5402長坂金山ナガサカキンザン発見物語
 
                    参考:鹿角市発行「陸中の国鹿角の伝説」
 
 昔、天平二十年(748)にあったことです。
 尾去沢に、佐藤清吉セイキチと云う人が住んでいました。
 ある夜、清吉は夢の中で顔姿カオスガタが唐獅子カラジシの恰好カッコウをした人が、付き添いの
者共に梵天ボンテン(神様が宿っている大きな幣束ヘイソク)を持たせて歩いて来る一行と、大
森山オオモリヤマの後ウシロの三四森サンシノモリで会いました。
 この人が清吉に、
「この向こうの沢に宝があるので、お前が行って掘って見よ」
と言いました。その途端に夢が醒めました。
 
 次の日、清吉は早速サッソク、夢で教えられたように、其処ソコの場所に行って掘って見る
と、石の中に黄色に光る物がありました。
 これを家に持って来て火の中で焼いて見ると、金色に輝く見事な塊カタマリが出て来まし
た。清吉は不思議に思って、この事をみんなから聞きましたが、そうしたことを覚えて
いる者は一人もいませんでした。
 
 こうしているうちに日が経ち、ある日、腹の下まで長い髭ヒゲをした白髪の老人が訪ね
て来ました。
「私は、この世の中に知らないものはない。嘘ウソを言っていると思うならば試しに何で
も訊タズねて見よ」
と言いました。
 清助は、それならば訊キいて見るかと思って、あの金色の品物を出して、
「これは何んて云うもんだか」
と訊きました。老人は、その光る物をじっと見て笑いながら、
「これは金と云うもので、これまで日本の国にはなかったものだ。これは世間で云われ
ている七宝シッポウ(七種の宝物)の中でも最も高価なもので、この世の中で最高の宝物で
ある。この金も我が国で出るようになったか、ああ、いよいよ金の時代が来た。正に金
の時代が来た」
と言いました。
 清吉は初めてこの事を聞き、これは金と云う宝物だと知り、非常に喜び、この金を何
回も拝み、
「金を見付けた。金を見付けた」
と喜びました。
 清吉は老人に、
「あなたの名前は何と云うのですか」
と訊きましたら、老人は、
「私は、此処ココの『金山カナヤマの彦ヒコ』と云う者だ」
と言い残し、急に金色の光を身体から出しながら、水晶山の方へ飛んで行ってしまいま
した。
 
 この後の清吉は、前に金を掘った処へ毎日行って、金色の大きな石を沢山掘り出して、
火で溶かして金を採り、国主クニヌシに差し上げました。国主は、この宝物の金を天皇に差
し出したところ、天皇はお喜びになり、
「奥州の黄金オウゴンは大変に綺麗キレイで評判が高く、日本一の良い金である」
と言われました。
 そして、国主と清吉に沢山褒美ホウビを下さいました。
 これが昔から、長坂金山が見付けられた最初の始まりだと伝えられている話です。
 
[地図上の位置(水晶山)→]

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