四、 陶芸に必要なもの さて、やきもの作りに必要なものには、どんなものがあるであろうか。 @ 工房 陶芸において工房が必要となる理由の一つとしては、粘土や仕上がっ た作品を凍らせないためである。鹿角辺りでは、年に二三度は零下十度 以下になるので、その季節になると毎夜暖房しておく必要がある。雪国 で陶芸が盛んにならなかった理由はここに原因があるのではないだろう か。次は、仕上がった作品の急激な乾燥を防ぐためである。乾燥が急で あると、ひび割れする確率が高くなるからである。 A ロクロ ロクロには、手ロクロと、電動ロクロがある。 手ロクロとは手動で任意に回すロクロで、円形の回転台の直径は二二 〜二四センチが手ごろである。作陶から描画まで、全ての作業は手ロク ロの上で行う。また手ロクロは、盆栽など鉢植の仕立てにも最適である。 電動ロクロは普通、一〇〇ボルトの家庭用電力で動かすもので、円形 の回転台の直径は三〇センチである。ちょっと慣れれば誰でも出来るが、 茶碗なら五〇個以上作ってみてほしい。出来れば、自転車に乗れる程度 の運動神経のある方が望ましい。いきなり電動ロクロを使っても不可能 ではないが、粘土の性質を知っておくために、あらかじめ手ロクロなど で作品をいくつか作ってみて、粘土に慣れておくことを奨めたい。 B 粘土 粘土(陶土とも)は岩石・鉱物が風化分解あるいは変成作用によって 出来たもので、全体にバクテリアが繁殖していることを要件とする。 やきものを作るには実は土であれば何でも良く、例えば近くの田畑や 山の土でも良い。もしその土に水を混ぜても粘り気のない土には、別に 購入した粘土を半々程度に混ぜ、密閉していない容器に入れて数ヶ月か ら一年間寝かせる、つまりバクテリアを繁殖させるためである。粘土の 中のバクテリアに最適な環境は、一八℃ぐらいといわれている。 通常、初心用として白い粘土と赤い粘土とを用いる。鉄分のない白土 と鉄分の含有している赤土とを用いる理由は、「やきもの」として出来 上がったときの識別が容易であるからである。つまり白土のものは華や かに、赤土のものは地味に出来上がる。 わが国の野山の土の大部分は褐色森林土で、鉄分が含まれているので 赤味を帯びている。 陶芸用の粘土は、とても粒子が細かい(粗くても良いが、手ざわりが 良くない)ので、採掘した土を細かくする必要がある。細かくするには、 石臼の原理を応用して砕く方法、水車を利用して砕く方法、水ヒ、つま り土に水を入れてどろどろにし、水中に浮遊している「泥水=陶土」を 汲みだす方法などがある。水ヒの場合は、その排水により河川が汚濁す るので注意する必要があろう。 C 釉薬(うわぐすり) やきものは、釉薬をかけて一二五〇℃の高温で焼成すると、その過程 において、釉薬に含まれているいくつかの物質と、粘土に含まれている いくつかの物質とがそれぞれ融合して別の化合物となり、特異な色彩を 呈する。 しかして釉薬の目的は、見映え(装飾)を良くすること、漏水を防止 することにある。見映えを無視したものに「備前焼」がある。 釉薬の簡単なものは植物の灰である。松の灰には酸化石灰・珪酸・アル ミナなどが含まれ緑色系、イス灰(イスノキの灰)には酸化石灰・珪酸・ 酸化マグネシウムなどが含まれ透明系、ワラ灰(稲ワラの灰)には珪酸・ 酸化カリウムなどが含まれ透明系、土灰(雑木の灰)には珪酸・酸化石 灰・アルミナなどが含まれ褐色系の色をそれぞれ呈する。 最も簡単な釉薬は食塩水で、透明系の色を呈する。 D 陶芸用小道具 粘土を成形する小道具としては、基本的には料理するときの道具を用 いるが、陶芸用として専ら作られたものは使い良い。 切るもの、削るもの、掘るもの、彫るもの、描くもの、塗るもの、な でつけるもの、叩くもの、模様をつけるもの、型をとるもの、吹きつけ るもの、流し込むもの、注入するものなど多種多様の小道具がある。 E 絵の具 普通の陶器や磁器は、下絵の具で描画(着画)、つまり装飾する。下 絵付けとは、釉薬を掛ける前、つまり素焼きをした後に描くことをいう。 昔からの下絵の具としては、鬼板(鉄分の多い土)、呉須(コバルト化 合物)があり、呉須で下絵付けして、透明釉で焼成して青く発色したも のを「染付」(主に磁器)という。 因みに、本焼き後に描画することを上絵付けといい、上絵付けをした ら八〇〇℃で再焼成するが、金箔の縁取りの器などに多用される。 F 窯 陶芸の最終段階の工程として、高温での本焼きがある。松の薪で焼く 窯(登り窯など)、石油やプロパンガスの窯、電気窯などがある。電気 窯では家庭用一〇〇ボルトの窯や、大きめの二〇〇ボルトの窯がある。 窯の要件としては、一二五〇℃の高温で、数十分間持続出来ることで ある。しかし、ここに焼成温度と時間との関係が指摘されよう。例えば 鉄道線路の錆びる訳は酸化することであるが、これは長時間かけて燃え る、つまり酸化することを意味する。しかして、もし一〇〇〇℃の温度 より得られない窯のときは、焼成時間を長くすると、一二五〇℃で焼い たとき同じ効果を得ることが出来る。 |