鹿友会誌(抄)
「第三十冊」
 
△想起す故人十三氏
村山義一氏
 大厦高楼、堂々たる富豪生活者は、何時の時代にも之れあり、今の金持と称する者の門前に立てば、金気の 勢殷々として其の家より天に沖するは、之れなり。昔の様に気品高く奥ゆかしく、門地家柄の霊気にうたれる 家風は殆んど見られなくなった。我が村山氏、花輪校の秀才、万年首席、女にしても見まほしき美男、而かも 村山家の家風に育まれたる、気品の高き若旦那。天が境遇と寿命を氏に多幸に与へたならば、花輪が出したる 川村、大里二大先輩の後進として、活躍する村山氏を見出して居たであろうと疑はぬ。気息奄々痩せ衰へて、 櫻山神社など散歩の痛ましき姿よ、噫。

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