神名解説
 
〈三 神々の生成〉
 
 続いて、いざなきのみことといざなみのみことは、次の神々を生んだ。
 
志那都比古神シナツヒコノカミ(N風神カゼノカミ科長戸辺命シナトベノミコト)
しなつひこのかみ
 風を宰ツカサドル神で、吐く息が長い男という意味である。
 
久久能智神ククノチノカミ(N木祖キノオヤ句句廼馳ククノチ)
くくのちのかみ
 木を宰ツカサドル神で、木々の枝葉に生命力を意味している。
 
大山津見神オホヤマツミノカミ(N山神等ヤマノカミタチ山祇ヤマツミ・大山祇神オホヤマツミノカミ)
おおやまつみのかみ
 山を宰ツカサドル神と云う。
 
鹿屋野比売神カヤヌヒメノカミ(野椎神ヌヅチノカミ)(N草祖クサノオヤ草野姫カヤヌヒメ)
かやのひめのかみ
 野に生えている草の生命を宰ツカサドル神と云い、野椎神とは、野原に宿る威霊と云うこ
 とである。
 
 おおやまつみのかみとかやのひめのかみは、それぞれ山と野を分担して宰ツカサドってい
 る神であるが、この二柱の神は、力を合わせて次のような神々を生んだ。
 
天之狭椎神アメノサヅチノカミ
あめのさづちのかみ
国之狭椎神クニノサヅチノカミ
くにのさづちのかみ
 何れも、土地を守り掌ツカサドる神と云う。
 
天之狭霧神アメノサギリノカミ
あめのさぎりのかみ
国之狭霧神クニノサギリノカミ
くにのさぎりのかみ
 何れも、霧を掌ツカサドる神と云う。
 
天之闇戸神アメノクラドノカミ
あめのくらどのかみ
国之闇戸神クニノクラドノカミ
くにのくらどのかみ
 何れも、深くて闇クラい谷間を掌ツカサドる神と云う。
 
大戸惑子神オホトマトヒコノカミ
おおとまどひこのかみ(男神)
大戸惑女神オホトマトヒメノカミ
おおとまどひめのかみ(女神)
 何れも、暗い谷間で迷うと云う意味で、深い谷間の道を掌ツカサドる神と云う。
 
 続いて、いざなきのみことといざなみのみことは、次の神々を生んだ。
 
鳥之石楠船神トリノイハクスフネノカミ(天鳥船神アメノトリフネノカミ)
とりのいわくすふねのかみ
 鳥のように早く、岩のように強い楠の木で造った船と云い、天鳥船とは、鳥のように
 空も海も通うことが出来ると云う意味で、交通を掌ツカサドる神と云う。
 
大宜都比売神オホゲツヒメノカミ
おおげつひめのかみ
 食物を掌ツカサドる神と云う。
 
火之夜芸速男神ヒノヤギハヤヲノカミ(火之加賀毘古神ヒノカガビコノカミ・火之迦具土神ヒノカグツチノカミ)
 (N火神ヒノカミ軻遇突智カグツチ・火産霊ホムスビ)
ほのやぎはやおのかみ
 火を掌ツカサドる神と云い、火之加賀毘古神、火之迦具土神とは、何れも火の燃える勢い
 が盛んであることを意味している。
 
金山毘古神カナヤマビコノカミ
かなやまひこのかみ(男神)
金山毘売神カナヤマビメノカミ
かなやまひめのかみ(女神)
 いざなぎのみことの吐いた反吐ヘドの中から生まれ、何れも鉱山を掌ツカサドる神と云う。
 
波邇夜須毘古神ハニヤスビコノカミ
はにやすひこのかみ(男神)
波邇夜須毘売神ハニヤスビメノカミ(N土神ツチノカミ埴山姫ハニヤマヒメ・埴安神ハニヤスノカミ)
はにやすひめのかみ(女神)
 同じく糞クソの中から生まれ、土器などを作る粘土ネバツチを掌ツカサドる神と云い、何れも
 もを粘らせると云う意味である。
 
弥都波能売神ミツハノメノカミ(N水神ミヅノカミ罔象女ミヅハノメ)
みつはのめのかみ
 同じく尿の中から生まれ、潅漑用の水を掌ツカサドる女神と云う。
 
和久産巣日神ワクムスビノカミ(N稚産霊ワカムスビ(養蚕・五穀))
わくむすひのかみ
 穀物の生育を掌ツカサドる男神と云う。
 
 みつはのめのかみとわくむすひのかみの二柱の神から、次の神が生まれた。
 
豊宇気毘売神トヨウケビメノカミ
とようけひめのかみ
 あらゆる食物を掌ツカサドル神と云う。
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