◆11.見宝塔品 前の法師品が説き終えると、地中より巨大な塔が出現しました。いろいろな宝石や金銀で飾られたそれはみごとな宝塔です。人々はこの立派な宝塔をみておどろきます。ところがさらに不思議なことにその塔の中から「大変素晴らしいことだ。釈迦牟尼世尊よ、法華経をこれらの人々に説くことは素晴らしいことだ、このおしえは真実の教えなのだ」と、の大音声が響きわたりました。大楽説という菩薩が人々の疑問を察知して、この宝塔の中から大音声を出している人はいかなる人であるか、そしてこの宝塔はどこから、何ゆえに現われたのかと、たずねました。お釈迦さまは「この宝塔の中には多宝如来というかたが居る。もともと東方のずっとかなたに宝浄という国がありその国よりこの娑婆世界へやってきたのだ。この多宝如来は、法華経をきく為にその教えの説かれている所まで宝塔と一緒に行き、このおしえが真実であることを証明し、ほめたたえることを誓い、その誓いによって仏となられた。それ以来誓いの通り法華経の説かれているところへ必ず現われ、このように大音声を出してほめたたえているのだ。と、説かれました。すると大楽説菩薩は多宝如来のお姿を一目みたいとお願いしました。そのためには、釈尊の分身の諸仏を一同に集めなければなりません。釈尊の分身とは、釈尊の徳にてらされて釈尊と同じように十方(あらゆる方向)の世界でおしえを説いている仏さまをさします。釈尊はこれら分身の諸仏を呼ばれました。他の国より仏さまが来られるのですからこの娑婆世界を清浄にしなければなりません。又たくさんの仏さまが侍者をつれてくるのですからこの世界をもっと広いものにしなくてはなりません。やがて、諸仏諸尊が次々と集ってきました。釈尊は神通力で空中へ浮び多宝塔の前へ行き、右手でとびらを開きました。中には多宝如来が坐っておられましたが、「お釈迦さま、どうぞこちらへおすわり下さい」といって座を半分ゆずりました。こうした釈尊は多宝塔の中へ入り多宝如来と並んでお坐りになりました。そこにいた多くの人々は自分達も多宝塔のそばに行き、釈尊と多宝如来をおまいりしたいと、お願いしました。釈尊は、神通力をもって、そこにいた人々を残らず虚空に呼び寄せたのでした。そして、「だれかこの娑婆世界で、妙法蓮華経を説くものはいないか。もしいるのなら私の滅後はその者に全てをまかせたい。しかしこの教えを持つことは大変むずかしい。この教えを読み持つものがいれば、その者は真の仏の子であり、仏の使いである。少しでもこの教えを説くものがいれば、その者は一切の天人から供養を受ける資格のあるものである」と、この法華経を信じ持つことの素晴らしさを説かれました。ところでこの法華経を仏の滅後に信じ持つことのむずかしさについて六難九易と呼ばれるものがあります。法華経を実践することを六項目に分け、人間としては到底できないむずかしい事柄を九つあげて、この九つのようなむずかしさ(難)も法華経の実践の六つからみたら、やさしいもの(易)である、という説明のしかたです。日蓮聖人はこの六難九易を実践することの困難さを身をもって体験され、法華経の行者たることを自覚されました。 〔奇跡の項参照〕 |
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