05 神社有職故実
 
〈神宝と御調度〉
 
△神宝ジンポウ・カンダカラ
 天祖親授の三種神器サンシュノシンキ(八咫瓊ヤサカニノマガタマ、八咫鏡ヤタノカガミ、天叢雲剣アメノムラクモノ
ツルギ)、饒速日命ニギハヤヒノミコトが伝来の十種神宝トクサノカンダカラ(瀛津鏡オキツカガミ、辺津鏡ヘツ
カガミ、八握剣ヤツカノツルギ、生玉イクタマ、足玉タルタマ、死反玉マカルカエシノタマ、道反玉チカエシノタマ、蛇比
礼オロチノヒレ、蜂比礼ハチノヒレ、品物比礼クサグサノモノノヒレ)、天子槍アメノヒボコが伝来の八種神宝ヤクサノ
カンダカラ(珠二貫、振浪比礼ナミフルヒレ、切浪比礼ナミキルヒレ、振風比礼カゼフルヒレ、切風比礼、奥津
鏡、辺津鏡)、これらは固より神宝ですが、ここで云う神宝は、神祇の御料ゴリョウとして
本殿内に奉安するものを云います。
 
 神宮の神宝は、延喜大神宮式に二十一種挙げています。同種類を一に纏めて分類して
品目を示すと、
一 武器武具
 横刀タチ。弓。箭ヤ。桙ホコ。楯タテ。靫ユキ。鞆トモ。
二 紡績具
 専(金扁+専)ツム。麻笥オケ。多多利タタリ。加世比カセヒ。
などであって、此の神宝は毎二十年の式年遷宮に新調の例です。
 また大神宝ダイジンポウと称して新帝即位に際し、宮中から神宮に奉献せられるものがあ
ります。その品目は、
 神鏡。御劒。御玉。御弓。御矢。御桙。御楯。
の七種です(大神宝の奉献は平安朝以後室町初期に及んだが、その後中絶したものを大
正六年十一月四日に再興御進献になったものが即ち之である)。
 
 神社では各社各様で一定しませんが、次に例示します。
一 男神ダンシンに対する古き一例
 御冠ギョカン。御纓ギョエイ。御袍ゴホウ。御単オンヒトエ。御大口オンオオクチ。御表袴オンウエノハカマ。御衵
オンアコメ。御下襲オンシタガサネ。御石帯オンセキタイ。御組帯オンクミオビ。御桧扇オンヒオウギ。御笏オンシャク。
御襪オンシタウズ。御沓オンクツ。
二 女神ニョシンに対する古き一例
 紫綾御衣ムラサキアヤノオンゾ。紺綾御衣コンアヤノオンゾ。帛御衣ハクノオンゾ。紫紗御裳ムラサキシャノオンモ。白
綾御裳シロアヤノオンモ。帛御裳ハクノオンモ。紫御帯ムラサキノオンオビ。緑御帯ミドリノオンオビ。御桧扇オンヒオウギ
。御襪オンシタウズ。御沓オンクツ。
三 春日神社の神宝
 御鏡。御桙。御横刀オンタチ。御弓。御矢。
四 明治神宮の神宝
 神服(明治天皇御料、束帯の皆具カイグ。照憲皇太后御料、十二単の皆具)。神鏡。神
劒。
五 神宝としての八代物ヤツシロモノ
 これは特殊の例ですが、宮中の鎮魂祭の折、降神が済むと、献饌に先立ち神宝として
の八代物を奉ります。即ち次の八物(八種なので八代物と云う)です。
 御太刀オンタチ。御弓。御矢。御鈴。御佐奈伎オンサナギ(鐸スズ)。御あしぎぬオンアシギヌ。御
木綿オンユウ。御麻オンアサ。
  
△御調度ミチョウド
 御調度は、神祇の御料として神社の内陣に奉安するものです。中国では「神を祭る、神
在イマすが如し」と云い、わが国では「如在」ではなく「実在」の奉仕ですから、御存在
ゴゾンジョウ同様、御手まわりの御用具を奉ります。これが御調度です。
 御調度品も各社各様で一定しませんが、普通に奉るものは、
 鏡。屏風ビョウブ。几帳キチョウ。二階棚ニカイダナ。甘(水辺+甘)坏ユスルツキ(鬢ビンかき用の
水入)。打乱箱ウチミダレバコ。櫛筥クシバコ。硯筥スズリバコ。
の類です。鏡は神宝として奉りますが、御調度品としても奉ります。よく神前の正面に
鏡が飾ってありますが、これは元調度品であったものが、外に持ち出されて一種の神前
装飾具となったのです。
[次へ進む] [バック]