鹿友会誌(抄) 「第一冊」 |
△光陰 本郷高等小学校生徒 正員 佐藤良太郎 光陰は矢の如く又流水の如し、一たび去りて復た回らす、 人、或は金銀の宝たるを知ると雖ども、光陰の宝たるを知り、之を貴重せるもの多し、 西人言ふ、光陰、化して黄金と成ると、実に然り、 凡そ百般の事業は、大小となく、一として光陰を費すにあらされは、 成功するものなし、且つ金銭は、之を失ふことあるも、再ひ得ること難からすと雖ども、 光陰は、之を失ふことは決して之を償ふの期なきこと、一日再ひ晨なりきを以て知るへし、 されば光陰の貴重、決して金銀に劣らさるなり、故に人たるもの、寸陰も軽るく之を 空費すべからす 広州途 湖南小漁虎 歴指興亡何限情。広州西去古皇京。青袗有涙痕多少。不是琵琶聴月明。 送安藤和風之浪華。畳広州詩韻。 行尽尾参観旧京。興亡王覇奈傷情。憑君更吊豐公址。鴻業露消恐不明。 豐公歌云。露止置。露止消奴留。我身哉。浪華乃事者。夢之又夢。 春暁 川村竹治 雲静霞深暁色微。幽人早起啓柴扉。黄麗(麗偏+鳥)不語花猶睡。欲折一枝露満衣。 送畑山芳三赴肥南 新齋山長恒 党議如麻徒紛揉。誰団八洲爲一毬。活国有計計既熟。飄然挺身入九州。剛気従来天所施。 縦君大爲所欲爲。弾丸秋水不入眼。可将折垂(竹冠+垂)笞健児。 又 月斜江城催駅走。花暗茗渓伝杯酒。熊城到日絮可飛。朝嵐暮雨白黔首。権君以丹醜厳洌麗(酉偏+麗)。 贈君以古音真摯詩。胸中厳洌自天分。故人真摯君且聞。不貯秋毫心地直。無所簡択眼界均。 群小怒君亦可忍。慎莫驚蛇侵妖気。天下豪傑今何存。肥馬軽珍(糸偏の珍)徒紛々。慇懃憑君須自愛。大八洲未竟経綸。 湖南ぬしが三河に在りけるに 君をしも見まく欲ればか此頃に 千年やすぐと思ほゆるかも 梅先春 鴬も伊鳴かぬ春の遅みかも 木母の開く見ゆ花早みかも 湖南兄が主筆として行きける三河新聞の発刊を祝してよめる長歌の反歌 龍を駆り虎を威さんとばかりに 生育立なん齢を経るままに |