GLN町井正路訳「ファウスト」

「ファウスト」解題

(九)一五九九年に至って、ハムブルグのウィドマンなる人、「ファウスト物語」 に関する書を悉く集輯して、之を完全なる一書として出版し、其の序文に 材料の由来を述べて「ファウスト自らの手に成れる原稿及びファウストの友人から 親しく聞知した事実を参照し、ファウストの忠実なる門下弟で、且つ其の附添人 であったヨハン、ワグネルの助言を得た]ということを記(か)いて居る、 此の書は道徳論を盛に主張し、一に信仰の途に導こうとする傾向が余りに甚だしい ので、読者を倦怠せしむるの嫌があった、そしてヘレンのことは全く之を除去 してあった、後世、此の書に基き、或は省略し、或は古物語より得た資料に依て 増補しなどして、幾多の「ファウスト物語」が出版せられた。

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