コーエー 2002/03/29
中国は明の時代に成立したB級娯楽神怪小説の「封神演義」をモチーフにしたRPG。
開発もとの光栄は日本で始めて封神演義の完訳版を出版していることはファンには有名だろうし、
ゲームソフトとしての「封神演義」の商標も保持しており、本作以外にもいくつかゲームを出している。
(藤崎竜漫画が原作のゲームのタイトルにおいて「封神演義」が控えめなのはこれが理由らしい)
日本のポップカルチャーにおける封神演義としては安能務→藤崎竜に次ぐ有名な系列だと思う。
本作で描かれるのは原作の後日談。プレイヤーキャラはオリジナルキャラの少年で、
仙人を目指す修行中に、ひょんなことから妲己の復活計画を知り…というのが導入部となる。
シナリオ自体は、この設定で少年少女の冒険物語を作るならこうなるだろうな、という極めて手堅い出。
サブイベントがちょっとダークだったり強引だったりする点が少し気になる。
ランダムエンカウントやターン制の戦闘、経験値によるレベルアップ等は極めてオーソドックスな形。
少し変わっているのはターン末にMPが一定量回復するというシステムくらいか。
このゲームの鍵は封神演義の華ともいえる仙界の秘密兵器「宝貝(パオペエ)」。
武器や防具の概念が無い代わりに、キャラごとに任意で3つまで宝貝を装備することが出来、
それによって特技の使用やステータス強化が可能となる。
パオペエは直接入手できず、素材を合成することによって作られる。
合成には素材だけでなく、「言霊」で示されるタイミングでボタンを押さなければならない。
押しそこなうと素材が失われて失敗作となるわけだが、合成所の目の前にセーブポイントがあるのでペナルティ無し。
実質プレイヤーに手間をかけさせるだけの意味不明なシステムとなっているのが不満。
なお、レシピや言霊はシナリオとともに得られるが、材料とタイミングさえわかっていれば作れるようだ。
素材となるアイテムやモンスターなどは、封神演義に限らず中国の様々な神話伝説が基になっている。
大半の固有名詞がカナ表記なので読みづらいのが残念だが、神農や西王母を召喚できるゲームなんてそうは無いだろう。
ゲームバランスは大味。宝貝の素材やレシピを集めるのが多少面倒だが、
経験値稼ぎが簡単なので力押しでもどうにかなるだろう。
終盤のボスを除くと、あらゆる敵に全ての状態異常が有効なのはいくらなんでも投げやり。
視聴覚面としては、攻撃時などにボイスが出るというのがちょっと特徴的。
発音はあまり良くないがGBA初期のゲームということで大目に見るべきか。BGMなども全体的にこなれていない。
グラフィックは古き良きスーパーファミコンといったところ、敵が常に動いているのが特徴的。
マップがやたら角ばっていて、例えるならRPGツクール初心者が適当に切り張りしたような感じなのが今ひとつ。
ゲームキューブ版「バトル封神」との連動によって出現するアイテムやイベントがあり、
ゲーム内でも宣伝のような形で紹介されるが、シナリオ自体は本作のみで完結しているので、
無視してしまってもあまり問題は無いと思われる。
全体的に突っ込みどころがあるゲームだが、GBAで遊べる封神演義ネタのゲームは他には無い、はず。
ファンならプレイして損は無い、かも知れない。あの人物や宝貝がどのような扱いか確かめてみよう。
逆に、封神演義を知らない人がやると変な雰囲気の雑なRPGでしか無いと思う。
最終更新日:2010/10/20
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