モンツァで勝つ意味
イタリア・ミラノの北にあるモンツァは、森に包まれて独特の雰囲気がある。ひとつひとつのコーナーが80年以上の歴史の出来事を背負っている。ここでチャンピオンを目指したドライバーが何人も命を落とした。ここだけは勝てなかったチャンピオンもいた。今回のアロンソの勝利はアイルトン・セナの1990年のレースを思い起こさせた。セナは1987年から3年連続で1位走行中になんらかのトラブルに見舞われて勝ちを逃した。だが1990年、セナは地元フェラーリのプロストとの息詰まる戦いを制してついにモンツァで勝った。苦手のモンツァで自信を得たセナはその年に2度目のチャンピオンになった。そして2007年、アロンソは過去2年チャンピオンになりながらも勝てなかったモンツァで勝った。アロンソもまた自信を得たことだろう。
ハミルトンは第一スティントこそアロンソに必死に食らいついたが、第二スティントでは引き離されていった。前週のテストからグランプリのフリー走行や予選を通してどうしてもアロンソに速さで優れない苦しさがここで出た。だがハミルトンはライコネンを抜いて2位に返り咲くしぶとさを持っていた。1周で1秒速いマシンに乗っていたとはいえ、やはりただものではない。
チャンピオン争いは終盤戦になるほどひとつのレースの重みが増す。ドライビング技術だけでは勝てない。セッティングだけでは勝てない。戦略だけでは勝てない。体力だけでは勝てない。精神力だけでは勝てない。それらすべてが合わさった総合力が求められる。
ハミルトンは今シーズン、信じられない力を発揮してきた。果たして終盤にタイトルを獲る力が再び出るか。もし出たら途方も無いドライバーとなる。M・シューマッハの7度王座の記録を破るのはアロンソかハミルトンかという戦いの初年度を、われわれは見ているのかもしれない。
モンツァは高速コーナーのレズモとパラボリカがあり、旋回性能に優れるフェラーリが有利かと思われた。マクラーレンはストップ&ゴーのサーキットなら得意だがこの後はそれがなく、フェラーリが終盤に追い上げて差を縮めるだろうと予想された。だが、モンツァの縁石を乗り越えるときの挙動はマクラーレンが優っていた。レース後、ライコネンは語った。「モンツァはモントリオールに少し似ている。マクラーレンはそこで強かった。われわれは先週のテストで(モンツァでも勝てないと)わかっていた。」
3つあるシケインでマクラーレンが優位でありレースで圧勝したということは、高速コーナーでのフェラーリの優位性も失われつつあると思われる。フェラーリはもう伸びしろがないのだろうか。コース外の騒動とは無関係に、開発のテンポはマクラーレンが優っている。ライコネンはさらに言う。「スパでは互角に戦えると思う」と。決して「優る」とは言ってない。フェラーリが飛躍的に進化しない限り、この後のレースも苦戦するだろう。
アロンソ完勝、3点差
ハミルトン、ライコネン抜き2位
モンツァテストの通りの結果となる
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