27a 植物を詠める和歌[草/煙草〜瓜〜福草][菌・藻]
△蓬ヨモギ(さしも草)
かくとだにえやはいぶきのさしも草 さしもしらじなもゆる思ひを
(後拾遺和歌集 十一恋 藤原実方朝臣)
猶たのめしめぢがはらのさしも草 我世中にあらむかぎりは
(新古今和歌集 二十釈教)
世中にあさは跡なく成にけり 心のまゝのよもぎのみして
(新勅撰和歌集 十七雑 平泰時)
△母子草ハハコグサ
はゝこつむ弥生の月になりぬれば ひらけぬらしな我宿の桃(曽根好忠集)
みかの夜のもちいはくはじわづらはし きけばよどのにはゝこつむ也
(後拾遺和歌集 二十誹諧 藤原実方朝臣)
はなのさと心もしらず春の野に いろいろつめるはゝこもちゐぞ(和泉式部集 三)
君がためやよひになればよづまさへ あへのいちゞにはゝこつむ也
(散木葉謌集 一春)
△父子草チチコグサ
花の色はちゝこぐさにてみゆれども ひとつも枝に有べきはなし(躬恒集)
△薺萵ヨメナ・オハキ・ウハギ
妻も有らば採りてたげましさみの山 野ヌのへのうはぎ過ぎにけらずや
(萬葉集 二挽歌)
春日野カスガヌに煙ケブリ立つ見ゆをとめらし 春野ハルヌのうはぎ採ツみて煮らしも
(萬葉集 十春雑歌)
里人やをはぎつむらん三笠山 春日の原のはるのうらゝに(新撰六帖 六 家良)
いまはまた野べのをはぎの春ふかみ 時すぎぬれやつむ人のなき(同 知家)
△紅藍花クレノイ・スエツムハナ
よそのみに見つゝや恋ひむ紅の 末採花の色に出でずとも(萬葉集 十夏相聞)
人しれずおもへばくるし紅の すゑつむ花の色に出なむ
(古今和歌集 十一恋 よみ人しらず)
△紫苑シヲニ・シオン
ふりはへていざふるさとの花みんと こしをにほひぞうつろひにける
(古今和歌集 十物名 よみ人しらず)
△朮ヲケラ・ウケラ
こひしけばそでもふらむをむさし野ヌの うけらがはなのいろにづなゆめ
わがせこをあどかもいはむむさし野の うけらがはなのときなきものを
(以上、萬葉集 十四相聞)
あせかがたしほひのゆたにおもへらば うけらがはなのいろにでめやも(同)
△蘭草フヂバカマ・ラニ
なに人かきてぬぎかけしふぢばかま くる秋ごとにのべをにほはす
(古今和歌集 四秋 としゆきの朝臣)
やどりせし人の形見か藤ばかま 忘られがたきかにほひつゝ(同 つらゆき)
おなじ野の露にやつるゝふぢばかま あはれはかけよかごとばかりも
(源氏物語 三十藤袴)
秋の野に花てふ花を折つれば わびしらにこそ虫もなきけれ
(拾遺和歌集 七物名 よみ人しらず)
なべて世の色とは見れど蘭 わきて露けき宿ににも有かな
(続拾遺和歌集 十八雑 皇太后宮大夫俊成)
△福草サキクサ
夕星ユフヅツの ゆふべになれば いざねよと 手をたづさはり 父母も うへはなさかり
三枝サキクサの 中にをねむと 愛ウツクしく しがかたらへば(下略)(萬葉集 五雑歌)
このとのはむべもとみけりさきくさの みつればよつ葉にとのづくりせり
(古今和歌集 一序)
おもへども人の心のあらたには うらみにのみぞさきくさのはな(塵袋 三 大輔)
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