「初代ポケモン(VC版)スタートダッシュの手引き」の副読物として書いてみた。
このコンテンツを読んでいるポケモントレーナーであれば、リアルタイムで体験したか否かに関わらず、
「ニドランを1000匹倒す」という育成法について聞いたことがあるだろう。
ここでは、なぜそのような育成法が生まれたのかを背景から説明する。
先に書いておくが、そもそもニドラン狩り自体が効率的な育成とは言い難い。
なぜそうなのかという部分は最後のほうに語るが、あくまで資料としてどうぞ。
いつ誰が言いだしたのかは定かではない。能力アップの仕組みを見れば思いつく人は多いと思われる。
手持ちの資料では、hiwasaさんの掲示板1998年の9月のログにて確認できるが、発祥はもっともっと古いはずだ。
ただ、当時は内部データまで知っている人が正攻法でポケモンを育てて公式大会の土俵に上がるという発想は希薄だったと思う。
広く知られるようになったのは1999年、ポケスタ2の発売がきっかけであったという印象である。
今でこそ初代ポケモンはバグ技とセットで語られる場合がほとんどだが、
当時はバグに対して強い抵抗を持つプレイヤーが多くいた。
公の場で怪しいデータを見せようものなら、バグ技や解析を扱うサイトの上ですら晒し者にされた。
(未だに某所に残る「わざマシン状態」という用語に当時の名残を見ることができる)
バグ技や改造ツールを知っていても、いや知っているからこそ、正当な手段による育成にこだわるプレイヤーは多かった。
これはペナルティ等の問題というよりは古き良きゲーマーの矜持・良心のようなものであったと思う。
ゲーム内の限られた制約の中でいかにして能力を上げるかを理論的に考えることと、
その理論をプレイによって実践することはセットであったのかも知れない。
簡単に言えば、種族値が全体的に高い。
最も低い「特殊」ですら40もある。つまり、倒すことで全ての能力の努力値が40以上入る。
もちろん、全体的にニドランより高い種族値を持つポケモンはいくらでもいる。
ニドランの強みは第一に出現率。22番道路にて赤緑青では45%、ピカ版で60%で♂♀いずれかが出現する。
また、出現レベルが2〜4と低く、簡単に倒せて余計な経験値も入りにくい。
ポケスタ1に搭載されたLv30の98カップ用のポケモンでも、比較的余裕を持って努力値を稼ぐことができる。
ちなみに育て屋による経験値リセットが出来るようになったのは金銀以降であり、当時は経験値を下げる手段は存在しない。
結論から言えば、フルドーピングさえすれば
Lv50運用(努力レベル62)なら886匹でいいし、努力レベル63にする場合でも936匹で十分である。
「1000匹」の根拠は、努力値を65535まで上げないと能力が上がりきらないという誤解に基づくものであり、
(ちなみに、その場合だと999匹でカンストする計算になる)
キリが良い数値ということで広まってしまったのだろう。
実際に、フルドーピング後にニドランを規定数倒した場合を考えよう。
確率の偏りがもっとも極端な場合を考慮し、♂のみ、♀のみの場合でそれぞれ計算する。
参考:努力値61010で努力レベル62、努力値63002で努力レベル63
育成状態\努力値 | HP | 攻撃 | 防御 | 素早 | 特殊 |
---|---|---|---|---|---|
フルドーピングのみ | 25600 | 25600 | 25600 | 25600 | 25600 |
フルドーピング+ニドラン♂886匹 | 66356 | 76102 | 61040 | 69900 | 61040 |
フルドーピング+ニドラン♀886匹 | 74330 | 67242 | 71672 | 61926 | 61040 |
フルドーピング+ニドラン♂936匹 | 68656 | 78952 | 63040 | 72400 | 63040 |
フルドーピング+ニドラン♀936匹 | 77080 | 69592 | 74272 | 63976 | 63040 |
まず、フルドーピングをすると25600ポイントの努力値を獲得できる。
そこにニドラン1000匹を倒した分の努力値が上乗せされるというわけだ。
いずれのケースにおいても、HPと攻撃に余剰が発生している。
具体的にはマックスアップとタウリンは8個でOKということがわかる。
(いかなる場合においても、HPと攻撃の努力値は5120少なくても問題ない)
初代において4個分(39200円)の節約は非常に大きい。無駄のない育成を。
ところでニドラン狩りに最も適したバージョンは何か。言うまでもなくピカ版である。
他のバージョンでは45%であるニドランの出現率が60%となっている。
さらに♂と♀が均等に出現するので期待値を計算しやすい。
(ちなみに赤と青では♂が、緑では♀が出やすい。比率は8:1)
試しに努力レベル62・63の各ケースで、特殊と素早さを満たす分だけ狩った場合の期待値を見てみよう。
育成状態\努力値 | HP | 攻撃 | 防御 |
---|---|---|---|
フルドーピング+ニドラン♂♀886匹(1:1) | 70343 | 71672 | 66356 |
フルドーピング+ニドラン♂♀936匹(1:1) | 72868 | 74272 | 68656 |
結論としてはこんなところである。均等に狩る前提なら余剰も多くなる。
ピカ版で育成するならマックスアップ7個・タウリン6個・ブロムヘキシン8個で良い。
(インドメタシン、リゾチウムは各10個必要)
ある程度余裕もあるので偏りも気にしなくて良い。万が一に備えて事前に個体値を計算していれば不足も確認可能。
実際にニドランを規定数狩ったにも関わらず計算通りの能力にならなかった?
単純な数え間違いを除けば、原因は1つである。
●ポケモンを入れ替えたりしていないか?
GBA以降しか知らないと忘れがちだが、GB版における獲得努力値は経験値同様、メンバーで分割される
入れ替えて倒したのなら経験値が半分になるのと同様、努力値も半分になる。
幸い、ニドランの場合はもっとも低い特殊の努力値が40なので、1回の入れ替え(半減)であれば端数が発生しない。
よほど経験値に余裕が無い場合を除けば、ニドランのみを狙って狩る行為はあまり効率が良くない。
とにかく努力値を稼ぐことが目的であれば、戦うポケモンを選ばずにひたすら倒しまくったほうが良い。
具体的には「一歩進んだ努力値稼ぎ」で解説しているので参考までに。
金銀クリスタルにおいて、ニドラン狩りに代わって一般的となった育成法。
ぱっと思いつくだけで、ニドランと比べるとこれだけのメリットがある。
一応こっちも計算してみよう。とりあえず努力レベル63の場合だけ。
わかってると思うけど特殊(特攻・特防)の努力値は共通(獲得量は相手の特攻に依存)だからね?
もちろんポケルスによって、必要戦闘数を半減させることが可能。
育成状態\努力値 | HP | 攻撃 | 防御 | 素早 | 特殊 |
---|---|---|---|---|---|
フルドーピングのみ | 25600 | 25600 | 25600 | 25600 | 25600 |
フルドーピング+アンノーン780匹 | 63040 | 81760 | 63040 | 63040 | 81760 |
攻撃と特殊の努力値が過剰に入る。ドーピングで言えば7個分強に相当する。
このためアンノーンを狩るならタウリンとリゾチウムを10個与えるのは金の無駄。
もっと具体的にはタウリンとリゾチウムは3個で十分というのが金銀育成の基礎知識。