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12 土深井裸まいり

(七)記念撮影
 裸まいり一行は、裸まいり行事を無事務め上げた記念として、再び第一
鳥居の前に引き返して、記念撮影をする。今回の記念撮影には、津嶋宮司、
男衆全員、それに団旗と四本の祈願旗が添えられた。
 
 鳥居には世話人たちにより真新しい綱、すなわち大注連縄が張りわたさ
れていた。注連縄は太く堂々としており、裸まいりの男衆の力強さを表し
ているように見える。
 真新しい大注連縄は、早春の空に浮かび上がり、幣束は風にそよぎ、紙
垂はさやさやとなびいている。真に清々しい気持ちである。
 
 第一鳥居は、間口一間半(二七五センチメートル)、高さ三五〇センチ
メートル以上もあろうかという、大きな両部鳥居である。両部神道とは、
いわゆる神仏習合教のことで、両部鳥居の特徴は、柱の前後に控柱を設け
ることとされる。
 大注連縄の中央の太い部位には、高さ約一尺(三十センチメートルほど)
の幣束三本が刺し立っている。またその下(底辺)には、直径約五センチ
メートル、長さ約二尺(六十センチメートルほど)の牛蒡締め(ゴボウの
形をした太い注連縄)が結いつけられているのである。
 
 幼いときから、このような厳しい行事を見て育ち、そしてそれを今体験
し実感し、無事成し遂げた、ということは感慨深いものがある。
 この行事に参加することは、生徒児童にとっては、将来、社会人として
の責任感や自尊心を育む絶好の機会である。また、他地域の級友たちと比
べても、このような厳しい体験をしたことは、誇りでもあり、また他の模
範でもあるのである。健やかに成長していただきたいと思わずにはいられ
ない。
 
 寒さをこらえながら写真撮影の終わるのをじっと待っている姿には、一
方では無事務めを果たしたという、自信と安堵感とが垣間見られた。
 写真撮影が終わると、わらじを脱いで大鳥居の控柱に掛けておく。
 
 裸まいり一行は、集会所に戻り、口紙をとって、平服に着替える。
 二月はまだ冬の季節である。裸の背中には湯気が立ち上っている。中に
は寒そうにしている男衆も見られないではないが、いくら寒くとも、この
日一日は、風呂に入ると、必ず重い風邪をひくとのことである。皮膚はす
でに凍傷気味であるからであろう。
 成田会長からは、絶対に風呂に入ってはならないとの、注意が繰り返さ
れていた。
 手早く着替えをして、この自治会館二階の直会会場へと上って行った。

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