5705人を助けた雄鶏オンドリ(元山)
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 あのね、これは尾去沢の元山モトヤマにあった話です。
 大正の頃、元山の童衆ワラシ達は田郡タゴオリの学校へ行っていました。元山から田郡の寺
の処に出る道は、急な山のヒラ(斜面)が続いていて、歩いて学校まで三十分位もかか
りました。
 冬になれば、ヒラの道は雪崩ナダレが付いて、とても危ないものでした。
 それで、学校の行き帰りは、部落の人は見張りに就いて、安全だとラッパを吹いて合
図して歩かせたそうです。
 
 ある年の大雪の日に、五、六人の人達がこのヒラの横羽道ヨコハミチを歩いていました。途
中まで行ったとき、突然と雪崩て来て、忽ちみんな埋まってしまって、見えなくなって
しまったそうです。
 部落の人達が総出で探したけれども、どうしても見付けることが出来なかったそうで
す。
 その時、何処ドコからか雄鶏が一羽飛んで来て、雪崩のあった処の雪の上を走り回っ
て、急に止まりました。それから天王山に向かって羽ばたいて、何回も何回もコケコッ
コーと鳴いて足で雪を激しく掻き散らしました。
 
 みんな、大した不思議に思って、
「これはきっと神様のお告げではないだろうか」
と言って、其処の処を掘って見ました。
 そうしたら、其処の雪の下から気絶した人達が出て来ました。間もなくみんな息を取
り戻して、無事に助けられたそうです。
 この事があってから部落の人達は、鶏のことを大事にして、神社に雄鶏の額を納めま
した。それから、その沢一帯から上等の鉱石がいっぱい出て、元山は益々栄えました。

[次へ進む] [バック]