2000年は16戦目でフェラーリのシューマッハがチャンピオンになりました。しかしながら、レースにおけるマシンの速さでは、マクラーレンのMP4/15が最速ではなかったかと思われます。なぜチャンピオンシップで敗れたか、データから探っていきましょう。なお、最終戦マレーシアは消化試合のため除外。
2000年、フェラーリの車は素性がよく、マクラーレンは序盤に信頼性に泣かされました。シューマッハが開幕3連勝し、第7戦カナダGPまで独走しました。マシンの差はないが、シューマッハで決まりと誰もが思いました。
しかし第9戦フランスGPからシューマッハが3連続リタイヤし、点差が一気に詰まります。第12戦ハンガリーGPでハッキネンが優勝し、ついに逆転。ハッキネンは続くベルギーGPも印象的な勝ち方をし、この時点ではハッキネンに分があるとまで思われたのです。フェラーリはリアタイヤが磨耗する弱点を抱えていました。
シューマッハは第14戦イタリアGPで5戦ぶりに勝ちます。フェラーリは必死にマシンを改善し、弱点を克服してきました。次のアメリカGPも勝ち、ハッキネンは致命的なリタイヤを喫します。
そして迎えた日本GP、ハッキネンに先行を許しますが、微妙なウェットコンディションでシューマッハが逆転し、チャンピオンをつかんだのでした。
根底にあることは、フェラーリがマクラーレンと速さで対等になったことです。そうすればドライバーの腕とチーム戦略によって勝つことができたということです。雨がらみのレースが6戦もあり、フェラーリは5勝しました。
2000年の全セッション別のトップタイムをマークした者を並べました。フェラーリとマクラーレンがほとんど独占しています。ここでのポイントは、最初のフリー走行でフェラーリが速いこと。そして、レースのファステストラップではマクラーレンが速いことがあげられます。
フリー走行1 | フリー走行1・2 | フリー走行3・4 | 予選 | ウォームアップ | ファステストラップ | ||
1 | オーストラリア | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン | バリチェロ | バリチェロ |
2 | ブラジル | バリチェロ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ |
3 | サンマリノ | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
4 | イギリス | フレンツェン | フレンツェン | ハッキネン | バリチェロ | クルサード | ハッキネン |
5 | スペイン | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン |
6 | ヨーロッパ | シューマッハ | バトン | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ |
7 | モナコ | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | バリチェロ | ハッキネン |
8 | カナダ | シューマッハ | クルサード | クルサード | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン |
9 | フランス | バリチェロ | クルサード | クルサード | シューマッハ | ハッキネン | クルサード |
10 | オーストリア | シューマッハ | クルサード | ハッキネン | ハッキネン | バリチェロ | クルサード |
11 | ドイツ | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン | クルサード | クルサード | バリチェロ |
12 | ハンガリー | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | ハッキネン |
13 | ベルギー | クルサード | クルサード | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | バリチェロ |
14 | イタリア | バリチェロ | バリチェロ | シューマッハ | シューマッハ | ゾンタ | ハッキネン |
15 | アメリカ | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | クルサード |
16 | 日本 | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン |
最初のセッションであるフリー走行1で、フェラーリが先制パンチを出します。どのサーキットへ行っても最初から速いということは、マシンの素性が良いということを表します。フリー走行1・2、つまり金曜の総合タイムでは、クルサードがシューマッハと並ぶ6回の最速を記録。ハッキネンは1回とマジになっていません。
フリー走行3・4、土曜午前の総合タイムでは、ハッキネンがやるきになり、7回の最速を記録。マクラーレンが煮詰める中、シューマッハは余裕で流します。そして土曜午後の予選で、シューマッハがとっておきの走りを見せ、8回のPPを獲得。ハッキネンは開幕3連続PPの勢いが続かず、5回。
日曜朝のウォームアップでは互角の争い。午後の決勝でのファステストラップでは、マクラーレンが11回と圧倒。ハッキネンが8回も記録しています。これはMP4/15がレースで十分速かったといえます。
1位周回数のシェアはシューマッハが過半数を占めました。このシェアと、優勝回数は、ほぼ比例しています。
マクラーレンはレースをリードするという第一条件に対し、最後まで優位性を保てなかったのでした。
それにしても、99%はフェラーリとマクラーレンで占める状況はすさまじいものがあります。
下はPP、オープニングラップ、中間点、そしてチェッカー時の1位の変遷です。シューマッハが8度のPPのうち、3度はスタートで失っています。逆にハッキネンは5度のPPをすべて守り、かつPP以外から4度、1位を奪うスタートを見せました。とはいうものの、ハッキネンは中間点で4度、シューマッハに1位を奪われてしまいます。
中間点1位〜チェッカーでは、シューマッハが10回中6勝、ハッキネンは5回中2勝です。勝率もさることながら、レース中間点で1位でいることこそ、勝つために重要だったのです。ハッキネンはレースを支配できなかったと言えます。
PP | 1周目1位 | 中間点1位 | 優勝 | ||
1 | オーストラリア | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ |
2 | ブラジル | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ |
3 | サンマリノ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ |
4 | イギリス | バリチェロ | バリチェロ | バリチェロ | クルサード |
5 | スペイン | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | ハッキネン |
6 | ヨーロッパ | クルサード | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ |
7 | モナコ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | クルサード |
8 | カナダ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ |
9 | フランス | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | クルサード |
10 | オーストリア | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
11 | ドイツ | クルサード | ハッキネン | ハッキネン | バリチェロ |
12 | ハンガリー | シューマッハ | ハッキネン | ハッキネン | ハッキネン |
13 | ベルギー | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ | ハッキネン |
14 | イタリア | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ | シューマッハ |
15 | アメリカ | シューマッハ | クルサード | シューマッハ | シューマッハ |
16 | 日本 | シューマッハ | ハッキネン | ハッキネン | シューマッハ |
優勝回数はシューマッハが8勝、ハッキネン4勝と差がつきました。チームではフェラーリ9勝、マクラーレン7勝です。表彰台のべ回数ではフェラーリが19回、マクラーレンは21回。入賞回数ではフェラーリ24回、マクラーレン25回と互角です。ここから、シューマッハの勝負強さ、勝利への執念の差が王座をとったと言えます。
優勝 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 4強ノーポイント | ||||
1 | オーストラリア | シューマッハ | バリチェロ | シューマッハ | ビルヌーブ | フィジケラ | ゾンタ | ハッキネン | クルサード | |
2 | ブラジル | シューマッハ | フィジケラ | フレンツェン | トゥルーリ | シューマッハ | バトン | ハッキネン | バリチェロ | クルサード |
3 | サンマリノ | シューマッハ | ハッキネン | クルサード | バリチェロ | ビルヌーブ | サロ | |||
4 | イギリス | クルサード | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ | バトン | トゥルーリ | バリチェロ | ||
5 | スペイン | ハッキネン | クルサード | バリチェロ | シューマッハ | シューマッハ | フレンツェン | |||
6 | ヨーロッパ | シューマッハ | ハッキネン | クルサード | バリチェロ | フィジケラ | デ・ラ・ロサ | |||
7 | モナコ | クルサード | バリチェロ | フィジケラ | アーバイン | サロ | ハッキネン | シューマッハ | ||
8 | カナダ | シューマッハ | バリチェロ | フィジケラ | ハッキネン | フェルスタッペン | トゥルーリ | クルサード | ||
9 | フランス | クルサード | ハッキネン | バリチェロ | ビルヌーブ | シューマッハ | トゥルーリ | シューマッハ | ||
10 | オーストリア | ハッキネン | クルサ−ド | バリチェロ | ビルヌーブ | バトン | サロ | シューマッハ | ||
11 | ドイツ | バリチェロ | ハッキネン | クルサード | バトン | サロ | デ・ラ・ロサ | シューマッハ | ||
12 | ハンガリー | ハッキネン | シューマッハ | クルサード | バリチェロ | シューマッハ | フレンツェン | |||
13 | ベルギー | ハッキネン | シューマッハ | シューマッハ | クルサード | バトン | フレンツェン | バリチェロ | ||
14 | イタリア | シューマッハ | ハッキネン | シューマッハ | フェルスタッペン | ブルツ | ゾンタ | クルサード | バリチェロ | |
15 | アメリカ | シューマッハ | バリチェロ | フレンツェン | ビルヌーブ | クルサード | ゾンタ | ハッキネン | ||
16 | 日本 | シューマッハ | ハッキネン | クルサード | バリチェロ | バトン | ビルヌーブ |
それにしてもフェラーリとマクラーレンの上位独占率は高く、優勝は100%です。他チームは2位がフィジケラのわずか1回だけです。それもクルサードの失格によってでした。
優勝 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | リタイヤ | 失格 | |
シューマッハ | 8 | 2 | 1 | 1 | 4 | ||||
ハッキネン | 4 | 7 | 1 | 1 | 3 | ||||
クルサード | 3 | 2 | 5 | 1 | 1 | 1 | 4 | 1 | |
バリチェロ | 1 | 4 | 3 | 4 | 4 |
完走率から見ると、マクラーレンがやや上。事故はフェラーリ3回、マクラーレン1回。マシントラブルはフェラーリ5回、マクラーレン4回です。しかしマクラーレンはブラジルとオーストリアで失格があります。
シューマッハは8勝のうち、4勝は雨がらみ(ヨーロッパ、カナダ、アメリカ、日本)です。雨が降ればシューマッハの腕で勝つことができます。ハッキネンは2位が7回と多かったのですが、このうち3戦(ヨーロッパ、ドイツ、日本)は1位を走りながら雨で優勝を逃したのでした。ベルギーで雨があがって逆転勝ちしたのと対照的です。