四、奉納神楽 松館菅原神社例祭における奉納神楽については、次のような特徴がある。 これは何時頃から行われてきたのかは定かではない。 ちなみに、この地域ではこの神楽舞のことを「お神楽」といい、また神 楽舞の主役は権現舞であるのでの「権現様」ともいう。 (一)、祭式における神楽舞の奉納 幣殿や拝殿の広さ、及びその後に行われるお湯立て神事との楽演奏や、 奉納神楽の順番の関係により、祭式中は神楽舞の神前奉納を省略すること としている。このことは、例外的な扱いでもあるが、やむを得ないことと して以前からこのように預かっているのである。それ故、祭式中において は、権現舞の曲を三節奏でて納め奉ることとしている。 このことを勘案して、本殿での祭式の後、境内に設けられた舞処におい て、改めて修祓と、お湯立て神事の祝詞奏上を行うこととしている。 (二)、お湯立て神事における神楽舞奉納 神社境内に設えた祭場は、火焚き場(大釜を据える処)と、舞処からな る。火焚き場の広さは一間四方程度の大きさで、その四隅には高さ一丈程 度の若木の杭(柱)を立てて、それに注連縄を張り巡らし、各面には四枚 ずつ紙垂を垂らす。前面の左右の木杭には、占いに用いる藁太房一対、湯 浴みに用いる斎笹の束一対を、藁で仮結びにしておく。 舞処は三枚のむしろを敷き詰める程度の広さで、そこにむしろ大の薦を 敷き、舞人は藁草履を履いて舞い納める。この薦や藁草履は昔は毎年新し いものを用いていたが、最近では必ずしも新品でないときもあるという。 太鼓は担いでいると疲れるので、薦を敷いてその上に置いて敲くが、他 の楽人は直立して演奏する。 ここ松館一帯のこの季節の天候は不順である。このため例祭日に降雨す る確立は大きい。しかし、例祭は毎年、全ての祭式次第を欠かすことなく 行ってきている。境内に設えた祭場には、雨を防ぐものは一切ない。ただ し、楽人の席には必要により雨覆いをすることがあるが、これも雨量の如 何による。 また、境内は「天神館」という高台にあるため、この季節は南風が強く、 火焚き役は、煙の立ち具合に細心の注意を払わなければならない。そのた め、風上に蔀(板戸)を立てて風を防ぐこともある。笛吹き手も、突風の ため息負けして笛の音が途絶えないように、身体を左右に振り動かして風 を避けるという。 準備の整えられた祭場の舞処では、神事の後、一連の神楽舞が順次奉納 される。 以前は、榊舞や青柳舞、扇舞などは後継者不足のため、また剱舞は第二 次大戦後の混乱期のため、一時的に奉納されなかった時期があったという。 (三)、納めの舞 前述したとおり集落と菅原神社社殿とは相当離れているので、祭礼の全 てを取り仕切る処として、宮司宅を利用している。すなわち、昔から「菅 原大神」は常時、宮司宅の神棚にも鎮座しておられるものとして氏子共々 認識しているのである。従って、例祭の祭式の終了は、宮司宅に退下し終 わったときを以て完結するのである。 そのため、宮司宅の神前に、納めの権現舞を奉ることとしている。 なお、ここでの直会の後は、昔は旧家などに依頼されて家々を舞い廻り、 権現様の神霊を授けることもあったという。 |