベルギー) |
7 | R・シューマッハ | WIL | 101.511% | +1.221% | 8.5 | 4位1回(ハンガリー) |
8 | ビルヌーブ | BAR | 101.658% | +1.367% | 8.7 | 4位1回(イタリア) |
9 | アーバイン | JAG | 101.697% | +1.406% | 9.8 | 6位1回(フランス) |
10 | フィジケラ | BEN | 101.817% | +1.526% | 10.4 | 3位1回(ドイツ) |
11 | バトン | WIL | 101.989% | +1.698% | 11.9 | 3位1回(ベルギー) |
12 | ブルツ | BEN | 102.133% | +1.842% | 13.3 | 5位1回(日本) |
13 | デ・ラ・ロサ | ARR | 102.183% | +1.893% | 13.1 | 5位1回(ドイツ) |
14 | フェルスタッペン | ARR | 102.292% | +2.001% | 14.1 | 8位1回(イギリス) |
15 | ハーバート | JAG | 102.309% | +2.018% | 14.2 | 8位1回(ドイツ) |
16 | ゾンタ | BAR | 102.428% | +2.137% | 14.4 | 6位1回(オーストリア) |
17 | サロ | SAU | 102.525% | +2.234% | 14.8 | 9位2回(オーストリア、ハンガリー) |
18 | アレジ | PRO | 102.578% | +2.287% | 16.6 | 7位1回(モナコ) |
19 | ディニス | SAU | 102.626% | +2.335% | 15.9 | 9位1回(アメリカ) |
20 | ハイドフェルド | PRO | 102.879% | +2.588% | 17.1 | 13位3回(ヨーロッパ、オーストリア、ドイツ) |
21 | ジェネ | MIN | 103.788% | +3.497% | 20.6 | 18位2回(オーストラリア、ブラジル) |
22 | マッツァカーネ | MIN | 104.400% | +4.109% | 21.7 | 20位1回(サンマリノ) |
同一チームのドライバー同士の対戦成績です。赤丸はどちらかが9勝して決着のついたレース。最終戦までもつれこんだのはジョーダンとプロストでした。
チーム | 勝者 | 勝 | 敗 | AUS | BRA | RSM | GBR | ESP | EUR | MON | CAN | FRA | AUT | GER | HUN | BEL | ITA | USA | JAP | MAL | 敗者 |
FER | M・シューマッハ | 15 | 2 | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | バリチェロ |
MCL | ハッキネン | 10 | 7 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | クルサード |
JOR | トゥルーリ | 9 | 8 | ● | ● | ● | ● | ○ | ○ | ○ | ● | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | フレンツェン |
JAG | アーバイン | 13 | 3 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | − | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ハーバート |
WIL | R・シューマッハ | 11 | 6 | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ● | ● | ○ | バトン |
BEN | フィジケラ | 13 | 4 | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ● | ● | ブルツ |
BAR | ビルヌーブ | 15 | 2 | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ゾンタ |
ARR | デ・ラ・ロサ | 12 | 5 | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | フェルスタッペン |
SAU | サロ | 11 | 6 | ○ | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ● | ○ | ○ | ディニス |
PRO | アレジ | 9 | 8 | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ● | ○ | ハイドフェルド |
MIN | ジェネ | 14 | 3 | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | ○ | ● | ○ | ○ | マッツァカーネ |
最高速度について、全車平均との差異(km/h)を計算し、順に並べました。トップと最下位との差は、時速8.7kmです。アロウズはベネトンと同じエンジンですが、車の性格とセッティングの違いで3〜4km/hの差が出ました。フェラーリと型落ちのペトロナスが後半戦に向上しているのに比べ、ホンダと無限ホンダは後半戦に低下しています。
ドライバー | チーム | エンジン | 指標 | 前半 | 後半 | 前後半差異 | |
1 | クルサード | MCL | MER | +3.8 | +3.9 | +3.6 | ↓-0.3 |
2 | フェルスタッペン | ARR | SUP | +3.4 | +3.2 | +3.6 | ↑+0.4 |
3 | ハッキネン | MCL | MER | +3.0 | +3.0 | +3.0 | 0.0 |
4 | バリチェロ | FER | FER | +2.6 | +2.0 | +3.4 | ↑+1.4 |
5 | デ・ラ・ロサ | ARR | SUP | +2.6 | +2.6 | +2.6 | 0.0 |
6 | M・シューマッハ | FER | FER | +1.9 | +1.8 | +2.0 | ↑+0.2 |
7 | ビルヌーブ | BAR | HON | +1.4 | +2.0 | +0.8 | ↓-1.2 |
8 | トゥルーリ | JOR | MUG | +0.9 | +1.2 | +0.6 | ↓-0.6 |
9 | ゾンタ | BAR | HON | +0.8 | +1.7 | -0.2 | ↑+1.9 |
10 | バトン | WIL | BMW | +0.7 | +0.4 | +1.0 | ↑+0.6 |
11 | R・シューマッハ | WIL | BMW | +0.5 | +0.8 | +0.3 | ↓-0.5 |
12 | フレンツェン | JOR | MUG | -0.1 | +0.5 | -0.8 | ↓-1.3 |
13 | ハーバート | JAG | FOR | -0.2 | -1.0 | +0.8 | ↑+1.8 |
14 | フィジケラ | BEN | PLY | -0.6 | +0.1 | -1.4 | ↓-1.5 |
15 | アーバイン | JAG | FOR | -1.0 | -0.7 | -1.4 | ↓-0.7 |
16 | ブルツ | BEN | PLY | -1.2 | -1.6 | -0.7 | ↑+0.9 |
17 | アレジ | PRO | PEU | -1.6 | -1.4 | -1.7 | ↓-0.3 |
18 | ハイドフェルド | PRO | PEU | -1.8 | -1.4 | -2.2 | ↓-0.8 |
19 | サロ | SAU | PET | -2.5 | -3.2 | -1.8 | ↑+1.4 |
20 | ディニス | SAU | PET | -3.2 | -3.4 | -3.0 | ↑+0.4 |
21 | ジェネ | MIN | FON | -4.5 | -4.4 | -4.5 | ↓-0.1 |
22 | マッツァカーネ | MIN | FON | -4.9 | -5.7 | -3.9 | ↑+1.8 |
PPタイム比率をグラフ化し、ライバルチームごとに推移を見ます。
開幕時にマクラーレンが速さで上回っていましたが、フェラーリが急速に追い上げ、一時は優位に立ちます。しかし夏場のタイヤの使い方でフェラーリが失速。秋になり、フェラーリは再び驚異的な開発力で戦闘力を取り戻しました。
ウィリアムズBMWとBARホンダ、背後に復帰したメーカーがいる争いです。エンジンはホンダが上ですが、シャシー性能で大きく上回るウィリアムズに軍配が上がります。BARはモナコ、ハンガリーといった低速サーキットで極端に戦闘力が落ちました。しかしながら、来季、2強を追うのはこの両チームと思われます。
前年の好成績で2強に迫ると思われたジョーダン。フォードをバックに鳴り物入りで参戦したジャガー。ともに期待を裏切る結果となりました。しかも両者とも後半戦に戦力がダウンしてしまいました。
ともにルノーのカスタマーエンジンを使用する両チーム。セットアップはベネトンがハイダウンフォース、アロウズがローダウンフォースと異なります。このため最高速で差がつきました。しかしトータル性能ではベネトンが格上でした。ベネトンは来季ルノーとなり、巻き返しを狙います。
ザウバーとプロストは102〜103%台の好敵手でした。メーカーがバックにいない両チームは置いていかれた感があります。ミナルディは最後尾が定着。こちらは昨年争ったアロウズに置いていかれました。
マクラーレン帝国時代にM・シューマッハが互角の戦いを演じるようになりました。
バリチェロとアーバインは2000年にチームが入れ替わりましたが、予選に関する限り、バリチェロの方が上回っています。
ジョーダン・フレンツェンの後退により、2強とそれ以外の差が開いてしまいました。1%の差は1周で1秒にもなります。この差を縮めるチームはどこでしょうか。
予選の1周は、3つのセクターに分けられますが、セクターごとのベストタイムについて見てみます。
ベストセクタータイムは、シューマッハ24回、ハッキネン12回、クルサード8回、バリチェロ6回となっています。ベストセクタータイムは何回かの走りに分散され、その合計が最速でもPPを取れないことがあります。たとえばサンマリノのシューマッハと、スペインのハッキネンは、ベストセクタータイムを集めればPPでしたが、1回の走りではライバルに遅れをとりました。
ベストセクタータイムを2つ取ってもPPが取れなかった場合、残りの一つが失敗したか、ライバルの技に負けたことになります。2000年、最も見ごたえのあった鈴鹿で、ハッキネンはセクター1(S字)とセクター3(130R)を取っていました。セクター2(スプーン)だけでシューマッハに敗れたのです。
セクター1 | セクター2 | セクター3 | セクター計 | PP | |
オーストラリア | シューマッハ | クルサード | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
ブラジル | ハッキネン | シューマッハ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
サンマリノ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン |
イギリス | バリチェロ | ハッキネン | バリチェロ | バリチェロ | バリチェロ |
スペイン | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ |
ヨーロッパ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | クルサード |
モナコ | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ |
カナダ | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ |
フランス | クルサード | クルサード | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ |
オーストリア | バリチェロ | クルサード | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
ドイツ | ビルヌーブ | クルサード | シューマッハ | クルサード | クルサード |
ハンガリー | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ |
ベルギー | トゥルーリ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
イタリア | バリチェロ | バリチェロ | シューマッハ | バリチェロ | シューマッハ |
アメリカ | シューマッハ | シューマッハ | バリチェロ | シューマッハ | シューマッハ |
日本 | ハッキネン | シューマッハ | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ |
マレーシア | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ |