5811万山林マンザンバヤシの万三マンザンさん(花輪)
 
                    参考:鹿角市発行「花輪・尾去沢の民俗」
 
 このお話は、米代川を米白川という字をあてて、川の水で米をといでいた頃のことだ
と思います。
 昔、花輪の町に、大きなつくり酒屋があったそうです。そこへ働きに来た万三郎マンサブ
ロウという若者がおりましたが、この男はとっても正直で、かげひなたなく働くので、み
んなから、
「万三マンザ、万三」
といって可愛がられておりました。
 
 ある時、万三郎が米白川へ米をとぎに行った時、川上の方から、何やら光るものが、
浮いたり沈んだりして流れてきて、万三郎の手もとでピタリととまったために、
『不思議だ、何だろう……』
と思って拾いあげたら、それはどうやら神様の御神体らしいので、大事にふところに入
れ、酒屋へ帰ると、すぐに主人に渡しました。主人は大よろこびで、
「これは、正直者のお前にさずかった神様だろうよ」
と言って、庭に、家神さまとして小さなお堂を建てて納め、朝夕拝むことにしました。
そうしたら、この酒屋はもちろんのこと、近所の店も大繁盛したそうです。
 
 それから何年かたって、万三郎の名をとって、万山林という所に万山神社という立派
なお社が建てられました。そして今でも、
「万山林の万三さん」
といって、多くの人々に親しまれ信仰されているのですが、いったいこの万三郎は、ど
こから来て、その後どこへ行ったか分かりませんけれど、きっと神さまのお使いとして
やって来て、御神体と一緒に神さまになったのかも知れないと、みんなが思っているそ
うです。またこの神社の変わった風習の一つに、お祭りの前に、町内へお符をまわす時
や、お社にご馳走をお供えする時も、必ず白い半紙を口にくわえて、人の息がかからな
いように、ていねいにしているということです。
 
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