◆22.嘱累品
前回の「神力品」では地涌の菩薩という特定の限られた人に対して法華経の流布を嘱託されましたが、この章では、他の一切の人々に嘱託されました。「今以て汝等に付嘱す。汝等よ、当に受持読誦して広く、この法を宣べ、一切の衆生をしてあまねく聞知することを得せしむべし」という一説にそのことがしるされています。ここで注目すべきことは、平凡な無智の人も仏さまから付嘱されるということです。誰でも法華経を信ずる者は、仏さまから認められ仏さまの滅後に、その責任(法華経を弘めること)をまかせられた人ということです。このことを日蓮聖人は法華経が説かれた究極の事柄だと述べておられるのです。法華経を信ずるということは、ただ単に経文を信ずるということだけでなく、このような重大な意味をもっているのです。この章では、釈尊からの依頼に対して、人々が必ず実践することを誓います。そうして他の世界から集まって来ていた人々は、それぞれ自分の世界へと帰って行きます。使命を実践するためです。釈尊から命をうけた人々はこの娑婆世界だけではなく、広く各世界全体の人々が同時に法華経を弘めているということです。ところで見宝塔品で多宝塔を開くために集まって来られた釈尊の分身である諸仏はここでもとの世界へともどられ、多宝塔も扉が閉ざされます。虚空会にいた人々も、もとの霊鷲山にもどります。
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