2002第13戦ハンガリーGP

スタート1コーナで勝負決す、フェラーリ4年連続タイトル

2002年8月18日 ハンガロリング

(1/43モデルカーの2001-2002を撮影)

<予選>ツイスティなコースでフェラーリが圧倒

平均時速170〜180kmと通常より低速のコース。12のコーナーのうち、半円を描くコーナーが4つもある典型的なミッキーマウス・サーキット。低速コーナーが多いクネクネしたコースは、フェラーリが最も得意とするところ。

セクター1は普通にラインをトレースしていけばいいので、腕の差が出にくい。セクター2は高速コーナーと低速シケインが連続し、マシン特性を生かしきった者が優位。セクター3はセクター1と似た性格だが、高速シケインの通過がリスキーだ。

ルビが0.059秒差でミヒャ制す

上位4人のタイムアタック推移。バリチェロは1回目のアタックをバトンのスピンで失ったが、やり直しでいきなりM・シューマッハを0.66秒も上回った。

M・シューマッハは2回目のアタックでバリチェロの1回目に0.071秒届かず。バリチェロはタイムアップできず。

M・シューマッハは3回目のアタックでも2番手のままで終わる。バリチェロは1分13秒333をマークして今季3回目のPPを決めた。

ウィリアムズ勢はフェラーリのタイムに近づくことができず。R・シューマッハは0.412秒差だったが、モントーヤが1.37秒も離されてしまった。前年、R・シューマッハ4番手(1秒遅れ)、モントーヤ8番手(1.8秒遅れ)だったことから考えれば、苦手コースで差は縮まったと言うべきか。
ルビはセクター2、ミヒャはセクター3で速い

セクタータイムの各自ベストをバリチェロ(+0.0の横軸)との差で比較。

バリチェロはセクター2が速く、M・シューマッハはセクター3で速い。

ウィリアムズ勢はコース全体にわたってフェラーリより遅い。1〜2速を使うコーナーが多いとFW24はマシン特性が生かせない。

バリチェロがM・シューマッハにまた勝った。過去2年で3勝31敗だったのに、今季だけで4勝である。

F2002はバリチェロにとって本当に相性がいいのだろう。PPから勝てるか。M・シューマッハとしては、バリチェロの選手権2位サポートという役割は、今ひとつモチベーションが上がらないかもしれない。


ミヒャ最終アタック、セクター3でダウン

M・シューマッハのセクターごとのタイム推移。2回目のアタックではセクター2で0.4秒もタイムアップを果たし、バリチェロに迫った。だが最終アタック、セクター3で0.171秒遅くなっている。これは失敗したのではなく、2回目のアタックで速過ぎたからだ。リスキーな高速シケインで相当うまくいったことが考えられる。最終アタックは普通の出来だった。

このことから、M・シューマッハは勝負のポイントだったセクター2でバリチェロにかなわなかったことが、PPを取れない原因になったと言える。

 

琢磨の遅さが目立つセクター2

ホンダ勢4台のセクターごとPPタイム差。

今季最高の5番手だったフィジケラ。14番手琢磨にすべてのセクターで差をつけた。腕の差が出るセクター2で0.4秒も速かった。

琢磨としては、セクター3でBAR勢より速かったことがせめてもの救い。だが、リスキーな走りは決勝では厳禁。

3番手R・シューマッハは厳しい状況で健闘した。モントーヤとの予選対決で連勝し、6勝7敗に接近。

決勝はフェラーリの独走か

初日フリー走行午前のタイムで、フェラーリは他より1秒以上速かった。フロントローの2台が序盤から差を広げることが考えられる。ハンガリーは1986年の初開催以来、雨が降ったことがなく、天候リスクはない。

ウィリアムズは中団の混戦に埋もれている。R・シューマッハが予選で抜け出したものの、決勝では苦しい。

5番手フィジケラが注目で、モントーヤの背後を狙う。琢磨は予選では遅かったが、初日が好調だったことから、決勝では速いペースが期待できる。抜けないコースのため、ピット戦略が重要だ。

 

<決勝>眠りについた君に・・・

アロウズが欠場して20台となった。

路面温度40度、77周のレース開始。

スタート ラバーグリップのない偶数列の車が軒並み出遅れる。3番手ラルフが2番手兄に並ぶ。5番手フィジケラも4番手モントーヤに並ぶ。

途中から兄の加速が弟と等しくなり、両者は並んだまま1コーナーへ。

1コーナーをバリチェロが先頭で抜ける。

弟は引いて、兄が2位になる。

その後ろにフィジケラ、マッサが続く。モントーヤは大きく後退。

トゥルーリもスタートは良かった。モントーヤを抜く。だが1コーナーでマッサが飛び込んでくる。

1コーナーを回りきるところでバトンとモントーヤにはさまれ、後退。さらに2コーナーでライコネンにも抜かれる。

オープニングラップ終了 フェラーリの2台が3位以下に2.5秒の差をつけた。このまま引き離して行く。

1−3位はこのままだったので、ここで寝ても同じだったか。

21周目 12位ビルヌーブが1コーナーで止まる。リタイヤ第一号。この日のリタイヤは4台だけだった。

22周目 7位モントーヤは運転しずらそうだ。高速シケインのターン12でダートに乗り上げる。このとき空力パーツを破損。

23周目 2コーナーでライコネンがアウトから仕掛ける。

並んでコーナリングする両者。次のコーナーはライコネンがインになる。

モントーヤは3コーナーで行き場を失ってコースオフ。ライコネンは前戦の雪辱を果たす。

2戦連続でバトルの見せ場はこの二人だった。

ここまでは寝ずに見ていた方が良かった。ここから寝て良かった。

24周目 アーバインがミスファイヤで止まる。お手上げ状態。

3度王者ラウダもどうしようもない。

1位バリチェロと3位ラルフの差は12秒前後が変わらず。

31周目 6位バトンはライコネンのプレッシャーを受けていたが、周回遅れを抜くときに縁石に引っ掛けてスピン。グラベルに埋まる。

32周目 前の周のM・シューマッハに続いて、バリチェロもピットアウト。わずかにバリチェロが前に出る。

次の周にラルフも入り、フェラーリの1−2は安泰。

M・シューマッハは抜こうという気がなかった。

36周目 1位バリチェロと3位ラルフの差は20秒に広がる。

ウィリアムズはここでセンターウィングやフェラーリ風のエクストラウィングを付けるが、焼け石に水だった。

52周目 琢磨が2度目のピットアウトでパニスに抜かれるが、抑えるのか譲るのか中途半端な走りに、マッチも批判。

琢磨は1年でシートを失ってしまうのだろうか。

54周目 サロとデ・ラ・ロサがピットアウトで接触しそうになる。これは強引過ぎた。

FIAはサロに対し、レースタイムに25秒の加算というペナルティを下した。サロは13位から15位に下げられた。

55周目 マッサがピットアウトでフィジケラにきわどく抑えられる。

ジョーダンは来季ホンダエンジンを失うが、皮肉にも調子が上がってきた。

59周目 デビュー戦のデビッドソンがスピンアウト。ユーン2戦休養で登場した英F3琢磨のチームメイト。

タフなF1の長丁場に耐え切れず。

60〜76周目までは特に何もなし。

チェッカー バリチェロ優勝。M・シューマッハ2位でフェラーリ今季5度目の1−2。

4年連続のコンストラクターズタイトルを決める。1988-91のマクラーレンホンダに並ぶ記録。

3位ラルフ、4位ライコネン、5位クルサード、6位フィジケラ。

琢磨は10位。

記者会見でM・シューマッハの表情は今ひとつさえなかった。

バリチェロに勝利させるために2位を走り続けることは、誰よりも勝つことにこだわるこの男の精気を奪う。