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「大湯環状列石」とは |
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△何の目的で作られたのか? 一つの環状列石を形作っている石の総数は、1,000個にも及ぶ。1個の石は、1人或い は2人で持てる程度の重さであるが、これだけの石を4〜7kmも運ぶことは大変なことで ある。 多大な労力を費やして、縄文人は何のためにこのような大規模な遺構を作ったのであ ろうか。 昭和27年の国営調査では、この問題を解くために、14基の組石遺構下の調査を行い、 14基中11基の組石遺構下から、屈葬で遺骸を葬ることのできる程度の土壙が確認され た。しかし土壙内から人骨、副葬品等の出土はなく、リン分析の結果も思わしくなかっ たことから、その報告書では「この遺跡を祭祀サイシ遺跡(※1)とするよりは、墳墓の集 合体的なものと推測されるが、積極的な証左はない」と墓地説(※2)の可能性を示しな がら、断定できなかった。 同51年、野中堂遺跡の北東300mの地点から組石(配石)遺構群が発見され、同59〜 60念の発掘調査では、すべての組石遺構の下から土壙が確認され、2基の組石下土壙か らは甕棺カメカン(※3)、1基からは副葬品と考えられる13点の石鏃セキゾク、他の1基から は朱塗りの木製品の出土があった。また土壙内の残存脂肪分析(※4)の結果も「高等動 物の埋葬の可能性が高い」と云うものであった。 これらの調査結果から、同じ組石遺構の集合体である大湯環状列石もまた墳墓の集合 体、すなわち墓地ではないかと考えられるようになってきた。 ※1祭祀場説 … 組石下に土壙がない組石遺構もあること、人骨や副葬品などの出土が ないことから、祭祀儀礼の場とする考え。石崇拝や山岳信仰との関係を重視する。 ※2墳墓説 … 組石の下に遺体を埋葬できるほどの土壙があることから、これを墓穴と し、組石を墓標とする考え。北海道の組石遺構のほとんどが墳墓と認定されている。 ※3甕棺 … 遺体や遺骨・灰を納めた大型の土器。壺形や甕形のものがある。 ※4残存脂肪分析法 … 動・植物は、すべて体内に脂肪を含んでおり、しかもすべての種 は固有の脂肪酸の組成を持っている。したがって脂肪酸の組成が分かれば、ヒト、イノ シシ、シカ … 、イネ、ダイズ、クリ … の判別が可能となる。従来、生物が死ぬとそ の脂肪はすぐ分解してしまうと考えられていたが、近年これが千年、万年を越えて残存 することが分かり、考古資料の分析に利用されるようになった。 この分析法は、墓壙の認定の他に、土器の用途の解明、植物種子の同定、獣骨・骨角器 の同定などにも利用されている。 |

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