GLN「鹿角篤志人脈」:相馬茂夫

鹿角の昔ばなし@:はじめにA

 今月(平成24年3月)のはじめ頃、松館の桜田宮司さんから4日の日曜に、昭和町(潟上市)の公民館で 「八郎太郎三湖伝説」として大館市の人(釈迦内小学校五十嵐校長)の話しがあるから行ってみないか、 と電話がありつれていってもらうことにした。
 当日朝8時頃、元市街地にいた海沼忠男さんも一緒にむかえに来てくれた (話しは10時から11時半。内容はすっかり忘れてしまったが、昔、菅江真澄が私の家に泊ったことがある、というところだけおぼえてきた)。
 
 私の家から車に乗せてもらったとき、桜田さんが後で読んでおいて、と渡してくれたのが、 「八郎太郎の昔話し」のコピーです。 この八郎太郎の伝説を語る会のあることは、米代新報かで見ていたと思うが、 時間的なこともあって行かなかった。
 
 私も子供の頃、といっても八十年以上も前の話だが、父親からいろんな鹿角の昔話しを聞いた。 みんな忘れてしまったが、時々何んかの脈略もなく断片的にヒョコッと思い出すことがある。 八郎太郎が男神女神のところをせき止めて鹿角を湖にしようとして、五の宮さんに縄をかけて、 背負おうとした話し(先の会の話しでは、別の山のことになっているが)。 五の宮の薬師さんの少し上の方に、八郎太郎が縄をかけた跡が残っている、という。
 私が高等科の1年か2年のとき(昭和10・11年)の遠足で五の宮に登った。 そのとき、薬師さんの少し上で、山を横切る深い溝があった。 高さといったらいゝか、巾といったらいゝか、とにかく1間程の高さで、横にエグれた跡があった。 どこまで続いているか行って見たいと思ったが、皆が縦に登るのに、私だけ横に行ったら、 道がわからなくなると思ってあきらめたが、 同じ話しでも土地土地によっては違うところもあるだろうと思った。 それで、今、絶滅したといわれた田沢湖の「クニマス」が、 山梨県の方で発見されたと話題になっているが、 私の父の話しによると、それは「キギシリマス」といったという。 辰子が赤ン坊を残して田沢湖に入って竜になってしまった。 或る日オバーサンがどんになにアヤしてもミルクとはいわなかった、米粒をすりつぶして作った糊 (ゴハンをたくとき、でき上る頃できる糊、あれをなんといったか今思い出せない) をやってものまない、手にあまったバーサンが湖に向って叫んだ。 タツコデテキテチチャレーと。あわてた辰子が人間の姿にもどるのを忘れて、そのまゝ竜の姿で、 ニョキッと出てきた。バーサンおこって、バカタレー、ソンナカッコシテデテクルヤツアルカ、 とユルギ(いろり)のキギシリ(燃えかけの木)をとって投げつけた。それがマスになった。 それで田沢湖の方では「キギシリマス」というのだと。 それはいゝとして、なんで辰子が竜になったか、なんで赤ン坊を置いて行ったか、 たしかに聞いているはずだが、いくら考えても思い出せない。
 
 私が桜田さんから三湖伝説を語る集いの「八郎太郎物語」 のあらすじを書いたものをもらって読んでいたときに、あの本はどうなっているんだろうナ、 と思った。 @鹿角市教育委員会(市中央公民館)発行の「陸中秋田のむかしっこ」、 A同じく「陸中の国鹿角の伝説」、 B未来社の「秋田の民話」の三冊(これより持っていない)。
 @とAは、鹿角市郷土学習編集委員会編ということで、委員長は関久さん、 私の方は柳舘計一さん外6名となっており、 平成3年と4年に発行されているので持っておられる方も多いと思う。 Bは編者は瀬川拓男、松谷みよ子夫妻ということで、いろいろな話し (先の八郎太郎の物語のように)を聞いて、一つの民話としてまとめたものだと思うので、 今から五十年以上も前の昭和33年の発行なので、特に関心のある方か、 私のような物好き(父親から昔話しを聞いた)でなければ持っていないかもしれない。
 
 ということで、初めに@三湖伝説を語る集いの八郎太郎の話し、 Aからは「八郎太郎物語」、 Bからは「八郎太郎物語」と「辰子姫物語」を コピーしてつけることにする。
 
 昭和33年(1958)といえば、私の娘の生まれた年なので、 私が父親から聞いたように、娘に昔話をしてやろうと思ったのかどうか記憶がない。 ともあれ子供達が小さいときは、絵本や昔話し童話などをよく読んでやった。 カーチャンはぬい物(和裁)をやっていたので、夜はおそい。 子供をねかしつけるのは、トーチャンの役目だった。 私はいつ頃から晩酌をやるようになったかおぼえていないが、 話しをしているうちにねむくなる、と話しが飛んだりシドロモドロになる。 両側にねている娘にトーサンねちゃダメとほっぺたをたゝかれ、 片方から話しが違うとホッペタをたゝかれる。 子供は一ぺん話しを聞くと、次はどうなるとわかっているのだろう。 次はこうなると心の中でワクワクして聞いているのだろう。 それがとぎれたり、シドロモドロになるとホッペタをたゝかれる、ということになる。 いろんな絵本やグリム童話とかイソップ物語りなどを読んだ。 今家に残っているのは、1963年〜64年にかけて出版されたグリム童話全集 (全10巻のうち9巻だけ、1冊ない)だけだ。 絵本で思い出したが、桃太郎の話し、絵本に描いてるとおりに読めば3分もすると終わる。 と次となるので、なるべく長もちさせたい。 で、山にしばかりに、で終わらないで、山に行く支度からはじまる。 ナタを持たせ、ノコギリを持たせ、ネコを着せ、ナワをかついで、 ニギリメシを持って、となる。 鬼が島では、犬、猿、キジが大活躍、桃太郎は、と波乱万丈の物語となる。 大げさだが、2〜3年前か、娘がきたとき、小さい頃の話しになり、 桃太郎の話しはそういう話し(私がシャベッたように)だと思っていたと、 それから少しして妹がきたときも、そう思っていたと、 私も大作家になった気分だナ、 はいゝとして、私の父が私に八郎太郎の話しなどしてくれた中には、 今のような要素があったかもしれない。
 
 それで昔話しとか、伝説はわかるとしても、「民話」となれば、さて?ということになる。 そこで辞典(広辞苑)を見ると、
○民話:「民衆の中から生まれ、伝承されてきた説話」とある。そこで、
○説話:「はなし、ものがたり。特に神話・伝説・童話などの総称」。そこで、
○童話:「こどもたちのために作った物語。お伽噺のほか伝説」
○お伽噺:「子供に聞かせる昔話や寓話」
○寓話:「教訓または諷刺を含めた、たとえ話。動物などを擬人化したものが多い」。「イソップ……」
○諷刺:「遠まわしに社会、人物の欠点や罪悪などを批判すること。それとなくそしること。あてこすり」
○そしる:「悪しざまにいう。わるくいう。非難する。けなす」
 
 何がなんだか訳がわからなくなった。まあいゝや博士になるわけでもないんだからと思って、 フト思った。民族学という言葉もあったナと、何にか関連がありそうな気がして見てみた。
○民族学:「一つの民族(主として自民族)の伝統的な生活文化、伝統文化を研究対象とし、 文献以外の伝承を有力な手がかりとする学問」

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