下タ沢会によせて(覚書)

消えていった唄

 といったことで沢出さんの話しは終りにしようと思ったが、寺岡さんは、六代目 忠右衛門の後に項をあらためて、先に書いた「元山部落の団らん」の話しになり、 からめ節へと移っていく。そして「ナンコ貝焼(かいやき)とニゴリ酒をたらふく 飲んで、あの湧上より親子親類達が千鳥足で花見帰りの歌を歌って降りて来た」年 寄達から聞いた話しが、目に見えるようだ、といって花見帰りの歌の文句を三ツ書 いている。からめ節はみなさんご存知だと思いますが、花見帰りはあまり聞くこと もないと思うので、その歌詞を書いてみます。これらの歌と踊りは、毎年山神さん の祭典(5月14〜15日)のときに奉納されている。
 
  花見帰り
○花見帰りに三味線枕、また目をさまして茶碗酒 オイオイオイ
○酒に飲まるゝ身を持ちながら、今日も酒々明日も酒 〃
○酒は良いもの気は勇むもの、一つ上れや側の客 〃
 
 このほかに石頭節(石頭:坑夫がタガネで鉱石を掘るときに使う鎚)というのも あって、坑夫の手掘作業に合せて歌うのがあるが、これはからめ節保存会の柳館会 長さんが歌っている。またこの寺岡さんが書いた本の中に「あへこ節」というのが あり、これはどんは節で歌ったのか、おぼえている人もいなくなり、わからなくな ったと思う。
 ただ私は、この「あへこ」というと山のボンナやアエコを思いだして、どういう ことになるんだ、と首をひねっていたが、一番の歌詞「あへこ、あへこと勝負は付 かぬ、勝負分らぬ西東、々々、とあるのを見ていたら、何んだこりゃ「ジャンケン ポンヨ「アイコ」デショ」の「アイコ」じゃないかと、と思ったら、私なりに一件 落着。私には最初そう思い込むと、中々切り換えられないくせがある(これらの歌 詞は、後で書いておきたいと思います。)。

参照リンク:「鹿角の民謡」

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