鹿友会誌(抄)
「第二十七冊」
 
△『石田の大叔父さんを』憶ふ
 「をぢさん」は、表面から見ると、融通のきかない、律儀一点張かのやうに思はれるけれども、あれでゐて、 政治のことになると、どうして鋭い一家言をたてゝをられたものであった。
 『男爵会から推薦はうけてるが、腐ってるから御免を被むってゐる。』といふことをよく申されてあったが、 新聞の政治記事に細心を注意を払ふことゝ、それからいろんな「からくり」のことを敏察せられることなどは、 確かに凡庸ではなかった。
 
 曾て、マクドナルドが労働党内閣を組織した当時、スノーデン(ママ)の財政政策や、マクドナルド のやり方に対して、口を極めて賞讃せられたことも、記憶にあらたなるところである。
 そして日本の政治も、党略政治や、ブルジョア政治でなく、早く変革されなければならないもの であることを力説された。
 いつものやうに食後のお菓子をパクつきながら、いろいろ話される姿が、散りおへたばかりの桜の やうに、ハッキリ目にうかんで来る。

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