神様の戸籍調べ 二十一 宇豆比古ウヅヒコ 宇豆比古は、手っとり早く申せば、瀬戸内海の水先案内の第一の成功者であり、そし て国つ神の一人として、後大和国造ヤマトノクニノミヤツコと出世した果報者である。 神武天皇が御東征の途次、御軍艦が大分と伊豫の間である速吸門ハヤスイノセトを通過ららる ゝとき、大きな亀の甲に乗って釣をしながら近づき奉るものがあり、やがて、御舟の側 に寄り添って来た。そこで神武天皇も可笑しな男ぞとて、 「貴様は何者じゃ」 と御問ひになると、 「私は国つ神で宇豆比古ウヅヒコと申すものであります」 「国ツ神か? 然らばこの瀬戸内海の水先を知ってゐやうのー」 「よく承知してゐます」 「それじゃ、この航海の水先案内をして、功を立てないか」 「それは誠にどうも仕合わせな事であります」 と、そこで槁機サヲを出してこの宇豆比古を助けて舟に入れ、水先案内をさせられたが、 後天下平定の後此功によりて大和国造となった。別名を槁根津日子タカネツヒコと云ふ、船成 金の日本の元祖である。[次へ進む] [バック]