04a 神社有職故実
 
〈神座〉
 
△御賣(木扁+賣)オトク(権現造社殿)
 御とくの神座は、権現造ゴンゲンヅクリの社殿に適当です。権現造は豊臣時代以後に出来
た建築で、本殿・幣殿・拝殿等が一棟の内に連続する新様式ですから、神座も新様式の
御とくが相応しい訳です。
 御とくは一に「御厨子オズシ」と称えます。その起こりは禁中の御厨子所ミズシドコロ(調
理所)の食物棚に発し、転じて物を載せる二階棚となり、更に変化して前面に両開きの
扉を附けた御厨子と称え、中に神社の御霊代、儒ジュの神主、仏の仏像を安置するように
なったものです。
 御とくの様式、寸法等は一定しませんが、一例を挙げますと、用材の桧ヒノキの素材、縦
長の箱状をなし、上下とも二重框カマチにして四隅の柱を円柱とし、正面に左右両開きの扉
を附け、海老錠エビジョウを取り附けます。
 御とくの中に御座を設けます。即ち前述した御霊代神鏡の御装束の如く、先ず御浜床
オハマユカを据スえ、その上に御畳オジョウ、御茵オシトネを重ね敷き、御霊代を安置します。御とく
は御巾(巾+巴)オンオオイ又は御衾オフスマを以て覆います。
 御とくを神座とする神社は鹿島神宮カシマジングウ、太宰府神社ダザイフジンジャなどがその例
です。
 
△その他
 以上述べました御玉名井、御帳台、御とくのほかにもまた種々の形式があります。次
に主なものを略記します。
▲高御座タカミクラの形式
 即位のとき、天皇昇御し給う高御座に象カタドったもの(例日吉神社ヒエジンジャ)。
▲平敷の形式
 天皇日常の御座である平敷の御座(昼御座ヒノオマシ)に象った物。即ち繧繝縁ウンゲンベリの
御畳二帖を前後に並べ敷き、中央に御茵を敷きます(例塩竃神社シオガマジンジャ)。
▲大床子ダイショウジの形式
 大床子(四本脚、上板に数枚を横張りにした台)を据え、御畳、御茵を重ね敷き、天
井から錦蓋キンガイを垂れたもの(例氷川神社ヒカワジンジャ)。
▲御宮オミヤの形式
 神明造、流造、大社造タイシャヅクリその他の御宮形にしたもの。天井から錦蓋を垂らすこ
ともあります(例出雲大社イズモタイシャ、熊野神社クマノジンジャ、佐太神社サタジンジャ。概ね大社
造はこれに拠る)。
▲神輿シンヨの形式
 神輿に象ったもの(例香取カトリ・熊野速玉クマノハヤタマ・熊野那智神社クマノナチジンジャ)。
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