神名解説
 
〈六 伊邪那岐命イザナギノミコトの禊ミソぎ祓ハラいより生まれた神々〉
 
 いざなぎのみことは、黄泉ヨミの国から逃れてこの世の国へ帰り、筑紫ツクシの国の日向
 ヒムカの海に近い川口の辺りにある、阿波岐原アハギハラと云う処へ出かけました。
 身に著ツけていたものを全て棄て、穢ケガれた身体を禊ぎ祓いして、清めることになり
 ました。その投げ棄てたものから、次のような神々が生まれました。
 
衝立船戸神ツキタツフナドノカミ(N岐神フナドノカミ)
つきたつふなどのおおかみ
 悪霊の禍いはもう此処に近づくな、と云う意味である。
 
道之長乳歯神ミチノナガチハノカミ(N長道磐神ナガチハノカミ)
みちのながちはのかみ
 長い道中の安全を掌ツカサドる神と云う。
 
時置師神トキオカシノカミ
ときはかはのかみ
 解いて置く、と云う意味である。
 
和豆良比能宇斯能神ワヅラヒノウシノカミ(N煩神ワヅラヒノカミ)
わずらひのうしのかみ
 煩わしいことから免れる、と云う意味である。
 
道俣神ミチマタノカミ
ちまたのかみ
 道の分岐点を守り掌ツカサドる神と云う。
 
飽咋之宇斯能神アキグヒノウシノカミ
あきぐいのうしのかみ
 罪穢れを飲み込んでしまうと云うことで、穢れが無くなったと云う意味である。
 
奥疎神オキザカルノカミ
おきざかるのかみ
奥津那芸佐毘古神オキツナギサビコノカミ
おきつなきさひこのかみ
奥津甲斐弁羅神オキツカヒベラノカミ
おきつかひべらのかみ
 これらの三柱の神は何れも海の神で、それぞれ沖と、渚ナギサと、その中間の海を守り
 掌ツカサドる神と云う。
 
辺疎神ヘザカルノカミ
へざかるのかみ
辺津那芸佐毘古神ヘツナギサビコノカミ
へつなきさひこのかみ
辺津甲斐弁羅神ヘツカヒベラノカミ
へつかひべらのかみ
 これらの三柱の神は何れも、海の安全を守り掌ツカサドる神と云う。
 
 流れの程良い中流の辺りで洗い清めたときに、次にような神々が生まれた。
 
八十禍津日神ヤソマガツヒノカミ(N八十枉津日神ヤソマガツヒノカミ)
やそまがつひのかみ
大禍津日神オホマガツヒノカミ
おおまがつひのかみ
 この二柱の神は、黄泉の国へ出かけて行ったとき、身体に付いた穢れが元になって生
 まれた神と云う。
 
神直毘神カムナホビノカミ(N神直日神カムナホビノカミ)
かむなおびのかみ
大直毘神オホナホビノカミ(N大直日神オホナホビノカミ)
おおなおびのかみ
伊豆能売神イヅノメノカミ
いずのめのかみ
 これらの神は、その穢れの禍いを取り去って元の状態に直そうとして生まれたもので
 ある。
 
底津綿津見神ソコツワタツミノカミ(N底津少童命ソコツワタツミノミコト)
そこつわたつみのかみ
底筒之男命ソコツツノヲノミコト(N底筒男命ソコツツノヲノミコト)
そこつつのおのみこと
 この二神は、水の底に深く沈んで、身体を洗い清めたときに生まれたと云う。
 
中津綿津見神ナカツワタツミノカミ(N中津少童命ナカツワタツミノミコト)
なかつわたつみのかみ
中筒之男命ナカツツノヲノミコト(N中筒男命ナカツツノヲノミコト)
なかつつのおのみこと
 この二神は、水の中で、身体を洗い清めたときに生まれたと云う。
 
上津綿津見神ウハツワタツミノカミ(N表津少童命ウハツワタツミノミコト)
うわつわたつみのかみ
上筒之男命ウハツツノヲノミコト(N表筒男命ウハツツノヲノミコト)
うわつつのおのみこと
 この二神は、水の面に出て、身体を洗い清めたときに生まれたと云う。
 これらの神々は何れも海を守り、海路の安全を掌ツカサドる神と云う。
 
 底筒之男命・中筒之男命・上筒之男命の三柱の神は墨江スミノエの大神(N底筒男命ソコツツノヲノ
 ミコト・中筒男命ナカツツノヲノミコト・表筒男命ウハツツノヲノミコトは住吉大神スミノエノオホカミ)と云う。
 
天照大御神アマテラスオホミカミ(N大ヒルメノ貴オホヒルメノムチ・N天照大神アマテラスオホミカミ)
あまてらすおおみかみ
 いざなぎのみことは、「おまえは、わたしに代って、天上の世界の高天原を治めなさ
 い」と命じて、その大事な仕事を任せられた。
 
月読命ツクヨミノミコト(N月読尊ツキヨミノミコト)
つくよみのみこと
 いざなぎのみことは、「おまえは、わたしに代って、夜の世界を治めなさい」と命じ、
 その大事な仕事を任せられた。
 
建速須佐之男命タケハヤスサノヲノミコト(N素戔嗚尊スサノヲノミコト)
たけはやすさのおのみこと
 いざなぎのみことは、「おまえは、わたしに代って、海原の世界を治めなさい」と命
 じ、その大事な仕事を任せられた。
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