鹿友会誌(抄)
「第二十七冊」
 
△『石田の大叔父さんを』憶ふ
 晩年は、ことに故郷のことを思はれて、いろいろな質問をせられるのであった。
 故郷の政治、故郷の産業、そして将来の経済に対して、どうしてやって行くつもりだらふ、といふことが、 よく話題に上った。
 個人主義的で、何等団体訓練のない故郷人、功名手柄を一人で急いでゐる許りで、 その実チットモまとまった生産のない故郷に安座してゐる人たちのことを、不思議に思はれるのも、 無理のない話と思ふ。
 故郷から出る人で、少しでもその力が秀でてゐる人のことをきくと、喜んでその成功に力をつくされる ことであった。
 
 あれ丈、後輩を案じ、あれ丈育英に鋭意せられる人も、たしかに珍しいであらふ。
 従って故郷の青年運動にも、随分注意されてをったが、わたくしたちのやってゐる「愛友」の 記事に対しては『時勢の移りは偉いものだ』といふことを言はれてるといふことを、英一郎さんから 伝聞したことであったが、今年の正月にはワザワザ三十円を下さって、激励の言葉を送られた のであった。
 「愛友」は、最初の分からチャント書棚へまとめて揃へてあったのを、わたしがこの三月に 行ったとき、いたゞいて来た程である。

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