2002第12戦ドイツGP

ミヒャ、念願のホッケンでポールトゥウィン、with FL

2002年7月28日 ホッケンハイム

(1/43モデルカーの2001-2002を撮影)

<予選>大改修でフェラーリ有利になったホッケンハイム

ホッケンハイムは大改修され、超高速コースから中高速コースに変貌した。平均時速は250km/hから221km/hにダウン。ストレートエンドで1速に落とすヘアピンが3ヶ所ある。ウィリアムズは超高速時にシャシー底部で得るダウンフォースが効かない。シャシー全体で空力を得るフェラーリがますます有利になる。

セクター1のポイントは1コーナで、200km/h近くで回る高速コーナになっている。M・シューマッハは予選2回目のアタックでオーバーランを喫した。
セクター2はマニクールのセクター2と同じようにストレートとヘアピンの組合せ2つから構成される。
セクター3は前年と同じレイアウトだが、舗装が一新された。220km/hの高速コーナ、アジップではモントーヤが1回目のアタックでコースアウトした。

ミヒャ最終アタックで弟を逆転、ホッケン初PP

上位4人のタイムアタック推移。M・シューマッハはPPを得たが、楽ではなかった。1回目にトップに立ったが、2回目は1コーナでオーバーランして失敗し、バリチェロに抜かれる。3回目のアタックで0.431秒タイムアップしたが、R・シューマッハに0.058秒先行される。だが最終アタックで1分14秒389をマークして逆転、地元ホッケンハイムで初のPPを決めた。チームメイトとの対戦成績は9勝3敗。

R・シューマッハの3回目のタイムは渾身のアタックだった。自分の他3回のタイムとモントーヤのタイムから見ても、ウィリアムズの性能を限界まで引き出した。チームメイトとの対戦成績は5勝7敗。

バリチェロは2回目にトップに立ったが、3・4回目のアタックが横ばいで、R・シューマッハの後塵を拝した。土曜午前中のフリー走行前半でクラッシュし、後半を走れなかった影響があったか。

6回連続PPがかかったモントーヤだが、このコースではベストのセッティングを見つけることができなかった。最終アタックでコースアウトして4番手に終わった。

なお、マクラーレン勢はメルセデスの地元GPだったが、ライコネン1.25秒差5番手、クルサード1.52秒差9番手と不振。

フェラーリが圧倒的に速いセクター3

セクタータイムの各自ベストをM・シューマッハ(0.000の横軸)との差で比較。

全開区間が短いスタジアムセクションのセクター3で、フェラーリがウィリアムズに大きな差をつけている。このためフェラーリは全開区間が長いセクター1と2のセッティングを改善する方向にしていく。

モントーヤはすべてのセクターでチームメイトに敗れたことから、新コースのセッティングを煮詰められなかったことがわかる。モントーヤは経験を生かすタイプのドライバーか。
今季4回目のPPを地元ホッケンで決めたM・シューマッハ。

過去に優勝1回(1995年)、PPなし、FL2回(1993,95年)とフェラーリ移籍以降は不得意だったが、コース改修を味方につけた。

予選でずっとモントーヤに主役を奪われていたが、ここで速さも見せ付けた。

琢磨の遅さが目立つセクター3

パワーアップしたホンダ勢4人の違いも見てみる。琢磨はセクター1で最速であり、そこを攻略できたが、テクニカルなセクター3がまるでダメだった。踏み込むタイプの琢磨は、スタジアムセクションのコーナリングで空回りしたものと見られる。コントロールラインの速度で、琢磨はフィジケラに3km/h遅かった。最終コーナーの回り方ひとつでも経験の差が出た。フィジケラはM・シューマッハとの差がすべてのセクターで一定であることが特筆される。つまり、差はマシン性能だけで、コース攻略ができていた。予選6番手。

ビルヌーブがパニスに負けた原因は、セクター1計測点の速度がパニスに2.2km/h遅かったことから、ここの複合コーナー出口で踏めてないことが推測される。


兄はセクター3を犠牲にしてもダウンフォースを減らした

シューマッハ兄弟のセクターごとの1回目とベストタイムを比較する。兄のベストは最終アタック、弟のベストは3回目だった。

セクター1とセクター2で興味深いのは、二人ともタイムが伸びているが、タイムが逆転していることだ。そして、セクター3では、兄のタイムが落ちている。

これは、兄がダウンフォースを減らしてセクター3が遅くなっても、引き換えにセクター1と2で速く走ろうとしたことがうかがえる。

 

R・シューマッハは今季PPこそないが、2番手は3回目となった。

決勝の表彰台はモナコ以降、ご無沙汰になっている。オーバーテイク能力が劣るという汚名返上なるか。

決勝はフェラーリが逃げ、マクラーレンがどこまで挽回するか

フリー走行初日前半でフェラーリが1秒以上差をつけた。後半にマクラーレンが迫り、決勝でどこまで挽回するかが見どころになる。夏場にしては"低温"なGPのため、ウィリアムズは例によって苦戦がまぬがれない。だが、ブリヂストンもデータ不足が気がかり。

もうひとつ気がかりなことは、フェラーリがバリチェロを選手権2位にするために、チームオーダーを出す可能性が始まったことだ。M・シューマッハ自身もフェラーリでのホッケン初勝利を願っているし、まさかドイツでブラジル人を勝たせることはしないと思うが。

中団勢はかなり実力が接近しており、混戦になりそうだ。琢磨はスタートでジャンプして着実に走りたいところ。

 

<決勝>

金・土曜と打って変わって晴天。路面温度は37度に達した。

67周のレース開始


スタート M・シューマッハがスタート1コーナをトップで通過。

4番手モントーヤはライコネンに抜かれて5位に落ちた。



7周目 ビルヌーブがバトンを抜く。琢磨もスキをついてバトンを抜く。13位。

ルノーはこのコースに合わせ込めず、ズルズル後退。ホンダ勢が躍進。


ザウバー同士の争い。マッサが先行するが、ハイドフェルドの方が速い。


11周目 モントーヤとライコネンの4位争いバトルが始まった。ヘアピンで仕掛けるモントーヤだが、アウトではらむ。コースに戻る際にライコネンに幅寄せするモントーヤ。ここはライコネンがかろうじて守ったが・・・。

モントーヤは容赦なく攻め続ける。インを守ろうとするライコネンに対し、アウトインアウトで脱出を速くするモントーヤ。そして、アジップのインを突いたモントーヤがライコネンをアウトに追いやった。

ダートに出たライコネンが加速で不利。モントーヤが前に出る。ライコネンも粘るが、ハードブレーキングで追突を防いだ。オーバーテイク大賞は2年連続でモントーヤ。


13周目 アーバインが最終コーナーでスピン。

57周目にブレーキトラブルでリタイヤした。

15周目 2位R・シューマッハが最速ラップを記録し、兄との差を見える範囲に縮めてくる。今回はウィリアムズも勝負できる状況になってきた。

ラルフは16,17周目も最速ラップを更新し続け、3秒差に迫る。

16周目 9位争いの大集団の中、琢磨がビルヌーブを抜いて11位に浮上。

20周目 2位R・シューマッハが周回遅れのトゥルーリに怒る。兄との差を3.3秒に縮めていたのに、行く手をさえぎられセクター3だけで0.9秒も離されてしまった。4.2秒差。

トゥルーリは青旗無視でドライブスルーペナルティを課せられた。

22周目 琢磨がオーバーラン。ビルヌーブに危うく抜かれそうになる。

23,24周目 マクニッシュ、バトンが相次いでリタイヤ。

マクニッシュは今季限りとも言われている。

バトンはBAR入りが決まっている。

27周目 1位M・シューマッハが1回目のピットイン。8.4秒。3位で復帰。前の周にバリチェロは8.6秒。

ラジエターのゴミを掃除機で吸いだす係が腰に袋をつけている。

29周目 R・シューマッハがピットインしようとするが、スローダウンしているビルヌーブにつかえてしまう。交換は8.0秒。

翌周モントーヤも入る(7.7秒)。

31周目 1位M・シューマッハ、2位R・シューマッハ(+3.989秒)、3位バリチェロ(+6.306秒)、4位モントーヤ(+18.203秒)。

36周目 トゥルーリがコースアウトしてリタイヤ。ホームへ帰るシーンが映される。

ルノー全滅。


38周目 ライコネンの左リアタイヤがバースト。3輪走行でピットへ。


39周目 6位に浮上していたパニスがスピンで止まる。ザウバー勢の攻めを必死に耐えていたところだった。

来季のシートが危ういパニス。このパフォーマンスはまずい。

44周目 M・シューマッハが1分16秒462でこのレースのファステストラップを記録。弟との差を8.9秒に突き放す。ここがこのレースの勝負どころだった。

だが、ファステストラップでR・シューマッハが1分16秒513(+0.051)だったことは、ウィリアムズが接近してきたことを示す。

46周目 3位バリチェロが2回目のピットイン。しかし給油が入らないトラブル。21.2秒かかってしまい、モントーヤに抜かれる。

翌周に入る予定だったM・シューマッハのリグを使ったら、勝てないところだった。

バリチェロにばかりトラブルがおこる。フェラーリは本気で選手権1・2位独占を狙っているのか首をかしげてしまう。

ジャン・トッドはシューマッハのマシンと器具に万全のチェックを指示しているだろうが、バリチェロにはそうでもないのだろうか。

48周目 ベルノルディのエンジンから煙。アロウズは2戦ぶりに決勝出走するも全滅。

50周目 上位4台が最後のピットインを済ませ、1位M・シューマッハ、2位R・シューマッハ(+9.463秒)、3位モントーヤ(+22.632秒)、4位バリチェロ(+28.206秒)の順。琢磨は1周遅れの8位。

59周目 フィジケラがエンジンブロー。琢磨はホンダ唯一の生き残りとなる。

ライコネンはついに最終コーナーでスピンして終わる。

63周目 残り4周になって2位R・シューマッハが緊急ピットイン。モントーヤとバリチェロの間の3位で復帰。

ニューマチックバルブの圧力低下を直すためだった。地元での兄弟1−2は成らず。

※ニューマチックバルブ:空気圧を利用してエンジンのバルブ(混合気の開閉弁)を制御するもの。ところで、電磁バルブはどうなったのだろう。

67周目 M・シューマッハが最終ラップを1位でスタジアムセクションに現れる。念願のホッケンハイム、フェラーリでの初優勝へ。

チェッカー M・シューマッハが年間最多タイの9勝目を上げる。新記録は間違いない。伝統の7月英仏独3戦全勝、通算62勝目。

2位モントーヤ、3位R・シューマッハ、4位バリチェロ、5位クルサード、6位ハイドフェルド。

完走はわずか9台。開幕戦8台に次ぐ少なさ。ホッケンハイムは前年も10台だったが、コースが変わってもマシンに過酷なことは変わらなかった。エンジンで4台、油圧系で3台、ギヤボックスで2台、コースアウトで2台が消えた。

F1は3週間の夏休みに入る。