2002.7.3
決勝の傾向を調べると、いくつかの興味深い事実が浮かび上がってきました。ミヒャが往年のプロストを思わせるレース展開、油圧系トラブルの増加、そしてフリー走行の見方などです。
2002年前半戦のポイント推移です。第4戦サンマリノで開き始めた差は、あっという間に誰も届かないところまで行ってしまいました。
2001年はデビが第6戦までくらいついいましたが、第7戦モナコでPPから最後尾に回ったことから流れが一気にミヒャに行ってしまいました。
2002年は、ウィリアムズ勢が信頼性のなさから横ばいとなっていることが最大の原因です。
ミヒャの2001年前半戦と比較すると、2002年は上回るハイペースになっています。
2001年は第4戦がリタイヤでしたが、2002年前半はまったくリタイヤがありませんでした。
このような安定感は、デビュー以来、初めてのことです。
オープニングラップで何台抜いたかをあらわしています。これには、スタートできなかったり、0周リタイヤだったりした車を除外してあります。
琢磨は3戦終了時に8台抜いてトップでしたが、9戦終了時も16台抜いてスタートキングの座を守っています。琢磨が1周目で順位を落としたのは2戦しかありません。それも1台ずつだけです。
トゥルーリ、アーバイン、ベルノルディも3戦終了時と同様、好調さを維持しています。
ラウンチコントロールの時代になりましたが、スタートの良し悪しは結構あるものです。
BARはスタートも悪く、泣きっ面にハチのビルヌーブでした。
ラップチャートを9戦分で平均しました。ミヒャはレースの50%あたりからトップに立つ感じになっています。序盤は3位あたりで様子をうかがいます。第6戦以降、そういう展開ばかりになっています。
逆にルビは前半トップを走るのに、後半ダウンという流れが多いようです。マレーシアとカナダは、その典型的なケースでした。
モンは4PPながら、1周目でトップだったことは1度もありません。スタートでの安定が課題です。
ラルの後半ジリ貧は首を傾げます。投げてしまったのではないかと思うレースもありました。
ホンダ勢4台の問題は、グリッドの悪さと、序盤の混戦に巻き込まれていることです。ルノーとザウバーには、後半に追いついてきていることから、予選でもっと前に出れば、いい勝負ができるはずです。
ドライバーごとに各順位を走った周回数を積み上げました。トータルすると総周回数になります。
ミヒャはポイントだけでなく、周回数でも弟を60周(約1レース分)引き離してトップです。
ドライバーの並び順は平均走行順位です。ほぼチーム力の通りに並んでいます。
そんな中、チームメイトで差が出たのがジョーダン。フィジコは平均で10.8位を走っていますが、琢磨は14.2位で、ユーン(15.7位)より前に過ぎませんでした。
1位周回数のシェアでは、ミヒャが45%でトップ。ルビとともにフェラーリが76%も占めています。
2位周回数になると、ミヒャが最多ですが、ウィリー勢が過半数を占めて奮闘しました。なかなか1位を走れませんが。
3位周回数では、ラルがトップですが、混戦です。ここにルノー勢も食い込んできているのがわかります。
恒例のリタイヤ理由では、ちょっとした変動がありました。アクシデント・エンジン・スピン/コースオフ・ギアボックスといった4大リタイヤ理由に、"油圧系"が割り込んできたのです。
ジャガーが4度も油圧系トラブルでリタイヤしたのを筆頭に、7チームが洗礼を浴びました。フェラーリも1度あります。最新のF1マシンは、内部制御で油圧系にかなり負荷をかけているのではないかと思われます。
撤退はミナルディがスペインで2台とも行いました。ウィング強度の問題でした。最新のF1がさらにダウンフォースを増していることをうかがわせます。
失格は開幕戦のアロウズ2台。
ドライバー別に、アクシデントとスピン/コースアウトを合計した回数で多い順に並べました。
新人の3人、マクニッシュ、マッサ、琢磨が上位を占めてしまいました。ウェーバーはこれでリタイヤにはなっておらず、F3000の経験が安定したドライビングに生きているようです。
ミヒャも事故やスピンを結構しているのですが、リタイヤにならないのが余裕です。
エンジントラブルでは、ルノーが最多です。パワーアップしたエンジンは戦闘力も増しましたが、信頼性では今一歩のようです。トゥルーリがドライバーでは最多の3度、壊しました。
ウィリアムズBMWとマクラーレンメルセデスは、エンジントラブルで肝心なレースを失い、フェラーリの楽勝を許しています。
シャシーが原因のトラブルでは、ジャガーが最多です。開幕前に設計上の問題が露呈しましたが、シーズンが始まってからも、解決に至らない模様です。遅くて壊れるという、3年目で最悪の年になりました。
特筆すべきは、ウィリアムズがシャシートラブルが一度もないことです。リタイヤはすべてエンジンかアクシデントなのです。エンジニアリング力がもっともあるチームと言えましょう。
予選編では、フリー走行から予選までのタイム推移でしたが、ここではさらに、ウォームアップとレースの自己ファステストラップを追加しました。
ここでわかるのは、初日フリー前半は、ウォームアップと似たタイムで、燃料を多く積んで決勝序盤をシミュレーションしていることです。
初日フリー後半までいくと、レースのファステストラップに近くなります。つまり、決勝セッティングで燃料が軽くなった状態と言えます。
2日目フリーになると、決勝タイムよりずっと速くなり、これは予選セッティングのための位置づけと言えます。
こんな観点から、今後のGPでのフリー走行を見てみるといいでしょう。
最後に、グリッド時点、平均走行順位でポイントを付与したら、どうなるかをあらわしました。
もしグリッド順のままだったら、ミヒャとモンは接戦を演じたことになります。つまり、ウィリーとモンがレースで自滅していったとも言える構図です。
ラルもルビもグリッドより悪い結果になっています。ミヒャはグリッドからさらに良い結果をめざし、それが成績に結びついていると言えます。
あらためて、ドライバーの実力はミヒャがNo.1であり、他と差があることを、この図が示してしまいました。速くて派手なドライビングのモンが来年以降のチャンピオンをめざすなら、学ぶべきことが多いと言えます。