「鹿角」 |
△十 鹿角町村巡り <尾去澤村> 尾去澤村は、米白川を隔てゝ花輪町の西に位し、尾去澤鉱山あるに依って著名である。 慶長の昔より採鉱せられ今に至る三百余年、坑道の延長数十里と云ふ(詳細は鉱業地として の鹿角にあり)、今は南部名物として普く知られて居る「カナ山踊」の始まりは、此処尾去澤 の元山からであったと伝へられて居る。 遉がに鉱山の踊りだけあって、手拭ひを頬冠り襷がけにて、手に笊を持ち、なほりの 前掛け下げて、鉱石精選の有り様を舞ふに「からめ」節なる唄に合はせるのである。 からめ節に就いて本場と云ふべき尾去澤元山の或る古老が次の如くに語った、 金鉱を見出して尾去澤繁栄の基を作ったのは、慶長十年南部十左衛門と云へる人と伝へて 居るけれど、それ以前に元山方面に於て銅をふき出したのであった、当時石を台として鉱石 を上げ、鎚をもって打ち砕くことをからむ、 と云ったのであった、即ちからめ節は、鉱石を砕く時の唄と云ふべきだあらう (叩きつける事を今もブッカラムと云ふ)。 「からめからめと親爺がせめる なんぼからめてもからめたてァならぬ」「ドッコェドッコェ ドッコェナー カラメテ千両 カラメテ万両 親爺の借金 年賦で済ませ ドッコェドッコェ ドッコェナー」と笊は前後左右に洗鉱の手振りで舞ふのである。 ◎せまいやうでも 鹿角の里は 西も東もかねの山 ハァドッコェドッコェドッコェナァ カラメテ カラメテ カラメテ コガネハ 鹿角の花だョドンドトフキダセ ドッコェドッコェ ドッコェナァ ◎金キンのベゴコ(牛)に錦のたづな おらも引きたい引かせたい ハァカラメテカラメテシッカリ カラメテ ニギッタ手綱ウッカリ 放スナ ◎かねが出る出る 白金黄金 鉄もなまりも あかがねも ◎烏ァ鳴くなくとこやの屋根で お山繁昌となくからす 余韵余情の美が無くとも、鉱夫の生活を詩化した踊りそのものに価値と特色が有る。 尚本村に於て他に紹介することは、西道口部落に高杉新一郎氏経営の樹苗園である、杉、松、 落葉松、桐、アカシヤ等の苗木は、十余町歩の広大な地に養成せられ、年々東北一円に普く移出 販売せられた居る、殊に、他に於て恐るべき杉苗赤枯れ病は、自然消毒を受けて被害皆無、 優良の苗木として特に歓迎せられると云ふ。 三ツ矢澤部落は古来、郡内に於ける健脚な馬産地として知られて居る。 |