「鹿角」
 
△十 鹿角町村巡り
<曙村>
 尾去澤村の南に位し、花輪町を距ること約二里、夜明島川は村の中央を流れて、米代川に 注ぐ。
 本村は、脊梁山脈の麓なるに依り、平地少なく、丘陵山野に富み、放牧適地多く、従って 郡内有数の馬産地であった。
 殊に佐藤録太郎、根本五郎氏等産馬の改善に努力せられて以来、体質、血統より各般の 点に改良加へられて進境著しきものあり、偏に両氏に負ふ所大なるものがある。
 
 各部落毎に組織せられてあった産業組合の事業と活動を円滑ならしめんとし、之を統一 して新に曙信用購買販売組合となし、村長助役以下の役場員協力して、之が経営を扶けたる を以って、創立日尚浅きにも係らず、肥料の購入、日用品の販売、農業倉庫の設置、其他 組合員相互の便益に資すべく、着々成績を挙げて居る。
 
 田の澤、小割澤等の鉱山があるけれども、経済界不振の影響を受けて休山の姿である。
 由来田の澤鉱山は、近時社会奉仕団として一般より認識せられ、宣伝せられつゝある京都 一燈園の首宰天香師西田市太郎氏の経営であり、所謂懺悔奉仕者の修道場とも云ふべき所で あった、花輪より曙を経て夏井迄三里、更に樫内より山深く入ること二里、白樺の杜、 緑り濃き時、見下ろせば、渓は残雪白皚々、前は山桜爛漫として咲き誇り、鶯の声を聞く頃に、 蛍の光が煌々と飛ぶさまは、実に一巻の絵巻の中に春夏秋冬の景を映じたかの如く、又稀に 見るの仙境である、
 中にも附近にある 白澤沼 は、水清く澄んで明鏡の如く、浮島の容姿又妙を極め、神秘幽玄の 色を漂はして居る、知られざる名称の一である。
 
 挿絵の枝垂松は、 松舘天満天神社 境内にあり、郡内の一名木たるを失はない。
曙の山、そして鹿角の郷の故郷の山「三ノ岳」

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