54 鉱山伝説「光る怪鳥」
 
                         参考:鹿角市発行「鹿角市史」
 
 文明十三年(1481)のこと、尾去オサリの村の奥の大森山から光るものが現れて飛びまわ
り、人を驚かした。昼間見ると羽の長さ十余尋(約20m)の鳥で、人を取って食わんばか
りの勢い。口からは金色の火を吹き、鳴声は牛のほえるようで山々に響き、山が崩れる
ようであった。人々は恐ろしくて生きた心地もしなかった。
 この鳥は夜になると飛びまわって田畑を荒らすので、慈顕院ジゲンインの別当や村人は毎
晩一心に神に祈った。あるとき大森山の方から、あの怪鳥が泣き叫んだり苦しみ悲しが
っているような声が聞こえ、それからは飛んで来なくなった。
 村人が山へ登ると、赤沢川の水が朱を流したように赤くなっている。さらに行くと黒
瀧のところにあの鳥が赤く染まってうつぶせになって死んでいた。頭は大蛇のようで足
は牛のごとく、毛には赤と白がまじり所々に金と銀の毛が生えていた。背中と首に四つ
五つほど大きな傷があった。腹をさいてみると、胃袋には穀物や草木は何もなく金・銀
・銅・鉛の鉱石がつまっていた。
 すると村長ムラオサが、夢に老人が出てきて新しい山を掘れと六回もお告げがあった、こ
れまでどの山のことか分からなかったが、この山のことに違いない、と言った。それで
山を掘ってみると金・銀・銅・鉛がたくさん出た。田郡タゴオリ・赤沢・西道サイドウなど鉱
山が出た山一帯は大森山からの分かれなので、まとめて尾去沢オサリザワと呼ぶようになっ
た。
 またあの鳥はどんな神が退治してくれたのかと探してみると、大森山のふもとに獅子
の頭のような石があった。口にあたるところに血がついていたので、これがそうだとし
てお堂を建てて祀り、鳥もここへ埋めた。これが大森親山獅子大権現のはじまりだとい
う。
 
関連リンク 大森親山獅子大権現舞奉納神社「八幡神社」
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