鹿友会誌(抄)
「第十三冊」
 
△花輪歌壇
 ぬば玉の暗ならなくば出てゝ見ん 夜風のおくる窓の梅か香
梅風 吉田五郎

 ほのぼのと明け行く風にさそはれて さかぬ宿さへ梅が香ぞする
同上 齋藤麟道

 庭まへにさける桜の花ざかり 惜しくも月はおぼろなりけり
夜花 佐藤健助

 暮るゝともよしや吉野の桜狩り 花のひかりに山路かへらん
同上 五郎

 雨はれて月ににほへる桜花 今宵ばかりは明けずもあらなん
同上 川村左學

 春霞たなびきわたる大空の いづこなるらん雲雀なくなり
同上 川村善太郎

 花ちれば春にわかれし心地して 夜な夜な渡る夢のかけはし
散後思花 左學

 秋山の紅葉にますや岡のべの もゆるばかりの丹つゞじの花
躑躅 麟道

 花の香にふかくしみたる袖なれば 薄き衣にうつしかへばや
更衣 左學

 おもかげを枝に残して庭桜 花のかをりの心地こそすれ
散後思花 小山善五郎

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