06 神社有職故実
 
〈幣帛とその用具〉
 
△幣帛ヘイハク・ミテグラ
▲幣帛
 「みてぐら」は「御妙ミタエ(青和幣アオニギテ(麻布)、白和幣(楮布コウゾ))座クラ(台)
」が本義です。古くは神祇に奉るものの総称でしたが、後代になってから、幣帛と神饌
とを区別するようになりました。
 幣帛の種類は多種多様であって、古来の例に徴しますと、布帛フハク、衣服、紙、玉、兵
器、貨幣、農耕具、紡績具、楽器、鳥獣、幣串、散銭の類でした。しかし現在では、以
上の内、主として布帛の類を以て幣帛とします。
 幣帛は現品を以てするのが本体で、現在では錦・絹・あしぎぬ・暴(口扁+暴)布ハクフ
・ボウフ・絲・木綿ユウ・麻等です。これを奉る場合は、紙で包んで柳筥ヤナイバコに納め、柳筥
を更に白布で包み、麻苧アサオを以て横で上下二ケ所を結切ムスビキリに括ククります。神前には
そのまま縦に奉奠ホウテンします。
 
▲幣串ヘイグシ
 幣帛の布帛の類は古くは多く、これを串に挿サシハサんで奉りました。その串を忌串イグシ
又は幣串と云いました。後世になり白色、五色、若しくは金・銀の紙を串に挿んで、こ
れを御幣ゴヘイと称するのはその遺制です。今日では多く紅・白の絹又は紙を串に挿み、
或いは紙垂シデを挿んでも奉ります。この紙垂を挿むもの、いわゆる御幣には白川家流、
吉田家流の二様式があります。
 
▲幣帛料ヘイハクリョウ
 幣帛は現品を以て奉るのが本体ですが、便宜上、料金を以てします。これを幣帛料と
称トナえます。幣帛料には新しい紙幣がよく、美濃紙で中包をして、表包は奉書紙で折掛
オリカケに包み、紅白の水引を掛けます(向かって右方を紅、左方を白とする)。水引は諸
鉤モロカギに結びますが、結切ムスビキリでも差し支えありません。「幣帛料」と墨書した挿札
を水引の結目の下に差し入れて大角ダイカク又は運脚台ウンキャクダイ・クモアシダイに載せて奉りま
す。
 
△幣帛用具 
 幣帛用具として、次のようなものがあります。
一 雲脚台ウンキャクダイ・クモアシダイ
 近世、宮中又は院中へ品物を載せて奉るに用いましたが、明治以後幣帛料を載せる用
に供する、雲形の脚の附いた台で、桧の素木シラキ製です。神前では縁ヘリの綴じ目トジメを手
前にして奉ります。
二 柳筥ヤナイバコ(ヤナイバとも)
 鏡・櫛・筆・硯・布帛の類を納めます、また蓋の桟サンを高くして小机のような形にし
て短冊・冠・履クツ等を載せる台にもします。柳の素木を幅五分許にして三角に削った木
を寄せ並べ、生糸か紙捻コヨリで編んで筥の身ミと桟蓋サンフタを作り、底に桧の板を敷いたも
のです。
三 折櫃オリビツ(オリウヅとも)
 三方と同様に神饌用具として用いたり、柳筥の代りに幣帛をも納めます。桧の素木で
作り、蓋のあるもの無いもの、脚のあるもの無いものなど種々あります。
四 大角ダイカク(八寸ハッスンとも)
 折敷きオシキにくり脚を附けたもので、両方の板脚に繰形クリカタ(眼象ゲンジョウ)を福袋形
にえぐってあります。幣帛料(世俗では結納目録など)を載せ、これより小さいものを
中角チュウカク、更に小さいものを小角コカクと云います。
五 辛櫃カラヒツ
 桧の素木製の脚の附いた櫃で、幣帛・神饌・装束・神宝・鑰カギ等を納めます。
六 案アン
 後世概ね祭祀に用いるものを案と呼び、その他を机ツクエと云います。古くから飲食を始
め種々の品物を載せ、現在では幣帛・神饌・玉串等を載せます。普通、桧の素木で作り、
脚は合わせて八脚(八足案と云う)です。
七 薦(菰)コモ
 普通、神座・神籬ヒモロギ・幣案・饌案・玉串案等の下には真薦マコモ(まこも製)、祭場
鋪設等には簀薦スゴモ(米藁製)を用います。
[次へ進む] [バック]