十一、焼成温度と物の性質 陶芸の分野に関して、三〇〇℃、八〇〇℃、一二五〇℃(〜一三〇〇 ℃)の三段階の温度域は、特別の意味を有する。すなわち三〇〇℃前後 で不純物が燃えきってしまう、八〇〇℃で物の性質が変わる、一二五〇 ℃で物の本来の性質が根本から変えられてしまう(有毒の物質でも毒物で なくなる)。また前述したように、粘土を焼成してゆく段階において、低 温域から徐々に加温して三〇〇℃前後にし、その後は少し加温の速度を 強め、八〇〇℃辺りからは一気に火力を強めて一二五〇℃の高温域にす るのである。 因みに、「陶」とは養う正す化す造すことで、人間の性格は根本から ら変えられてしまう語として、しばしば援用される。「陶」を含む単語 を拾ってみると、薫陶、陶化、陶冶(陶鋳)、陶染(感化)、陶甄(とうけ ん、人を善道に治下)、陶然(心地よく酔う・陶潜)陶酔、陶鬱(鬱陶しい) などが挙げられる。古来窯の火入れにあたって、焚口にお供物を献じて 神に祈る習慣がある。一二五〇℃の窯の中は、神々の主宰する世界なの である。 付言すれば、自然界の粘土鉱物のほとんどは、@800℃前後で、熔けた り、焼け締まるものと、A1250℃前後で、熔けたり、焼け締まるものと に分類されるといわれている。 |