39b 短歌文法「形容動詞」
 
のどか(長閑) (ナリ活)@天気がよく穏やかな様。例「春風はすでにのどかになが
 るれど・・」
 A落ち着いて静かな様。
 「のどやか」とも。
 
ばう-ばう(茫茫) (タリ活)@広く,遥かな様。例「茫々たる戦争の前妻子さへ・・」
 「・・茫たる野をし果しなく行く」
 A取り留めもなく,はっきりしない様。例「茫々とあるを一世ヒトヨの色として・・」「・・
 茫茫として寒鮒食ひつ」
 
はだら(斑) (ナリ活)疎マバら,斑マダラな様子。例「日のひかり斑ハダらに漏りてう
 ら悲し(山蚕ヤマコは未イマだ小さかりけり)」「(苺)はだらに白し種子タネの凹みに」「
 雪山の下にこほりし湖もはだらにとけて・・」
 
はつか(僅か) (ナリ活)@微かに現れる様。僅か。ちらりと。例「・・弟と呼べばは
 つかに笑みし」「・・柳の並木はつかに青む」「・・はつかなる日を惜しむこころに」
 A少しの間。
 
はらら (ナリ活)散り散り,ばらばらになっている様。例「庭土に桜の蕋シベのはらら
 なり・・」「(岩島の)はららに見えて朝しづかなり」
 
はるか(遥か) (ナリ活)距離・年月・程度が極めて隔たっている様。「はろか」と
 も。例「この雪にわが行かむ道ははるかなり・・」「・・睡りは人をはるかならしむ」「
 ・・と思ふ日のいつかは来クらむ遥かなりけり」「はるかに別れてをりてものぞ思ふ・・」
 「はろかなる山のあひまにけぶらへば・・」「はるかなる雪嶺はるかのぼりきて・・」
 
ひそか(密か) (ナリ活)目立たぬように静かな様。人目を避けること。こっそり。
 「ひそやか」とも。例「・・山の猿マシラもひそやかならむ」「ひそかにもこの山の湖ウミに
 舟出して・・」「(おぼろ夜の・・)桜の下はひそやかにゆく」「温室に熟るる莓イチゴの
 ひそかなる・・」
 
ひた-ぶる(頓・一向) (ナリ活)一途イチズに心を向け,又は行動すること。ひたす
 ら。例「・・ひたぶるなりし余燼傾け」「ひたぶるに歩み来にける道ひとつ・・」
 
ひや-やか(冷やか) (ナリ活)@冷たいさま。例「・・冷かなるよしら蓮の露」
 A落ち着いて動じない様。冷静。例「冷やかにまづ君いひぬ冷やかに(その声にわれ
 のまづなごみけれ)」「・・紫陽花アジサイの玉のむらさきひややかに澄む」
 B人情・同情がない様。冷淡。
 
ふく-よか(脹よか) (ナリ活)柔らかに脹フクれている様。「ふくやか」「ふくらか」
 とも。例「・・玉簪花の白芽ふくよかにして」「ふくよかにまるき子の手や父われに・・
 」
 
べう(眇) (タリ活)微少,微細な様を表す。ちっぽけな様。例「(・・島)眇たる影
 をわが目に残す」
 
ほがらか(朗らか) (ナリ活)@広々と開けて明らかな様。例「ひたはしる汽車に乗
 りゐてほがらかなり・・」「朗にかがやくさくら山の上に・・」
 A気持ちや性格が明るく楽しげなこと。
 「ほがら」とも。
 
ほどろ(斑) (ナリ活)斑マダラ。疎ら。雪が斑マダラに積もる様。「はだら」とも。例
 「春雪のほどろに凍コゴる道の朝・・」「淡雪はほどろほどろにふりながら・・」
 
ほの-か(仄か) (ナリ活)@はっきりと見分け,聞き分けなどの付かない様。微か。
 例「・・ただよふ雲はほのかなりけり」「・・ほのかに見えむ白鴿シラハトか君」「春心ほの
 かなけども何がなし・・」
 A色が薄いこと。ほんのり。例「過ぎゆきのひかりの中やほのかなり・・」「ほのかな
 る山ざくら花日かげれば・・」
 B僅かに現れる様。
 
ま-さやか (ナリ活)「ま」は接頭語。はっきりと見える様。明瞭。定か。例「皎々コウ
 コウと月冴え光りまさやかに見ゆる・・」「・・風まさやかに吹きあぐるなり」「遠くより
 きみが呼ぶ声まさやかに・・」
 
まどか(円か) (ナリ活)@形が丸い様。例「・・穂絮ホワタまどかに春の野芥子ノゲシは」
 A穏やかなこと。円満。例「まどかなる草山クサヤマまきて行く川を・・」
 
やすらか(安らか) (ナリ活)心地良い様。心配のない様。例「やすらかに足うち伸
 ばしわが聞くや(・・鳴く馬追虫を)」「雨雲はひくく下りたりやすらかに・・」
 
ゆた(寛) (ナリ活)長閑ノドカな様。のんびり。豊か。緩ユルやか。静か。例「動坂を
 ひろらにゆたにくだり来て(田端の丘を立ち割る道路)」
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