◆12.堤婆達多品
堤婆達多というのはお釈迦さまのいとこにあたる人で、一緒に修行に励んだ仲でしたが、お釈迦さまが先に悟りを開きおしえを説かれ、多勢のお弟子を連れているのを見て、ねたみの心を生じ、何かとお釈迦さまの布教活動を妨害しました。ところがお釈迦さまは一向にその堤婆達多に対して、怒りの言葉すら出そうとはしませんでした。その堤婆達多についてこの章では詳しく説かれています。昔ある国に大変素晴らしい王様がいた。政治も順調にゆき人々も幸福な生活を送っておりましたが、真実を説いた教えというものを王様も人々も知りませんでした。そこで王様は「誰か、優れた教え、真実の教えを説く者はいないか、もし説く人がいるのなら、私はその人につかえよう。」とふれを出しました。やがて一人の仙人がやって来ました。「私は大乗の教え、妙法蓮華経という真実の教えを持っている。私についてくるならその教えを伝授しましょう。」王様は喜び、その仙人の弟子として、いろいろな修行を積みました。仙人の弟子となった王様は、薪を拾い、草や木の実を取り、時には身体を仙人の腰かけにさえしました。そうした修行を積んだ後、ようやく「法華経」という尊い真理を得ることが出来ました。というお話しですが、じつはその時の王様というのは今の釈尊で、仙人が今の堤婆達多であるというのです。釈尊より法華経を聞くことが出来るのも、その堤婆達多が善知識だったからだと、説かれています。現世に於いては堤婆達多はあくまでも大悪人なわけです。その堤婆達多は、釈尊が法華経を説かれてはじめて、天王如来という仏さまに成ることの証明を受けることが出来たのです。次に竜女の成仏について説かれています。竜王のむすめが法華経を信じた功徳によって人々の前で成仏するわけです。インドでは昔、男の人が大変な修行を積み、それでもなかなか仏にはなれない。まして女の人が仏になれようはずがないと考えていました。それまで女性は成仏できないと信じこんでいた人々は大変おどろき、そして法華経を信ずることの素晴らしさをあらためて知りました。
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