西の魔女が死んだ    梨木香歩   

学校にいけなくなったまいは、大好きなおばあちゃん の家で暮らすことになった。
少女とおばあちゃんの交流が心に響きます。おばあちゃんが「魔女になるためには、自分で決めたことがきちんとできないとダメなんだ」と教えるところが特に好き。

 りかさん  梨木香歩   偕成社

ようこはお雛祭りに「リカちゃん人形」が欲しいと、おばあちゃんにおねだりしていた。
ところが、おばあちゃんから送られてきたのは古い市松人形の「りかちゃん」。 ようこはがっかりするが、「りかちゃん」はただの人形ではなかった。
おばあちゃんはようこに「りかを幸せにしてあげる責任がある」と言う。   ・・・・人形を幸せにするってどういうこと?・・・・
「りかさん」を読んで最初に感じたのは、怖さだった。人形が【りかさん】を通して語ってみせる、過去や思いが思いがけなく怖かったのだ。
子どものころちょっとしたことがあって、それ以来人形が嫌いだったので、 ”人形が話す”という設定がすんなりと受け入れられなかった。でも、ずっと「りかさん」のことを考えていたら、怖さはなくなった
「西の魔女が死んだ」でも「エンジェル・エンジェル・エンジェル」でも、『おばあさん と 孫娘 』の交流が軸になっていた。{おばあさん = 過去に生きる者}{孫 = 未来を生きる者 }と考えると過去から未来へ語り次ぐ事、伝えていくことの大切さ、 そして、過去あってこその未来であるのだと・・・・ 
また、『人形を幸せにする』ために、きちんとご飯をあげ着物を着替えさせ、髪をとかす、それは、「日常の生活を大切にする」ことにつながる。「西の魔女が死んだ」の中でもおばあさんが「魔女になるためには、自分で決めたことをきちんと守ること」と教えていた。
 「生活を大切にする」ことは「自分を大切にする」こと。私には、そこが特に印象に残った

 からくりからくさ  梨木香歩   新潮社

亡くなった祖母の古い家に住むことになった蓉子と【りかさん】、そしてそこに下宿する紀久、与希子、マ−ガレット。4人の女性が人形の【りかさん】を中心に不思議なつながりがあったことが次第にあきらかになっていきます。
 人はきっと、日常を生き抜くために生まれるのです。 そしてそのことを伝えるために。 クルドの人々のあれほど頑強な闘いぶりの力は、 おそらくそのことを否定されることへの 抵抗からきているのでしょう。 生きた証を、生きてきた証を。 井之川の家意識も、きっと。           (本文 P、339より)
この部分が、とても心にこたえました。感想のかわりに・・・

 でりばりぃAge   梨屋アリエ   新潮社

マナコが感じた息苦しさが、今自分が感じている「閉塞感」と重なってかなり感情移入して読んでしまった。でも、このおかあさん、ちょっと・・・・・いただけないなぁ。ここまでいろいろ勉強に励んでいる人が宅配ピザはないでしょう。 どっちかというと、「おやつでもなんでもしっかり手作り」で、 栄養もバッチリです!いい母してます!の方がしっくりくるんだけど、そうすると「でりばりぃ・・・・」の題名から変えなきゃならないからダメか・・・・・ いちばん、好きなのはケンジ。 外へ行く時「グレイト・ケンジ・キング」に家では「オウチモ−ド・ケンジ」に 変身しなきゃならないところ、なんだかよくわかる気がする。ケンジが「おかあさんがにぎったおにぎりが食べたい!」と泣くところでは、不覚にも涙が出てしまった。

 宇宙のみなしご   森絵都   講談社

 陽子とリンは中2と中1の姉弟。自営業で忙しい両親は不在がちで ふたりだけですごすことが多く、ふたりでいろいろな遊びを考えては退屈を 紛らわせていました。退屈に負けないように。そんなふたりが最近見つけたおもしろ いことは、人の家の屋根に登ることでした。なぜ、そんなことをするのかと聴かれて も きっと答えられないだろうな、と思いながら。
そこに、グル−プからハブにされて、自分を変えたいと思っている七瀬と、誰にも相 手にされず、使いっぱしりにされながら、「これは本当のボクじゃない。自分は戦士 だ」と思っているキオスクの二人が、屋根に一緒に登りたい、と仲間に加わります。
 4人とも、どこにでもいるような中学生です。どうしたら自分らしく生きられるの か、 一生懸命考えて、なんとかしなきゃ、と思っています。「屋根に登る」という一見く だらなそうなことでも、一生懸命になれることがあるのは、大切なことなんだと思い ます。 「大人も子どもも誰だって、いちばんしんどいときは、ひとりで切り抜けるしかない んだ。でも、ひとりでやっていかなきゃならないからこそ、時々手をつないで、心の 休憩ができる友達が必要なんだ。」
子どもが成長するのは、親の目の届かない、こんなふうに友達と過ごす時間なのかも しれません。 もうすぐ中学生になる子どもたちに是非読んでもらいたい一冊です。

  DIVE!!  森絵都   講談社

森絵都、初の「スポ根」小説。 日本ではまだマイナ−なスポ−ツの水泳競技<飛び込み>。 無名の中学生選手知希は、新しいコ−チ麻木夏陽子から オリンピックを目指そうと言われ・・・・
 「アタックNo、1」や「エ−スをねらえ」などのいわゆる「スポ根アニメ」世代としては、全然違和感なく読めるような「無名の選手が出来るコ−チに見いだされ、大変な練習のすえ頂点にたつ」ようなお話。もっともこの本はまだ1冊目なので、頂点にたつまではいってなくてさて、これから・・・で終わっているのだけど。 飛び込みに打ち込むために、友だちづきあい、彼女、流行、お腹いっぱい食べること、プリンのカラメルのところ・・・多くのものをあきらめなければならなかった知希。かわいそうなようだけど、凡人からみると、才能があって、打ち込めるものがあるってうらやましい気もする。今後、知希がどう成長していくのか、次作が楽しみだ。

  「にんきもののはつこい」森絵都 文/ 武田美穂 絵 童心社  

男子のにんきもの、でも女子の嫌われ者のきさらぎまいこ
だって、もてるために努力してるもの!私は将来男に囲まれてくらす魔性の女になることなのよ!
なのに、にんきもののこまつくんにときめいてしまうなんて・・・・

 子供が読んでどこまでわかるのか、わかりませんが、まいこって意外と重いものを背負ってるんですよね。だから、こういう子はまいこのように、「男に囲まれてくらす」か「男なんていらない。ひとりで強く生きていく」かどちらかに傾きやすいと思うのですが。(私は後者でしたけどね)

いましたよね。男子の前でだけいい顔して、甘ったれたやつ!大嫌いでしたけど(笑)。でもまいこについては、なんか感情が入ってしまいます。だぶん、(元?)女の子ならこういう子に腹をたてたりした記憶があると思います。
女ってこんな年頃から女なんですね〜

 「にんきものをめざせ」 森絵都 文/武田美穂 絵 童心社

「にんきもののひけつ」でけいたくんがたったひとつだけもらったチョコレ−ト。それをくれたのが、この本の主人公かなえ
「げてものずき」と言われても、「魔が差しただけでしょ」といわれても、めげないんだ!だってみんなの知らないけいたくんのいいところ、私だけが知っているんだもん。
ところがある日、男子の人気者のきさわぎまいこけいたくんに近づき始めた。まいこときたら男子の前でだけ甘えた声をだす、女子の嫌われものなのに。

 いや〜〜〜〜、さすが最強コンビ!すっごく面白いです。
かなえだって、まいこだって、クラスに一人はいそうな子なんだけど、本当にうまい!
娘ですら、いきなり「ママ、森絵都ってうまいよね」っていいだしたくらい。
子供もって10歳をすぎるころから、こういうことやってますよね。たしかに。
大人が読んでも、きっと懐かしく感情移入できると思います。
ほんと、子供だけのものにしておくにはもったいない!