07 神社有職故実
 
〈神饌とその用具〉
 
△神饌シンセン
 神祇の聞食キコシメす御食事の料です。古くは「御食ミケ」、尊んで「大御食オオミケ」とも云
いました。
 祭祀マツリは、神祇に対して衣食住、即ち衣(幣帛=布帛)、食(神饌)、住(社殿)を
備え奉って御存生ゴゾウジョウ同様に「仕えまつる」ことですが、中でも、神饌が第一と云
われます。
 神饌は飲みものと、食べものとに分かれ、飲みものは水、酒(白酒シロキ、黒酒クロキ、醴
酒ニゴリザケ、清酒スミザケ)など、食べものは米(飯又は粥)、餅、魚、貝、鳥、海菜、野
菜、果実、菓子、塩などです。中でも欠くことの出来ないものは、米・塩・水の三種で
す。
 
 神饌の種別について述べます。
一 熟饌ジュクセン(調理神饌)
 熟饌とは調理した神饌のことで、これらを平手ヒラテ(枚手ヒラテ)、窪手クボテ、土器、折
櫃等に盛って供えます。
二 素饌ソセン(精進ショウジン神饌)
 魚味、鳥味等を除いた神饌で、これは仏教の影響によるものです。
三 生饌セイセン(丸物マルモノ神饌)
 未調理神饌です。明治八年制定の神社祭式において、これを一律にしようとしたため
に、古儀を顧みず神饌は総て生饌として定めました。それ以後今日に至るまでこれが一
般に行われている訳です。
 
△神饌用具
一 瓶子ヘイジ・ヘイシ
 瓶子は上古より酒を供する用具で、現在では普通に素焼スヤキ土器、又は白陶器に共蓋トモ
ブタを附けます。神前には一対を三方、折敷オシキ等に載せて供えます。
二 盃サカズキ
 盃は上古より酒を盛る器で、現在では普通に素焼土器、又は白陶器です。神前には三
方、折敷、又は高坏タカツキ等に載せて供えます。
三 水器スイキ
 水器は上古より主として水を盛る器で、現在では普通に素焼土器、又は白陶器です。
神前には三方、折敷、又は高坏等に載せて供えます。
四 平瓮ヒラカ(土器カワラケとも)
 平瓮は上古より饌を盛る器で、現在では普通に素焼土器、又は白陶器です。神前には
三方、折敷、又は高坏等に載せて供えます。
五 箸ハシ
 箸は上古より食事の具として広く用いました。現在では普通に竹や杉などの木製の二
筋のものを用い、神前には箸台(耳土台)に載せて三方、折敷、又は高坏等の上に置き
ます。
六 三方サンボウ
 三方はもと四方と共に、主として神饌を載せる用に供します。普通、桧の素木シラキ製
で、折敷と胴からなります。胴の三方に眼象ゲンジョウ(繰形クリカタ)をえぐり、胴の綴目と
折敷の縁の綴目とを方向を反対にして重ね、神前では折敷の縁の綴目を手前に向けます。
七 折敷オシキ
 折敷は主として神饌を載せる用具です。普通、桧の素木シラキ製で、神前では縁ヘリの綴目
を手前に向けます。
八 高坏タカツキ
 高坏は古くから食物を載せるに用い、神事には神饌を載せる用に供します。高坏には
木製の塗高坏、土器の土高坏、折敷高坏(高坏は土製)の三種があります。
九 掻敷カイシキ
 掻敷とは神饌の下敷にするもので、木の葉又は白紙を用います。白紙の場合は折らな
いこともありますが、大概は二つに折ります。折り方に縦折り、横折りの二様、また吉
事には各右前、凶事には左前の別があります。
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